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『 キミ×ガ×イナキャ 』
🛹side .
ゴンは , 誰にでも笑いかける。
それがゴンのいいところだって , 誰もが知っている。
知らない奴にも平気で話しかけるし ,
困ってる奴がいれば迷わず助ける。
危険だって分かっいても , 気になったら突っ込んでいく。
……ほんと , バカなやつだ。
「キルア!見て見て , あそこのお店!」
「はいはい , 今度は何だよ」
「ほら!変な形の魚が売ってる!」
「魚に変な形も何もねーだろ」
「いや 絶対変だって!」
ゴンは笑って , オレの手を引いた。
たったそれだけで , 少し安心する。
ああ , よかった。
今日もこいつはオレの隣にいる。
オレを見て , 笑っている。
……それだけでいい。
それだけでいいはずなのに。
「ねえ , キルア?」
物品が並んでいる店の中で , ちらっとオレを見る。
「ん?」
「オレ , 明日ちょっと一人で出かけてみようと思うんだけど…」
「……は?」
思わず , 聞き返した。
「この近くに面白そうな場所があるんだって!」
「キルア 最近疲れてるみたいだから
オレ一人で行こうかなって…!」
ゴンは何でもないことみたいに言った。
いつもの笑顔で。
「……ふーん」
「あれ?ダメ?」
「別に。好きにすれば?」
自分でも驚くくらい , 普通の声が出た。
ゴンは少し首を傾げた後 , すぐに笑った。
「ありがと , キルア!」
……何に対する礼だよ。
オレは何もしてない。
ただ お前がオレの知らないところへ行くのを , 止めなかっただけだ。
それなのに。
その夜は , 意味が分からない位 眠りにつくことが出来なかった。
ゴンが一人で歩いてるところを想像する。
知らない奴に話しかけて。
知らない奴と笑って。
知らない奴を助けて。
そのまま , そいつと仲良くなって。
……オレがいなくても , 楽しそうに笑って。
「……っ , クソ」
何考えてんだ , オレ。
ゴンはオレのものじゃない。
そんなの分かってる。
ゴンが誰と話そうが どこへ行こうが オレが口を出すことじゃない。
それに , ゴンは強い。
オレがいなくたって , 大抵のことは何とか出来る。
……知ってる。
そんなこと , ずっと前から知ってる。
だからこそ , 嫌だった。
オレがいなくても平気なゴンを見るのが。
オレじゃなくてもいいって , いつか気づかれるのが。
『――オレが , 必要じゃなくなるのが』
「……ふざけんなよ」
誰もいない部屋で , 呟いた。
何に怒ってるのかも分からなかった。
ゴンか。
頭の中にいる知らない奴か。
それとも , そんなことを考えてしまうくらい ,
ゴンに”依存”してしまった自分か。
翌朝。
「じゃ , 行ってくるね~!」
ゴンが手を振る。
オレはベッドから起き上がって , そいつを見た。
「……ゴン」
「ん?」
”行かないで”
口を一度開いて , また閉じた。
そう言えばいいだけなのに。
別に理由なんかいらない。
今日は一緒にいたい。
それだけでよかったのに。
…なのに , 口から出たのは
「……気をつけろよ」
だった。
「うん!行ってきまーす!」
ゴンは笑って , 部屋を出ていった。
扉が閉まる。
静かになった部屋で , オレはしばらく動けなかった。
「……何やってんだろ , オレ」
行かせたのは自分だ。
止めなかったのも , 自分だ。
なのに。
ゴンがいない。
たった”それだけのこと”が , こんなに嫌だなんて。
昼を過ぎても , ゴンは帰ってこなかった。
別に 珍しいことじゃない。
あいつは何かに夢中になると , 時間を忘れる。
分かってる。
分かってるから , 待てる。
……待てるはずだ。
窓の外を見る。
時計を見る。
扉を見る。
何度も , 何度も。
「……遅ぇよ」
呟いた声が , 思ったより小さかった。
そのとき , 扉が開いた。
「キルアー!!ただいま!」
「……!」
反射的に顔を上げる。
ゴンが立っていた。
いつも通りの笑顔で。
「ごめん!面白い人に会ってさ , 話し込んじゃって!」
……面白い人。
「へえ」
「それでね , すっごくいい人で――」
「……もういい」
「え?」
「もういいって」
ゴンが言葉を止めた。
自分の声が , ひどく冷たく聞こえた。
変な感じだった。
兄貴に放つような、冷たい声。
「……キルア?」
「楽しかったんだろ」
「うん!すっごく!」
即答だった。
何の迷いもなく。
ゴンは本当に楽しかったんだろう。
オレがいなくても。
オレの知らない場所で。
オレの知らない奴と。
「……そっか」
笑おうとした。
いつもみたいに。
「よかったじゃん」
でも , うまく笑えなかった。
ゴンが不思議そうにこっちを見る。
「キルア , どうしたの?」
「……別に」
「怒ってる?」
「怒ってねーよ」
「でも――」
「怒ってねーっつってんだろ!」
声が響いた。
ゴンが , 黙った。
……あ。
やっちまった。
「ぁ……ご , ごめん」
声が震えているのが自分でもわかる。
その後 , ゴンが小さく言った。
「オレ 何か悪いこと , しちゃった…?」
「ごめん!オレ…なにしちゃった , かな」
違う。
違うんだ , ゴン。
お前は何も悪くない。
悪いのはオレだ。
お前が笑ってるだけで嬉しいのに。
その笑顔がオレ以外に向けられると , どうしようもなく苦しくなる。
お前に自由でいてほしいのに。
その自由の中に , オレがいない未来を考えるだけで吐き気がする。
「……ゴン」
「……なに?」
「お前 , は…」
喉が詰まった。
言うな。
こんなの , 言うな。
言ったらきっと , ゴンを困らせる。
それでも。
「……オレがいなくても , 平気?」
ゴンは目を瞬かせた。
「え?」
「オレがいなくても , どこでも行けるし 誰とでも仲良くなれるし……」
声が震える。
こんなの , 変だ。
ゴンには , 言いたくないのに。
「……オレ , いらねーんじゃねえの」
言ってしまった。
ずっと隠していたものが , ひとつこぼれた。
ゴンはしばらく黙っていた。
それから , 困ったように笑った。
「何言ってんの , キルア」
「……」
「キルアがいなかったら , つまんないよ」
「は…?」
そんなこと , 簡単に言うなよ。
オレがどれだけ , その言葉を欲しがっていたかも知らないで。
「……じゃあさ」
「オレがずっと隣にいてもいいの?」
「え?」
「お前がどこに行っても 誰と会っても……オレが隣にいていいの?」
ゴンは , 今度こそ不思議そうな顔をした。
「当たり前じゃん!」
何でもないことみたいに。
「だって , キルアは”友達”でしょ?」
……友達。
その言葉に , 胸の奥がひどく痛んだ。
違う。
いや , 違わないんだ。
ゴンにとっては , きっとそれで十分なんだ。
でも , オレは。
オレは いつからこんなに欲張りになったんだろう。
隣にいられるだけでよかったはずなのに。
名前を呼んでもらえるだけで。
一緒に笑えるだけで。
それだけで , 十分だったはずなのに。
今はもう , それだけじゃ足りないんだ。
「……キルア?」
ゴンが近づいてくる。
「大丈夫?」
その手が , オレの肩に触れた。
けどオレは反射的に , その手首を掴んでいた。
ゴンが驚いて , こっちを見る。
「キ , キルア…?」
……離せ。
今すぐ離せ。
こんなの , ゴンが望んでることじゃない。
分かってる。
分かってるのに。
「……行くなよ , っ」
声が , かすれた。
「……え?」
「オレの知らないとこに , 勝手に , 行かないで…」
言ってから , 息が止まった。
涙がぽろっと落ちる。
最低だ。
何様だよ , オレ。
ゴンの行動を縛る権利なんて , どこにもない。
それなのに。
「……ごめん , 」
慌てて手を離して涙を拭う。
「今の , 忘れろ」
笑え。
いつもみたいに。
冗談って , そう言え。
「……キルア」
ゴンが , オレの名前を呼んだ。
まっすぐに。
逃げ場なんてないみたいに。
「オレは , どこにも行かないよ」
「でも……っ」
「キルアと一緒にいたいから , 今一緒にいるんだよ」
何も知らない顔で。
オレの中身なんて , 何も知らないくせに。
そんなことを言う。
「……ゴン , 」
「ん?」
「……お前 , ほんっとバカだよな」
「えー!?なんで!?」
ゴンが笑った。
オレも , 笑った。
いつもみたいに。
涙も拭って , 全部無かったみたいに。
その裏で , オレはひとつだけ決めた。
『――もう , こんな気持ちは隠そう』
ゴンには , 今まで通り笑っていてほしい。
オレのせいで , その笑顔が曇るのは嫌だから。
だから , 隠す。
どれだけ苦しくても。
どれだけ , こいつの”全部”が欲しくても。
……絶対に。
「なあ , ゴン」
「なに?」
「明日も一緒に , な」
「うん!もちろん!」
ゴンは何の疑いもなく笑った。
その笑顔を見て , オレは思う。
明日も。
明後日も。
その先も。
ずっと。
――お前の隣に , オレがいればいい。
それだけでいい。
……それだけで , いいはずなんだ。
「ゴン , 愛してる」
眠りについたゴンを見て ,
そっと呟いた。
コメント
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読了したよ〜!!😭💕 もう最初から最後まで胸がギュッてなった…! キルアの「オレがいなくても平気?」って問いかけが切なすぎて、ゴンが「キルアがいなかったらつまんないよ」って何げなく言うところで逆に涙出そうになったよ…。 あと「友達」って言われた時のキルアの心の声、分かりすぎて辛い…。隠すって決めたのに最後に「愛してる」って呟くの、ズルすぎるでしょ!!😭💔 続きが気になりすぎる…!みうさんのこの温度感、大好きです🌸