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〇〇side
今日で、この役として廉と向き合うのも最後。
メイクルームの鏡の前。
リップを引き直す手が、ほんの少しだけ止まる。
何度もキスシーンを撮ってきた。
泣いて、笑って、抱きしめられて。
でも「最後」と思った瞬間、胸の奥が静かに締めつけられた。
スタッフ「〇〇さん、スタンバイ5分前です」
「はい!」
女優としていればいい。
ちゃんと演じ切ればいい。
それなのに、
“廉とこの距離でいられるのも最後なんだ”
そんな感情が、邪魔をする。
深呼吸。
「最後、ちゃんと笑おう」
ーーーーーー
廉side
控室で台本を閉じる。
もう見なくても言える。
セリフも、間も、〇〇の呼吸のタイミングも。
それでも落ち着かない。
今日で終わる。
スタッフ「永瀬さん、スタンバイお願いします」
立ち上がる。
鏡に映る自分に小さく言う。
「最後やぞ。ちゃんとやれ」
胸の奥が熱い。
寂しいなんて、言える立場じゃないのに。
ーーーーー
① 雨の中・相合傘・キス直前
人工雨がライトに照らされ、静かな雨音がスタジオに響く。
監督「本番いきます。カメラ回して。アクション!」
廉は背を向けて立っている。
その背中に〇〇が近づく。
〇〇「どうして…何も言わないの」
廉はゆっくり振り返る。
廉「言ったら、君は離れていくだろ」
〇〇「離れないよ…」
監督「間を大事に。目で会話して」
テイク2。
傘が揺れる。距離が縮まる。
廉「俺は…怖い」
〇〇「私は、君が好き」
〇〇が目を閉じる。
唇が触れる寸前。
監督「カット!いい!もう一回、切なさ足して!」
テイク3。
廉「失うのが怖い」
〇〇「それでも好き」
呼吸が重なる。
監督「…OK!」
② 雨とオレンジ光のキス
夕暮れロケ。オレンジの逆光。
監督「逆光強め。感情まっすぐ」
〇〇が一歩下がる。
〇〇「私、いなくなるんだよ」
廉「そんなの関係ない」
〇〇「君は笑ってなきゃだめなの」
監督「震えいらない。強く」
テイク2。
廉「俺はお前がいないと笑えない」
〇〇「ばか…」
引き寄せてキス。
雨と光が滲む。
監督「カット!最高!」
③ ソファのキス
室内セット。静かな空気。
監督「焦らない。溜めて」
〇〇が座っている。
廉「なんで逃げるんだよ」
〇〇「逃げてない…ただ怖いだけ」
廉が近づく。
テイク1、軽く触れる。
監督「感情が足りない。もっと本気で」
テイク2。
廉「俺は本気だ」
〇〇「…ずるい」
深く重なる。
監督「OK!」
④ 大学の休み時間・ほっぺキス
昼の大学セット。
監督「青春。軽くいきましょう」
廉「また無理してるだろ」
〇〇「してないよ」
廉「嘘つき」
〇〇が近づく。
〇〇「ありがと」
頬にキス。
廉「……え?」
〇〇「内緒ね」
監督「カット!いい!自然!」
⑤ 大病院の端でのキス
静かなロビー。
監督「覚悟のキス。派手にしない」
〇〇「怖いよ…」
廉「俺がいる」
〇〇「いなくならないで」
廉「絶対離さない」
静かに触れる。
監督「カット…いい」
⑥ 夜の外・ぼやける光
夜ロケ。アップ。
監督「アップ。表情勝負」
廉「離したくない」
〇〇「離れないよ」
廉「約束だ」
〇〇「約束」
キス。
背景の光が滲む。
監督「OK!」
最後の撮影
スタジオは静まり返る。
監督「これが最後の撮影シーンです。全部出して」
ラスト・ベッドシーン(感情中心)
薄暗いセット。
監督「大人の恋。でも上品に」
廉「俺を置いていくな」
〇〇「置いていかないよ」
抱き寄せる。
〇〇が目を閉じる。
廉「好きだ」
〇〇「私も」
キス。
カメラは絡めた手へ。
監督「そのまま…止めないで」
呼吸が重なる静かな時間。
監督「…カット。OK。クランクアップ!」
拍手が響く。
ーークランクアップーー
監督「以上で本編、全カット終了です!クランクアップ!」
スタジオに大きな拍手が広がる。
照明が少し明るくなり、スタッフが一斉に動き出す。
〇〇と廉は、まだ少し役の感情を残したまま立っている。
スタッフ「姫野〇〇さん、永瀬廉さん、前へお願いします!」
二人が並ぶ。
少し距離を空けて立つけれど、どこか自然に呼吸は合っている。
スタッフが大きな花束を差し出す。
スタッフ「姫野〇〇さん、オールアップです!」
〇〇「ありがとうございます!!」
両手で花束を受け取る。
色とりどりの花が視界に広がる。
次に、
スタッフ「永瀬廉さん、オールアップです!」
廉「ありがとうございます!!」
廉も花束を受け取る。
拍手が続く。
〇〇が一歩前に出る。
〇〇「約2か月間、本当にありがとうございました」
少し息を吸う。
〇〇「現場に来るのが毎日楽しみで…こんなに温かいチームに囲まれて幸せでした」
スタッフの中から「こちらこそ!」と声が上がる。
〇〇「そして廉!」
少し横を見る。
〇〇「昔から一緒に頑張ってきた仲間と、こうして主演として並べたこと、本当に誇りに思います」
スタジオが静まる。
〇〇「お疲れ様。ありがとう!!」
目が少し潤む。
廉が前に出る。
廉「2か月間、ありがとうございました」
一度、〇〇を見る。
廉「正直、〇〇とやるって聞いた時、安心したんですよ」
スタッフが笑う。
廉「関西ジュニアの頃から知ってる仲やから、変に作らんでええなって」
少し照れたように笑う。
廉「でも撮影始まったら、ちゃんと女優の顔してて」
〇〇が小さく笑う。
廉「ほんまにすごいなって思いました」
間。
廉「お疲れ様。…ありがとうな!」
声が少しだけ柔らかくなる。
監督「最後にお二人、握手をお願いします!」
拍手。
〇〇と廉が向き合う。
花束を片手に持ち直し、空いた手を差し出す。
手が触れる。
ぎゅっと握る。
少し、長い。
目が合う。
言葉はない。
でも、
“ここまで一緒に走ったな”
“よく頑張ったな”
そんな感情が、握った手から伝わる。
スタッフの誰かが小さく笑う。
「長い長い!」
スタジオが和む。
二人は少し照れたように手を離す。
廉「ほんまお疲れ」
〇〇「廉もね」
自然な笑顔。
でも目の奥は少し赤い。
関西ジュニアから一緒に走ってきた二人。
子供の頃の夢が、
今こうして主演として並んで叶っている。
拍手が止まらない。
花束の香りと、少し湿った空気。
それが、二人のクランクアップだった。
ーーーーーーーー
花束を抱えたまま、それぞれの楽屋へ戻るはずだった。
でも——
コンコン。
〇〇「入っていい?」
廉の楽屋のドア越しに声をかける。
廉「どうぞー」
扉を開けると、廉は椅子に座ったままネクタイを緩めていた。
メイクもまだ落としていない。
〇〇「お疲れ様」
廉「お疲れ」
少し沈黙。
さっきまで大勢に囲まれていたのに、急に静か。
〇〇「…終わったね」
廉「終わったな」
廉が立ち上がる。
花束の花びらが少し揺れる。
廉「なんか、実感ないわ」
〇〇「私も」
少し笑う。
〇〇「昔さ、関西で“いつか主演やりたいな”って言ってたの覚えてる?」
廉「覚えてるわ。あのボロいスタジオで」
〇〇「ボロい言うな笑」
二人で笑う。
廉「ほんまにここまで来たな」
〇〇「うん」
一瞬、目が合う。
言葉がなくても通じる空気。
廉「…ありがとうな」
〇〇「こちらこそ」
少し照れて、〇〇が先に視線を逸らす。
廉「泣きそうやった?」
〇〇「泣いてない」
廉「目赤いで」
〇〇「廉も」
また笑う。
静かな、あったかい時間。
ソファに並んで座る。
二人きり。
少し沈黙。
廉「…キスシーン緊張してた?」
〇〇「そりゃするでしょ」
廉「俺も」
〇〇「嘘」
廉「ほんまやって」
少し真面目な顔。
廉「大事に撮りたかったから」
〇〇の表情が柔らかくなる。
〇〇「うん。伝わってた」
廉が小さく息を吐く。
廉「それならよかった」
昔からの距離感。
でも、役を通したことで見えた新しい一面。
〇〇「また共演しよ」
廉「いつでも」
即答。
ーーーーーーー
帰り道の車内
それぞれの車。
でも出発前、窓越しに目が合う。
〇〇の車が少しだけ窓を下げる。
〇〇「廉!!」
廉も窓を下げる。
廉「ん?」
〇〇「ほんまにお疲れ様!!」
廉「〇〇もな」
少しだけ間。
〇〇「次はもっと成長して会お」
廉「負けへんで」
〇〇「望むところ」
二人、笑う。
スタッフ「出発します」
窓が閉まる。
車がゆっくり動き出す。
外の街灯が流れていく。
廉はシートに深く座る。
小さく呟く。
廉「ほんま、お疲れ」
一方、〇〇も車内で花束を見つめる。
〇〇「終わっちゃったな」
でもどこか、寂しさよりも達成感。
長い時間を一緒に走った。
関西ジュニアから今まで。
そして、またそれぞれの道へ。
でもきっとまた交わる。
そんな確信だけが、静かに残っていた。
この時はまだこの先何が起きるかわからなかった〇〇。
ーーーーーーー
都内のレストランを貸し切っての打ち上げ。
キャストとスタッフが揃い、どこか解放された空気が流れている。
監督が前に立つ。
監督「皆さん、本当にお疲れ様でした。この作品が無事にクランクアップできたのは、全員の力です」
拍手が広がる。
監督「それでは――乾杯!」
全員「乾杯!」
グラスがぶつかる音。
映画が終わった実感が、じわっと込み上げる。
ーーーーーー
〇〇side
はぁ……終わった。
グラスを持つ手が少し震えてるのは緊張が解けたから。
一口飲む。
……あ、強い。
でも今日はいいよね。
もう一口。
向かいで廉がスタッフに囲まれて笑ってる。
座長としてちゃんと最後まで引っ張ってた。
昔から知ってるはずなのに、今日の廉は少し遠く見える。
なんでだろ。
顔が熱い。
あ、これ酔ってる。
やば。
ーーーーー
廉side
乾杯してすぐ、スタッフに囲まれる。
でも目は自然と〇〇を探してる。
いた。
もう赤い。
ペース早すぎやろ。
昔から酒弱いくせに。
……可愛いとか思うな俺。
撮影の途中からや。
雨のシーン。
キスカットの直前、目閉じた〇〇見た時。
胸が変な音立てた。
その時は役やと思い込んだ。
でもクランクアップして、もう会えへん時間が増えるって思った瞬間。
気づいた。
俺、〇〇のこと好きや。
〇〇がふらっと立ち上がる。
そのまま廉の隣に座る。
〇〇「れーん」
廉「うわ、来たな」
〇〇「なにその顔」
距離が近い。
近すぎる。
〇〇「今日さ、挨拶よかったよ」
廉「酔ってるやろ」
〇〇「酔ってない」
腕を軽く叩いてくる。
〇〇「全部って言ったの、ちょっとずるい」
廉の心臓が跳ねる。
廉「本音やし」
〇〇「……そっか」
急に静かになる。
その顔やめろ。
〇〇「楽しかったね」
廉「……うん」
〇〇「またやりたいな」
その言葉の意味を考えてしまう。
役として?
それとも――
〇〇がもたれかかってくる。
〇〇「あったかい」
廉「おい」
離せと言いたいのに、離れたくない自分がいる。
ーーーー
〇〇side
なんか安心する。
昔から隣にいた人。
廉の匂いも声も、全部知ってるはずなのに。
最近ちょっと違う。
キスシーンのときの顔、思い出す。
あれ、演技だよね?
〇〇「廉さ」
廉「ん?」
〇〇「彼女おらんの?」
廉「急やな」
〇〇「おらんの?」
廉「……おらん」
なんでほっとしてるんだろ、私。
〇〇「私さ、廉といると楽」
本音がそのまま出る。
〇〇「昔からずっと」
廉が一瞬息を止める。
〇〇「廉も?」
ーーーーー
廉side
その目で聞くな。
俺は今、全然楽ちゃう。
好きって気づいてもうたから。
でも逃げたくない。
廉「……せやな」
それが精一杯。
これ以上言ったら止まらへん。
ーーーーー
スタッフ「集合写真いきます!」
空気が切り替わる。
〇〇はまだ俺の袖を掴んでる。
廉「離せ」
〇〇「やだ」
結局そのまま写真。
フラッシュが光る。
その瞬間思う。
映画が終わっても。
役が終わっても。
この気持ちは消えへん。
撮影中に芽生えて、クランクアップの日に自覚した感情。
これはもう、ただの共演者への想いじゃない。
俺、ほんまに〇〇のこと好きや。
ーーーー
打ち上げ終盤
二ヶ月間の撮影を終えた夜。
店内はすっかり出来上がった空気に包まれている。
笑い声。
グラスの音。
達成感と少しの寂しさ。
〇〇はというと、完全に頬が赤い。
〇〇「もう一杯だけ〜」
廉「やめとけって」
〇〇「大丈夫だもん!!」
大丈夫じゃない。
立ち上がった瞬間、少しふらつく。
廉が腕を掴む。
廉「ほら」
〇〇「えへへ」
スタッフが苦笑いする中、マネージャーが近づく。
マネージャー「すみません、〇〇弱くて…」
廉「俺、送ります」
自然に口から出た。
マネージャーは少し驚いたが、すぐに頷く。
🚕
タクシー
夜の街。
タクシーのドアが閉まると、外の音が遠くなる。
〇〇はシートに深くもたれ、すぐに廉の肩へ。
〇〇「あったかいね!!」
廉「酔いすぎや」
〇〇「酔ってない」
完全に酔ってる。
でも無防備な横顔がやけに綺麗で、視線を逸らす。
ーーーー
〇〇side
ふわふわする。
でも安心する。
廉の隣、落ち着く。
〇〇「終わっちゃったね」
廉「うん」
〇〇「二ヶ月、毎日一緒だったのに」
寂しい。
思ってたより。
〇〇「廉、寂しくない?」
素直に聞いてしまう。
廉は少し黙る。
廉「……寂しい」
その一言で、胸がきゅっとなる。
嬉しい。
なんで?
〇〇「だよね」
私はまた肩に頭を預ける。
ーーーー
廉side
近い。
距離ゼロ。
好きやって自覚してから、この距離はきつい。
でも離したくない。
二ヶ月間、毎日隣にいた。
キスシーンも、抱きしめるシーンも、全部役。
でも気持ちは本物になってもうた。
言うか?
いや、まだや。
〇〇「廉さ」
廉「ん?」
〇〇「私、ちゃんとヒロインできてた?」
不安そうな声。
廉は迷わず答える。
廉「できてた」
〇〇が少し顔を上げる。
廉「むしろ俺が引っ張られてた」
〇〇「ほんと?」
廉「ほんま」
〇〇は安心したように笑う。
〇〇「よかった」
その笑顔を見ると、余計に想いが強くなる。
ーーーーー
信号で車が止まる。
赤い光が車内を染める。
廉は少し息を吸う。
ずっと気になっていたこと。
廉「なあ」
〇〇「んー?」
廉「北斗ってさ」
その名前に、〇〇のまつ毛が揺れる。
〇〇「ほくと?」
廉「どういう関係なん」
できるだけ普通に。
でも声は少し硬い。
ーーーー
〇〇side
北斗?
なんで今その名前?
〇〇「どういうって?」
廉「仲ええやん」
ああ、そこか。
私は少し笑う。
〇〇「不仲だよ?」
でもすぐ続ける。
〇〇「でも仲間」
はっきり言う。
〇〇「一緒に頑張ってきた仲間って感じ」
それ以上でも以下でもない。
〇〇「なんで?」
廉の横顔を見る。
少し真剣。
ーーーー
廉side
仲間。
その言葉に、胸が軽くなる。
でも顔には出さへん。
廉「なんとなく」
〇〇「嫉妬?」
さらっと言うな。
廉「ちゃう」
即答。
でも一瞬間があった。
〇〇がくすっと笑う。
〇〇「分かりやすい!!やきもちでしょー笑笑」
廉「どこが」
〇〇「顔」
やばい。
〇〇「でも安心して」
その一言で心臓が跳ねる。
〇〇「北斗はほんと仲間だから」
まっすぐな目。
嘘はない。
ーーーー
タクシーがマンション前に止まる。
廉「着いたで」
〇〇「うん」
ドアが開く直前。
〇〇が小さく言う。
〇〇「変な心配しなくていいよ」
廉「……」
〇〇「私、自分で選ぶから」
ふわっと笑って降りる。
ドアが閉まる。
タクシーが走り出す。
廉は深く息を吐く。
仲間。
その言葉に救われた。
でも同時に火がついた。
廉「……選ばれたい」
二ヶ月の撮影で芽生えた気持ち。
もう誤魔化せない。
本気でいく。
ーーーーーーーーーーーーーー
一方その頃北斗は、、
とある仕事の日
都内スタジオ。
朝から番組収録。
メイクを終えて、廊下を歩いていると、角を曲がった先でスタッフ数人の話し声が聞こえた。
スタッフA「この前さ、姫野〇〇と永瀬廉の映画の打ち上げ行った人から聞いたんだけど」
北斗の足が、ほんの一瞬止まる。
スタッフB「え、なになに?」
スタッフA「なんかさ、めっちゃくっついてたらしいよ」
スタッフC「えー、そうなの?」
スタッフA「うん。〇〇ちゃん酔ってて、ずっと廉くんの隣にいてさ。肩にもたれてたって」
一瞬、空気が薄くなる。
スタッフB「それもうカップルじゃん」
スタッフC「しかもさ、お似合いだったって。現場でも雰囲気よかったらしいよ」
笑い声。
北斗は表情を変えないまま、そのまま通り過ぎる。
スタッフたちは気づいていない。
でも言葉は、ちゃんと耳に残った。
“カップルみたい”
“お似合い”
頭の中で何度も反響する。
ーーーーー
北斗side
……くっついてた?
肩にもたれてた?
〇〇が?
廉に?
足が勝手に止まりそうになるのを、無理やり動かす。
楽屋に入る。
ドアを閉める。
静寂。
北斗「……は」
小さく息が漏れる。
仲間だろ。
そう思ってた。
いや、今もそう思ってる。
なのに。
胸の奥がざわつく。
“お似合いだった”
その一言が妙に刺さる。
北斗「お似合い、か」
無意識に呟く。
想像してしまう。
肩にもたれる〇〇。
それを受け止める廉。
自然な距離。
映画で何度もキスして、抱きしめて。
その延長線みたいに、打ち上げでも並んでいたのか。
北斗は立ち上がる。
鏡の前に立つ。
自分の顔を見る。
表情はいつも通り。
でも目だけが少し鋭い。
北斗「……俺、なにしてんだろ」
ずっと隣にいたはずなのに。
気づけば、別の誰かがその距離にいる。
奪われる、なんて言い方は違う。
〇〇は物じゃない。
でも。
胸が、はっきり痛い。
それは嫉妬以外の何でもない。
コンコン。
マネージャー「本番5分前です」
北斗「はい」
声は普通。
完璧に普通。
でも心は全然普通じゃない。
スタジオに向かう廊下。
北斗はスマホを握る。
連絡する?
「昨日楽しかった?」
そんな軽い言葉で聞ける?
いや。
聞いたら何かが変わる。
北斗は一度画面を開き、閉じる。
深く息を吐く。
北斗「……お似合いってなんだよ」
小さく吐き捨てる。
自分は?
俺は〇〇のなんなんだ。
仲間?
それだけ?
もし廉が本気なら。
もし〇〇が選ぶなら。
俺は——
その先を考えた瞬間、胸がぎゅっと締まる。
気づきたくなかった。
でももう無理だ。
北斗はゆっくり目を閉じる。
北斗「……好きなのかよ」
誰にも聞こえない声。
静かに、確実に。
三人の関係が動き始めていた。
ーーーーーー
夜。
番組収録を終え、楽屋に戻る。
ネクタイを緩め、ソファに座る。
今日一日、頭のどこかにずっと引っかかっていた言葉。
“カップルみたいだった”
“お似合い”
振り払うようにスマホを手に取る。
何気なくSNSを開いた瞬間――
目に飛び込んできた文字。
【姫野〇〇×永瀬廉 映画特報第二弾解禁】
北斗の指が止まる。
動画サムネイル。
雨の中、向かい合う二人。
距離が近い。
近すぎる。
再生ボタンを押す。
《特報映像》
スローモーション。
廉が〇〇の頬に手を伸ばす。
切ない音楽。
〇〇が目を閉じる。
雨粒が二人の間を流れる。
そして――キス寸前でカット。
次のカット。
ソファに座る〇〇を、廉が引き寄せる。
視線が絡む。
ナレーション。
「この恋は、止められない」
最後のカット。
夜の街灯の中、抱き合う二人。
画面にタイトル。
一気に心拍数が上がる。
ーーーー
北斗side
……なんだよこれ。
さっき聞いた話と、全部繋がる。
肩にもたれてた。
お似合い。
キス。
抱きしめる。
映像は“演技”だって分かってる。
分かってるのに。
胸の奥が、じわじわ焼けるみたいに熱い。
コメント欄が目に入る。
「やばい、リアルすぎる」
「絶対付き合ってるでしょ」
「この2人お似合いすぎる」
北斗は無意識にスマホを強く握る。
北斗「……っ」
喉の奥が詰まる。
俺は?
俺は何してた?
仲間だと思って、安心して。
気づいたら、別の男と“恋人役”でバズってる。
いや、役だ。
役。
でも。
この距離感。
この空気。
二ヶ月も一緒にいたんだろ。
気持ちが動かない方がおかしい。
北斗は動画をもう一度再生する。
廉の目。
真剣な顔。
あれは演技か?
それとも。
考えたくない想像が浮かぶ。
もし。
もし〇〇が廉を選んだら。
俺は笑って「よかったな」って言える?
無理だろ。
胸がこんなに痛いのに。
北斗はスマホを伏せる。
天井を見上げる。
北斗「……遅かった?」
ぽつりと零れる。
ずっと近くにいた。
でも踏み込まなかったのは自分だ。
仲間でいられる安心感に甘えて。
でも今。
はっきり分かる。
あの特報を見て、こんなに苦しい理由。
北斗「……好きだろ、これ」
静かな楽屋に、自分の声だけが落ちる。
認めた瞬間、逃げ場がなくなる。
でももう誤魔化せない。
バズってる映像の中で、
〇〇は笑って、泣いて、キスしようとしている。
その相手は、自分じゃない。
北斗はゆっくり立ち上がる。
鏡の前に立つ。
目が、いつもより真剣だった。
北斗「……動くか」
静かに。
でも確実に。
北斗の中で何かが決まった。
@movie_love23
姫野〇〇と永瀬廉の特報第二弾やばいんだけど???雨のシーン美しすぎない?
@ren_fan_1999
廉くんのあの目は反則。あれ演技??無理なんだが。
@oochan_angel
〇〇ちゃん儚すぎる……あの涙ほんとに綺麗。
@cinema_news_jp
姫野〇〇×永瀬廉、特報第二弾公開。キス寸前カットが話題に。すでにトレンド入り。
@trend_report
「姫野〇〇」「永瀬廉」「お似合い」が急上昇ワード。
@kansai_love
関西ジュニア時代からの2人が恋人役ってエモすぎるだろ……
@real_comment
距離感リアルすぎん?2ヶ月撮影してたらああなるよね。
@ren_oo_ship
ごめんだけどこの2人ガチに見える。
@drama_freak
抱きしめるシーンの手の回し方リアルすぎる。あれやばい。
@oo_support
〇〇ちゃんの表情が全部恋してる顔なんよ……
@idol_watch
北斗との不仲コンビも好きだけど、廉との並び破壊力すごいな。
@hokuto_fan_6
ちょっと待って。北斗どうするのこれ。
@theory_account
打ち上げで距離近かったって噂あったよね?タイミング良すぎない?
@neutral_view
映画として普通に楽しみすぎる。映像美が強い。
@romance_addict
この特報だけで白米3杯いける。
@renlove
廉の「守りたい」感やばい。
@oochan_best
〇〇ちゃん最近さらに綺麗になってない?恋してる?
@analysis_room
目線の合わせ方が自然すぎる。長年の関係性出てる。
@hokuto_only
北斗派だけど正直この特報は強すぎる……
@late_night_x
姫野〇〇と永瀬廉、今年一番のビジュアルカップルかもしれん。
トレンド1位
「姫野〇〇」
トレンド3位
「永瀬廉」
トレンド7位
「お似合い」
ーーーーーー
一方その頃。
北斗のスマホにも同じトレンドが並んでいる。
画面を閉じても、通知は止まらない。
バズりは止まらない。
そして、物語はまだ動く。