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・本人様関係ありません
・アンチやめてください
・BLです(lr愛されです)
・口調注意⚠️
・ギャングの名前が思いつかなくてリコリスの名前借りてますが、MAD town関係ないです。もし気分が害された方がいたらお教え願います🙇♂️
〜設定などは1話をご参照ください〜
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kn『』
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——どこだ、ここは。
意識が浮かび上がると同時に、白い天井が視界に入った。
薬品の匂い。機械の小さな作動音。
「……病院、か」
喉がひりつく。声は思ったより掠れていた。
(……イッテ)
体を起こそうとして、腹部に走る鈍い痛みに息が詰まる。
視線を落とすと、上半身は包帯でぐるぐるに巻かれていた。
その瞬間、記憶が一気に蘇る。
飛行場。
静まり返った機内。
聞き覚えのある、あの声。
(……クッソ)
ローレンは歯を食いしばり、拳を握り締める。
行き場のない苛立ちを叩きつけるように、何度もベッドを殴った。
鈍い音だけが、病室に響く。
『ローレンはさ——』
頭の奥で、声が再生される。
『僕のことは、殺せない』
「……うるせぇ」
振り払おうとしても、その言葉は消えない。
何度も、何度も、同じ調子で脳裏に流れ込んでくる。
——事実だったからだ。
引き金を引いた。
それでも、殺せなかった。
「……クソが」
悔しさと、情けなさと、名前のつかない感情が胸に溜まっていく。
ローレンは天井を睨みつけたまま、動けずにいた。
無機質なノック音が、病室に響いた。
ローレンが返事をするより早く、ドアは勝手に開く。
[はじめまして、ローレンさん。
……ああ、違うか。初めましてじゃないね]
「……小柳」
そこに立っていたのは、
鮮やかな深い青色の髪。無駄のない細身の体躯。
整いすぎた顔立ちに、感情の読めない目。
黒い服を自然に着こなしたその男は、
まるでここが自分の部屋であるかのように、平然と立っていた。
[そんなに睨まないでくださいよ、ロレっさん]
「……何しに来た」
声に出せない言葉を、視線だけでぶつける。
小柳ロウ。
リコリスのボス。
——叶さんの、上に立つ男。
そんな人間が、わざわざ病室まで来る理由なんて一つも思い浮かばない。
目を覚ましたばかりのローレンの手元には、当然、拳銃もない。
できることは、睨むことだけだった。
[様子見ですよ]
小柳は軽く肩をすくめ、笑う。
[ロレっさんがいないとねぇ。
この街の警察、張り合いがなくて]
一歩、病室の中に踏み込む。
[今じゃギャングが好き放題。
市民は怯えっぱなしですよ。ハハ]
——分かってる。
この街の警察は、俺がいないと回らない。
警察署長は「長期休暇」という名目で一ヶ月も姿を見せていない。
上のランクの先輩たちは、肩書きばかりで実力が伴っていない。
現場を回しているのは、結局いつも同じ顔ぶれだ。
(……クソ)
警察内部は、もうとっくに崩れている。
それを、
目の前のギャングに指摘されるほどには。
ローレンは、奥歯を噛み締めた。
[ロレっさん、いつまで警察やってるんですか?]
(……は?)
唐突すぎる言葉に、思考が一瞬止まる。
[ロレっさんだって、分かってるでしょ]
[この街の警察、もう限界だって]
ローレンは、無意識に手を握りしめた。
包帯の下で、鈍い痛みが走る。
[俺らと一緒に来ればいいのに]
[変な正義、振り翳さなくていいんですよ?]
[もう危ない目に遭わなくていいし]
軽い口調。
まるで親切のつもりみたいに。
「……俺は、そっちには行かない」
胸の奥から、言葉を噛みしめる。
「市民を守る。後輩を守る」
「——それが、俺の正義だ」
[……ハハ]
小柳は、少しだけ目を細めた。
[さすがロレさんですね]
[かっこいい]
褒めているのか、からかっているのか。
その境界が、ひどく曖昧だった。
[でもね]
[その正義、いつか折れますよ]
くるりと背を向け、ドアへ向かいながら。
[その時は、いつでも待ってますから]
[ロレさん]
ドアが閉まる。
カチャリ、と乾いた音だけが残った。
病室には、また静寂が戻る。
ローレンは天井を睨んだまま、動けずにいた。
——本当に、折れないと言い切れるのか。
その問いだけが、胸の奥に沈んでいった。
数日後。
《ローレンさん!! まだ動いちゃダメです!!
傷、治りきってませんから!》
看護師の制止を背中で聞き流し、ローレンは病院を出た。
——無理なのは分かってる。
でも、戻らない選択肢はなかった。
警察署に足を踏み入れた瞬間、空気が違うのが分かる。
無線は鳴りっぱなし。怒号と報告が入り乱れ、誰がどの事件を担当しているのかも分からない。
事件通知は止まらず、指揮も取れていない。
——崩壊してる。
そこへ、慌ただしく後輩の警察官が駆け寄ってきた。
(ローレンさん!!
もう退院して大丈夫なんですか!?)
(ロレさんがいないと、警察が本当に回らなくて……!
みんな、困ってるんです!)
泣きそうな目で、必死に訴えてくる。
(早く無線入って、指示してください……)
ローレンは一瞬だけ目を閉じて、息を整えた。
ピピッ。
「おはようございます。
ローレン・イロアスです。今日、退院してきました」
一拍置いて、無線に続ける。
「応援が必要な現場、ありますか?」
——間髪入れず、返答が雪崩れ込んだ。
(ローレン!! よく帰ってきた!)
(◯◯番の銀行、応援欲しいです!)
(こっちも人手足りません!)
(IGL、お願いできますか!?)
次々と飛んでくる要請。
ローレンは頭の中で即座に整理する。
現場、人数、優先度。
「了解。銀行は俺が行く。
IGLは△△と合流しろ。
他は俺が振り分ける」
無線越しに、空気が少しずつ落ち着いていくのが分かった。
ローレンが戻った。
——それだけで、現場が動き出す。
その後も走り回り、指示を出し続ける。
彼の存在のおかげで、ひとまず街の治安は最低限、保たれた。
だが。
(……まだ、足りねぇ)
街は依然として不安定だ。
火種は、そこら中に残っている。
ローレンは無線を握りしめた。
——本当に、俺一人で持つのか。
その問いが、胸の奥に重く残ったままだった。
「……ふぅ」
ようやく一息つけたのは、時計の針が一周した朝の五時だった。
夜が白みに変わり始める時間。
ローレンは椅子に深く腰を下ろし、じんわりと痛む腹部をそっと撫でた。
(……警察は、このままでいいのか)
(俺がいなくなったら、この街はどうなる)
考えても、答えは出ない。
なのに問題だけは、次から次へと増えていく。
——考えるだけ無駄か。
ローレンは思考を切り、目を閉じた。
〈なあ、ローレン〉
〈警察官にとって、一番大事なものって何だと思う?〉
不意に、懐かしい声が蘇る。
父の声だ。
ローレンの父親も警察官だった。
そして最後には、警察署長を務めていた人。
誇りで、憧れで、
——もう、この世にはいない存在。
「決まってるだろ!」
「強さだよ、強さ!」
「最強の警察になりたいんだ!」
あの頃の自分は、迷いなくそう答えた。
〈ふふ。そうだね〉
〈強さも、確かに大事だ〉
〈でもね、もっと大事なものがある〉
「……なに?」
〈正義だよ〉
「正義?」
〈そう。正義〉
〈それを、間違えちゃいけない〉
〈——正義の“使い道”を〉
その言葉は、幼い頃のローレンの胸に、深く刻まれた。
間違えてはいけない、正義。
誰のための、何のための正義なのか。
ローレンは、その言葉だけを信じて警察を続けてきた。
(……これは、俺の正義だ)
市民を守る。
後輩を守る。
街を守る。
——あいつらのところになんて、行かない。
ローレンは、胸の奥で静かに誓った。
どれだけ壊れても、
どれだけ一人になっても。
終わりです!
ご愛読ありがとうございます♪
3話へ続きます!