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「これ、落としましたよ」
入社して1日目のことだった 。初日早々遅刻してしまいそうで、小走りをしていたらポケットに入っていたハンカチを落としてしまった。
『あぁ!!急いでいるというのに、!』
私が拾おうと振り返った時、独特な、どこか懐かしいようなアイリスの香が鼻腔をくすぐった
「これ、落としましたよ」
そう言って私にハンカチを差し出したその男は細く小柄で、ぱっと見男とは思えない体型をしていた。銀縁のメガネから覗かせる瞳は西洋ではまるでみない真っ黒な色をしていて、どこか引き込まれそうな不思議な瞳だった
「?私の顔になにか付いていますか?」
『っ、あ!いえ、すいません、ありがとうございます、!』
気づけば彼の顔を凝視してしまっていた。それを遠回しに指摘された私は、恥ずかしさのあまり慌ててその場から逃げ果ててしまった
…綺麗な顔をしていた。細く長い指、綺麗に切り揃えられた爪、それにあの、高級感漂うどこか懐かしい香り。身だしなみに相当お金がかけられているんだろう、美容に興味のない素人でも一目でわかる。
『…綺麗な人』
余韻に浸っていると、時間を知らせる鐘がなったことに気づき私は急いで駆け出した
…また会えると良いな