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Joker🃏
アルヴァン家――それは王国でも最も地位が高く、魔法、知恵、剣術のすべてに長けた名門の王家である。
その血筋は代々王族として城を支え、国の未来を担う存在として人々から畏敬のまなざしを向けられてきた。
城の壁の一つ一つには、歴代の王や魔法使いの偉業が刻まれ、家族たちは幼いころから高い能力を求められる日々を送っていた。
そんな名門の城に、新たな命が誕生した日――赤い朝日の差し込む王宮の一室で、小さな産声が響いた。
「元気な双子が誕生しましたわ!」
母、ローズ・マディリン・アルヴィンは、疲れた笑みを浮かべながら双子の一人――ツバキを抱き上げた。
その髪は血の色に輝き、まるで朝日を映したように赤く染まっていた。隣には双子の姉ボタンも、小さく手足を動かして母の腕の中で眠っていた。
王家に生まれたその日、ツバキの未来はまだ白紙だった。
誰も、この小さな少年が魔法の才を持たないことを知らなかったのだ。
城にはすでに兄たちがいた。
長男カトレア・ケルスティン・アルヴィンと次男ハス・アルス・アルヴィン――双子の兄たちは7歳。
王家の誇りとして期待を背負い、家族に愛される存在だった。
三男コスモス・バリス・アルヴィンは5歳、長女スミレ・ベルダ・アルヴィンは3歳。まだ小さな家族たちは、それぞれの個性を少しずつ輝かせ、城は笑い声で満ちていた。
生まれたばかりのツバキは、まだ何もわからず、ただ柔らかい毛布にくるまれて眠るだけだった。
それでも、双子の姉ボタンや成瀬さん、家族の温かい視線に包まれ、安心して泣き声をあげた。
成瀬さんは、泣けばそっと抱き上げ、笑えば優しい声で話しかけた。
「ツバキ様、大丈夫でございます。私がそばにおりますから」
母ローズも、寝不足の中でもツバキを優しく抱き寄せ、頬にキスをした。
「よく頑張ったわね、ツバキ……あなたも、ボタンも……」
城の中は、赤ん坊たちを囲む笑顔で溢れた。
兄たちは、少し照れながらも小さな妹弟に興味津々で、そっと手を伸ばしてみる。 「わあ、本当に小さいな……」カトレアが言えば、ハスも頷きながら笑った。
コスモスも5歳ながら、そっと背を向けず見守った。
スミレは3歳で、兄たちの真似をして小さな手を伸ばす。
こうして、城は小さな笑い声や囁き声で賑やかだった。
日中は兄姉たちが庭で遊ぶ姿を、成瀬さんや母が見守る。ツバキは抱かれながら、時折手を伸ばし、笑い声に応え、また眠りにつく。小さな体を包む温かさは、城全体に静かな安らぎをもたらしていた。
ツバキが2歳になった頃、家族に新たな喜びが訪れた。
「ローズ様、元気な赤ん坊が誕生しましたわ!」
末妹、シクラメン・ムミア・アルヴィンの誕生だった。
ツバキはまだ幼いながらも、成瀬さんに抱かれてその小さな妹を見つめる。
双子の姉ボタンと一緒に、そっと手を伸ばして触れようとした。
「小さいね……」
ツバキが小さな声でつぶやくと、ボタンも頷いた。
城は再び賑やかさを増した。
兄たちは新しい妹の誕生に興味津々で、コスモスもスミレも、ツバキとボタンも、みんなでシクラメンを囲む。
成瀬さんは優しく見守りながら、
「シクラメン様も、ツバキ様たちと同じように愛されて育ちますから」
と声をかけた。
こうして、ツバキは双子の姉ボタンや兄姉たち、成瀬さん、母に囲まれて、まだ魔法の才のことを知らずに愛される日々を過ごした。
笑い声と温もりに包まれ、昼も夜も幸せに満ちていた。
王家の光に包まれたその日々、ツバキは誰よりも幸せだった──。
しかし、この時までは知らなかった。
これから、自分に待ち受ける運命と、孤独の色がどれほど深いものかを──。
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