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俺は足音に耳をピクっとさせた。
「じゃあ、元貴。若井を乾かしたら次行こっか。」
2人がお風呂から帰ってきた。
水は怖い。トラウマがある。
入りたくはないがりょうかのためだ。
若井だって頑張って入ってきた。
俺も頑張らないと。
「んー、ドライヤーうるさいかなぁ。怖い?2人とも。ちょっと音出すよ。」
りょうかはそう言って手に持っていたドライヤーと呼ばれるものを触りカチッと音を立てた。
その瞬間風が出てくる。
すごい、なんだこれ、と興味津々だった。
「どう?音大きい?」
りょうかは俺と若井を見て少し声を貼って言い、 すぐに風を止めた。
狐の聴覚がいいのを知っていてくれたのか。
「ううん。大丈夫。」「俺も。」
と答え、
「そっか。うるさかったらすぐ言ってね。若井、おいで。」
りょうかはクッションを下に引いてポンポンとした。
ん。と若井が素直に座った。
いつの間に若井とりょうかはこんなに仲良くなったのか。
俺は2人を見つめる。
「熱かったら言ってね。あと音も。耳うるさかったら閉じててもいいよ。」
そう若井に優しく言った。
若井も完全にもう心を許している。
んー、と目を閉じた。
若井の髪に風が行く。
りょうかはわしゃわしゃと優しく撫でていた。
耳に強く当たらないようにして。
若井はすごく気持ちよさそうだった。
羨ましい。そんな気持ちが芽生えた。
「よし、終わり。若井、頑張ったね。」
りょうかは若井を褒めた。
「……撫でてくんねぇの……?」
と若井はりょうかの方を見た。
一体お風呂で何があったのだろう。
ここまで俺以外に懐いたのは初めて見た。
「ん〜!えらぁい!よしよし!」
りょうかは嬉しそうに若井を撫でている。
お互い嬉しそうに、目を細めて。
俺も早く、早くそれをして欲しい。
そう期待を込めて耳をピクピクさせた。
「じゃあ、元貴、行こっか。」
遂に俺の番だ。耳をピクっとさせて尻尾も自然と振ってしまう。
「若井、さっき言ったけど好きに見てて。」
と先程覚えたリモコンを差し出した。
分かった、と答える若井を後に俺らはお風呂場へ向かった。
「元貴も脱げる?服。」
りょうかはそう言った。
うん、俺は返事をして服を脱ぐ。
人間の姿になった時、この布ななんだ?と疑問だった。人間は全身に巻いている。
そういうものなのか。後々洋服、と呼ばれていると知った。
「りょうか、ぬいだ。」
俺は全部脱いでりょうかを見た。
「元貴もやっぱ抵抗ないよね。」
そうりょうかが笑っていた。
何の、対抗だろうか。
「入ろっか。」りょうかはそのまま入ろうとする。
「りょうかは?」と聞くと
「とりあえず2人を様子見たいから一旦このまま入るよ。」と答えた。
「元貴、もう濡れてるから怖いかも。」
そう言って目の前の扉を開けた。
水がいっぱいだった。
俺は一気に怖くなる。先程まで気分が良かったのに。
威嚇耳になってしまい尻尾もだだ下がりだ。
「うん。怖いね、今日は触るだけにする?」
りょうかは優しく撫でた。
「若井、は?全部……出来たの……?」
俺はそうりょうかへ聞いた。
「うん。若井はもう1人でも大丈夫そうだったよ。元貴はゆっくりでもいいから。」
りょうかはそう答え微笑む。
若井が出来たなら、俺にだって出来る。
それにドライヤーと言うやつを俺にもしてもらいたい。
「やる……。」
俺は覚悟を決めて入ることにした。
「分かった。待ってね、俺が先入るよ。 」
りょうかが先に濡れた所へ入った。
それだけでもゾワッとする。
「元貴、入れそう?ちょっと足に付けてみる?」
りょうかは俺を見てそう提案した。
「うん。そうする。」
俺はりょうかの言うこと全てに肯定することにした。
「これは冷たいからお湯だそうか。お湯出すよ。シャワー怖かったら目逸らしてて。」
りょうかはシャワーと呼ばれる物を持った。
シャーと水が出てくる。
正直、怖い。溺れた記憶が蘇ってくる。
でもりょうかと一緒に入れたら嬉しい。
何とか落ち着かせる。
りょうかは「元貴、大丈夫?」とその都度聞いてくれる。
そのおかげもあって何とか行けそうだった。
「じゃあ、足にちょっとだけ付けるよ。」
そう言って下から俺を見る。
うん。そう答えてりょうかを待った。
「行くよ。」手にちょっとだけ水滴をつけて俺の足を触る。
これは案外大丈夫そうだった。
りょうかの手が暖かい。この手でもっと撫でて欲しい。
「どう?」とりょうかが上を見る。
「うん、大丈夫。」と俺は答えた。
「よし、じゃあ次は足にちょっと増やしてかけよう。元貴、これくらい、かけても大丈夫? 」
そうお湯を手ですくい見せた。
「大丈夫。」そう答えを聞いたりょうかは俺の足元にタオルを敷いた。
「いくね、どう、かな?」
少しずつ足に垂らしていく。
生ぬるくて少しくすぐったい。
「うん、平気。」
これくらいなら大丈夫だ。
「そっか。偉い偉い。元貴。」
りょうかはタオルで手を拭いて俺を撫でた。
りょうかは少しやっただけなのにこんなに褒めてくれる。
嬉しい。もっと若井のようにされたい。
「ね、入ってみて、いい?」
りょうかに褒められたいし撫でられたい。
だから無理やりにでも慣れたい。
「うん。片足だけ、つけてみよう。」
そう言って俺の両手を取った。
「どっちか足、あげてご覧。」と言って。
俺は足をあげて濡れている床へ足をつけた。
少しだけ怖くなる。
でも足はつけられていた。
「元貴、すごいね。」とりょうかに褒められた。
もっと、もっとという気持ちが強くなる。
俺は「こっちも、いい?」とまだつけていない片足を見てりょうかへ聞いた。
「うん。ゆっくりね。」と再び腕をしっかり握られる。
俺は両足を水につけられた。
それだけでりょうかはすごく褒めてくれる。
嬉しい。いっぱい褒めて欲しい。
そう思ってりょうかに微笑んだ。