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「確か、シロって名前だったね。火端くんの飼っている猫。そういえば、シロはここへ来たがっていたようだけど、なんとなくわかった気がしてきたよ。多分、シロはここら辺の出身なんだろう。なんだかねえ。古葉くんから飼い主が東京の人だって聞いたことがるからねえ」
「へえー、シロが? ひょっとしたら、あの黒猫はシロの親猫なのかな?」
「さあてね、けれど、きっと違うんだろうなあ。あの黒猫は、私が広部康介のビルを見て回った時にもいたんだよ」
「え? 谷柿さんって、ひょっとしてここに住んでいたの?」
黒猫の真後ろには、モダンな家がある。
「シロの飼い主って……一体? 誰?」
「さあてね、さあ、こっちだよ」
モダンな家の脇道を通ると、古いモルタル塗りのビルがあった。
モルタル造りのビルは、廃墟同然の外観だった。至る所に蜘蛛の巣が張ってあって、ヒビができていた。
だけど、ビルの中はかなり綺麗で、調度品なども高級品のように贅沢そうな作りだった。金色やエメラルドグリーン、スカイブルー、などなどの煌びやかな内装が目立った。
「ふうん。内装変えたようだね」
「うっわー、谷柿さん。この金色のピカピカの女神像って、幾らくらいするのかな?」
「ざっと、500万だよ。けれども、きっとその女神像は、多くの涙でできているんだよ。ロクなお金で買ったんじゃないんだね。あ、ダメだよ。触っちゃ」
「は、はい」
俺はこんなところに金が入って来ること自体が、とても許せなかった。金の出所はさっぱりなんだけど、たぶん、よくないのはわかっているんだ。
くっそ。弥生は、こんなところで一体何をやらされていたんだ。
お兄ちゃん。
とても心配してきたぞ!
あの優しかった妹が……。
「うん! ここかな? 火端くん! これは金庫だよ。それに、この金庫のダイヤルって、なんか怪しいと思うんだ」
「??」
俺はこのビルの一階奥に、立て掛けてある龍の銅像の下に、谷柿さんが発見してくれた大型金庫を見つけた。谷柿さんが気になっているダイヤルは、確かに何か変だった。そうか、0がないんだ。だから、俺は金の腕時計をズボンのポケットから取り出してみた。
あれれれれ?
よく見たら、この腕時計は止まったままだぞ。
あー、閃いた!
金の腕時計は三時三十分十二秒で止まってるんだ。
だから、この場合は……。
よーっし。
俺は谷柿さんに脇へどいてもらって、33012のダイヤルを回した……。
地獄の沙汰も金次第?
カチリッと小さな音がして、扉が開いた。
多分、この金庫は警察でも押収できなかったんじゃないかな?
金庫の中には、見たこともない。あるいは、これからも見ることのないほどの大金が入っていた。
谷柿さんはヒューっと口笛を吹いた。
俺はしばらく、呆然としていると……。
大金の脇に一冊の黒い色のノートがあることに気が付いた。ノートを開けてみると、それは日記だった。
「あのね。火端くん。この金庫は、きっと広部康介の個人用の金庫なんだよ」
そうか、この金庫は広部 康介だけの金庫だったんだ。そうとわかれば、早速。
俺は日記を開いて、目を皿のようにしてから、隅から隅まで読もうとした。
「あ、火端くん。広部康介の犯罪の方も読んでしまうと、病んでしまうぞ」
「……でも」
「あのねえ、ちょっと貸してみなさい」
谷柿さんが、日記のページをパラパラと捲って行く。
「弥生ちゃんっていうんだよね。その……火端くんの妹さんは、きっと優しい子だったんだよね。なら、広部康介にとっても弥生ちゃんは弥生ちゃんだったんだよ」
「え?」
「あ、ほら。こっちから違うこと書かれている。お、弥生ちゃんのことばかりになってきたよ」
「あ!」