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第五章:逆転、そして空回りする独占欲
放課後。約束通り校門に向かおうとしていた朱莉は、校舎の裏へと続く渡り廊下で、人だかりができているのを見つけた。
中心にいるのは、腕を組んで壁に寄りかかる黒瀬。そして、真っ赤な顔で手紙を差し出している他クラスの女子。
「……黒瀬くん、ずっと好きでした! 付き合ってください!」
周りの女子たちが「キャー!」と盛り上がる中、黒瀬は気怠げに視線を落としている。彼はチラリと、通りかかった朱莉に気づいた。
(……フン、これでお前も少しは焦るやろ。昨日あんなに余裕ぶっこいて他の男と喋っとった報いや)
黒瀬はわざとらしく女子の方へ体を向け、朱莉の反応を待った。
嫉妬して、割り込んできて、「私の黒瀬に手を出さないで」なんて言われるのを、彼は今か今かと期待していたのだ。
ところが。
「あ、黒瀬。告白されてるんだ。お邪魔しちゃ悪いね、先帰ってるよー!」
朱莉はニコッと、太陽のように眩しい、一点の曇りもない笑顔で手を振った。
そのまま、スキップでもしそうな軽い足取りでスタスタと通り過ぎていく。
「…………は?」
黒瀬の時が止まった。
告白してきた女子も、周りの野次馬も、一瞬で凍りつく。
「……待て。おい、朱莉!! お前、今、何て言うた?」
「え? 邪魔しちゃ悪いから先帰るねって。……頑張ってね、黒瀬!」
「……頑張ってね、やと……!?」
黒瀬の額に青筋が浮かぶ。
彼は差し出された手紙も見ず、告白した女子に「わり、無理。興味ない」と秒速で断りを入れると、逃げるように立ち去る朱莉の背中を全力で追いかけた。
「おい!! 止まれ言うとんねん、ボケ!!」
校門の前でようやく朱莉の腕を掴み、彼は肩で息をしながら彼女を睨みつけた。
「……お前、アホなんか? それとも、俺が他の女と付き合ってもええと思ってんのか?」
「えー、だって黒瀬モテるし。そういうこともあるでしょ?」
「……そういう問題ちゃうわ!! お前、昨日あんなことしといて……俺が他の女に鼻の下伸ばすとでも思っとんのか!?」
「伸ばしてなかったじゃん。かっこよかったよ、黒瀬」
「……っ、褒めてごまかそうとすな!!」
彼は自分の顔が熱くなっているのを隠すように、パーカーのフードを深く被った。
朱莉のあまりの「嫉妬心のなさ」に、独占欲の塊である黒瀬の完敗だ。
「……もうええ。お前、ほんまに……毒気が抜けるわ。……でもな、勝手に先に帰るんは絶対に許さへんからな」
彼は繋いだ手をポケットにねじ込み、指を強く絡めた。
「……今日は、お前が『もう勘弁して』って泣くまで、絶対離さへんからな。覚悟しとけよ、アホ朱莉」
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