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「前鬼!後鬼!おねがい!」


遺体が次々と力を無くして倒れていく。

桃華達は今、患者達を守りながら戦っていた。

慣れないスカートで蹴りを食らわせながら海は桃華へ叫んだ。


「桃華!」

「まかせて!」


海が桃華の方へ遺体を誘導し、桃華が二体の大きな狼_前鬼と後鬼でばくりと喰らう。

前鬼と後鬼は桃太郎と桃太郎の力を食べ、噛み殺し、無効化することができる。

鬼には何の影響も残らないので、遺体も綺麗なままだ。


「…ごめんなさい」


それでも、そう言いながら、桃華は傍らの前鬼と後鬼に合図をする。

胸ほどまである長い横髪がさらりと顔を隠す。

その顔には影が落ち、小さい手はスカートの裾を握りしめている。

唾切の能力がなくなり力を無くした手はだらりと垂れ、前鬼はそれをそっと横たえる。


「ごめんなさい…っ!」


大きくあどけない目は潤み、ぽとりぽとりと雫を落とす。

(くやしい)

暴れる遺体達を鋭く睨み、歯を食い縛る。

すると、桃華の足元から黒いもやが漏れだした。細かく見ると、それはまるで桃太郎の細菌の様に見える。

(ぼくも、みんなみたいに…たたかえたら)

黒いもやは前鬼と後鬼を包み込み、1.5mの大きさから2mくらいにまで大きくした。

(きょうにいみたく、なおせたら…)

大きくなった前鬼は上を向いてけたたましい遠吠えを響かせて遺体達へ駆け出す。

後鬼はぐるると背後の患者達を守って威嚇している。

桃華はポーチの中から細長いケースを取り出した。

ケースを広げ、中の物を一つだけ取り出す。


「ぼくだって、たたかいたいのに…」


その手には細長く、小さいナイフが鈍く輝いている。

走り出そうとするが、後鬼に止められる。

ふるふると横に首を振る後鬼に「なんで!」と叫びながら手を伸ばす。


(おいてけぼりは、いやなのに)


一人は嫌だ。

守られているだけは嫌だ。

救えないのは、守れないのは嫌だ。


その一心で無陀野に護身術や力を制御する術を習い、姉と花魁坂に手当ての仕方を叩き込んでもらった。

(いまやらなかったら、どうするの?)

後鬼を振りほどこうとしていると、四季が部屋に転がり込み、銃弾を眉間にぶちこみながら全員に言った。


「頭狙え!そうすりゃ、動きは止まる!」


いきなり出てきた四季に驚いたのか後鬼の力が緩んだのを見計らい、ナイフを器用にも投げて刺す。

これは自分の力である狼達にも、誰にも秘密で磨いてきた桃華の特技だった。

知っているのは校長だけで、これは校長が小学校入学祝いでくれたものだった。

手入れも一日たりとも怠らず、腕も磨いてきた。

桃華の瞳には、涙の代わりに守るべきものがある者特有の闘志があった。


「ぼくは、よわいままじゃない」


姉やそのクラスメイト達に宣言するようにナイフを構え、投げながら言う。

桃華は次は手裏剣を手に持って駆け出し、前鬼を足場にして高く飛翔し、頭頂部に突き刺す。

他にも様々な刃物を駆使して戦闘不能にしていく。

自分の周りに紅い華を散らし、次々と敵を屠っていく姿は、まさに『華』。

小さいながらも鮮やかに見る者を魅了する戦い方は、無陀野とは似ているようで少し違っていた。


全ての遺体達を再起不能にすると、避難が始まる。

避難させていると、花魁坂と守と一緒に火葬場へ行ったはずの皇后崎が転がり込んできた。

桃太郎が来た、と知らせる皇后崎にすがり付いて兄と慕う人と姉の安否を聞くが、皇后崎は答えない。


「おねえちゃんは、きょうにいは…?」


壊れたラジオのように何度も、何度も。

幼い声は上擦って、ひくひくと口が震える。

皇后崎は「ごめん」と言いながら桃華を慰めるだけだった。






あとがき


他の方の小説を読ませていただいていると、このようにあとがきを書いていらっしゃる方が多いので真似させていただきます!

これからはこのようにあとがきを書いていくので、よろしくお願いいたします。


いいねやブックマーク(?)いつも有り難うございます。励みになっております。これからもよろしくお願いします。

その姉妹、鬼女につき。

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