〜girl
「本日より皆様のサポートメンバーの
お仲間に入れていただくこと
なりました、 〇〇と申します。
よろしくお願いいたします。」
テレビで見るよりずっとスタイルが良くて
オーラのある大柄な6人に挨拶をすると、
1人1人の丁寧な返事が返ってくる。
大きな笑い声に、派手な服。
目尻にきゅっと皺を寄せる笑顔。
父親譲りの端正な顔に、美しい鼻歌。
少年のような、季節外れの半袖短パン。
スッと通る鼻筋の下で優しく微笑む口元。
細身でも男らしい体型に、印象的な左目の一重
就職活動していた時の志望動機は、
土日休み、残業なし。それだけ。
好きなことは絶対仕事にしないって
決めて、 好きなことに使う時間と、
お金と心の余裕を保てる職場であれば、
どんなにつまらない仕事でもいいって
思ってた。
そんな考えを持って就職したのは
ごく普通の事務職で、 残業も少なく、
暦通りのお休みがもらえる会社。
単純作業が嫌いではない私にとっては
好条件の職場で、
休みの日は趣味で大好きな音楽に
たっぷりと時間を使っていた。
でもいつからか、
一日のほとんどを過ごす場所を、
退屈と感じる気持ちが強くなってしまって。
好きなことを仕事にしてしまうと、
いつか嫌いになってしまう日が
来るんじゃないかと思って嫌だったけど、
やっぱり、好きなものに時間を使いたい
って気持ちが大きくなって。
勇気を出して転職したのは、
大手の音楽業界の会社の、
アーティストを支えるお仕事。
何組かのアーティストと仕事をして、
慣れてきた頃新しく担当になったのは、
SixTONES
◯「もちろん、存じ上げてます」
慎「ジャニーズだと誰が好きとか
あります?」
◯「初めて買ったCDは、V6さんでしたね」
髙「普段どんな音楽聞くんすか?」
◯「洋楽が多いです。 あと、
ミュージカルのサントラとか」
京「え、ミュージカル好きなんすか?」
◯「海外まで一人で観に行ったことも
あります」
北「一人で?アクティブ系女子ですね」
距離を縮めてくれようとしているのか
メンバー次々に声を掛けてくる中
ひとり書類を読みながら次の仕事の確認をする、
細身の彼。
お前らいっぺんに喋りすぎだよ、
なんて笑いながら
目線は書類に向いたまま。
その綺麗な横顔に目を奪われてしまって、
時が止まったように彼を見ていると、
ふと私の方を見て、視線がぶつかる。
微かに微笑んで軽く会釈をしたと思ったら、
その目はまた書類に戻る。
一度落ちた目線がもう一度上がって、
また一瞬、ぶつかる。
「〇〇さん、
こっちの打ち合わせ参加してもらって
いい?」
他のスタッフに呼ばれて、
初めて打ち合わせに参加する。
SixTONESの音楽をどんな音にして
どうやって届けるか。
彼らはアイドルで、アーティストで、
不思議なくらい、普通の社会人で。
始めは話を聞いていることしかできなかったけど、
ワクワクするような会話しか飛び交っていないこの場所は、
間違いなく大好きな場所になりそうだった。
打ち合わせが終わって一旦部屋を出ようとしたとき、
ふわっと、甘い香水の香りに包まれる。
『〇〇さん、』
「あ、はい、」
『よろしくお願いします。
余計な話ばっかでうるさい奴らですけ
ど、 頑張りますんで。』
想像していたよりも背が高かった彼が
私を見下ろしながら、
優しく目を合わせて話す。
優しくて真剣な表情に
胸が鳴ってしまったことがバレないように、
大人のふりをして静かに返事をするのが
精一杯だった。
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