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22話 「揺らぐ絆」
塔の最上階。
夜風が吹き抜ける中、空間に歪みが走る。
次の瞬間——黒い裂け目から、巨大な影が這い出してきた。
それが、“目覚めしアノマリー”。
不気味な気配が場を支配し、空気が重く沈む。
カレン「来るわ……! 構えて!」
みこはステッキを強く握る。
第零契約によって変化したそれは、確かな力を感じさせていた。
胸の奥で、魔力が脈打つ。
怖さはある。でも、それ以上に——守りたい気持ちが強かった。
みこ「……行くよ」
小さく呟き、一歩踏み出す。
その時だった。
「——待て」
低い声が、みこの前で止まる。
みこ「……海?」
佐々木海が、前に立ちはだかっていた。
アノマリーではない。
仲間でもない位置。
その“中間”に。
ふぶき「どういうことですの……?」
海は答えない。
ただ、静かに剣へと手をかける。
らんま「……その立ち位置、気に入らないな」
空気が一変する。
ゆっくりと、海は剣を抜いた。
月明かりが刃に反射し、冷たい光を放つ。
みこ「ねえ……なんで、そっちにいるの?」
問いかける声は、かすかに震えていた。
海は一瞬だけ目を閉じる。
そして——
海「……ごめん、みこ」
その一言で、すべてが歪んだ。
みこ「……え?」
次の瞬間。
ズズッ——
海の背後から、黒い鎖が現れる。
それはゆっくりと彼の体に絡みつき、締め上げるように巻きついていく。
まるで“契約”を可視化したかのような禍々しい光景。
ふぶき「な……何ですの、それ……!」
ときは一歩だけ前に出て、冷静に観察する。
とき「……契約の痕跡」
カレンの表情が険しくなる。
カレン「間違いない。“敵側との契約”よ」
その言葉が、重く落ちる。
みこ「……うそ」
理解が、追いつかない。
みこ「そんなの……海が、するわけ……」
海は苦しそうに息を吐く。
鎖が、ギリ、と音を立てて締まる。
海「俺は……選んだんだ」
顔を上げる。
その瞳は、どこか決意を帯びていた。
海「みこを守るために、この力を」
みこ「守るって……」
言葉が震える。
みこ「それで、なんで私たちに剣向けるの……?」
海は答えない。
ただ、剣を構える。
その切っ先が——みこへ向けられる。
みこ「……海?」
信じたくない現実。
それでも、目の前の事実は変わらない。
らんま「……答えは出てる」
低く言い放つ。
らんま「あいつはもう、“敵”だ」
みこ「違う!!」
反射的に叫ぶ。
みこ「海がそんなはずない!」
その言葉に、海の瞳がわずかに揺れる。
だが——
鎖が強く脈打つ。
**ドクン、**と。
まるで心臓のように。
海「……っ」
苦しそうに顔を歪める。
そして次の瞬間。
一歩、踏み込んだ。
——速い。
空気が裂ける音とともに、海の剣が振り下ろされる。
キィィン!!
みこは咄嗟にステッキで受け止める。
衝撃が腕を貫く。
みこ「くっ……!」
第零契約の力がなければ、確実に吹き飛ばされていた。
海「……やっぱり強いな、その力」
淡々とした声。
そこに、感情はほとんど感じられなかった。
ふぶき「やめてください!」
魔法が展開され、海の動きを牽制する。
だが海は軽くそれを弾く。
とき「本気で来てるね」
静かな声。
とき「手加減する余裕、なさそう」
カレン「契約が、かなり深い……」
みこは、必死に海を見つめる。
みこ「ねえ……海」
一歩、近づく。
みこ「本当は、そんなことしたくないんでしょ……?」
海の動きが、一瞬止まる。
ほんの一瞬。
だが確かに。
その隙間に、感情が見えた。
海「……来るな」
低く、押し殺した声。
みこ「だったら——」
その瞬間。
黒い鎖が、強く締め上げる。
ギチギチ、と嫌な音。
海「ぐっ……!」
苦しみながらも、無理やり剣を振るう。
みこ「っ……!」
再びぶつかる武器。
火花が散る。
カレン「……始まってしまったわね」
重く呟く。
カレン「これが、“呪われし契約”」
塔の最上階。
かつての仲間同士が、刃を交える。
その光景は、あまりにも残酷で——
そして。
もう、後戻りはできなかった。
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