テラーノベル
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朝、カーテンを締め切った薄暗い部屋に、規則正しいノックの音が響く。
トントン、と遠慮がちな、でも毎朝絶対に狂わないリズム。
「おはよ。、、ねぇ、今日もいかないの?」
ドアの向こうから聞こえるのは、いつも通りの、綿菓子みたいに甘くて高い声。
でも、もう私には「学校に行く」という概念そのものが理解できなかった。
ただ、この声が聞こえた時だけ、かろうじで自分が生きてることを自覚できる。
「あ、、、う、、て、ると、、、く、、」
声帯が震えない。
よだれが口元から伝い、シーツを汚す。
外の世界に対する恐怖と、自分という存在のグロテスクさに耐えきれず、私は無意識に自分の爪で、自分の顔や首を血が滲むまで掻きむしり続けていた。
ベットの周りには、自分で引き抜いた髪の毛が、黒いシミのように散らばっている。
ガチャ、と小さな金属音が響く。
彼に預けてある合鍵が回る音。
ドアが開いて、入ってきたてるとくんは、ベットの脇にしゃがみ込んだ。
「謝らなくていいよ。無理して行かなくていいから。あーあ、こんなになるまで自分を壊して。本当に、僕がいないと何もできないね」
そう言って、てるとくんは私の血塗られた両手を優しく包み込み、自分の唇を寄せて、傷口にそっとキスをした。
鉄の味がするはずなのに、彼はひどく嬉しそうに目を細めている。
そのまま、涙と脂汗で張り付いた私の髪を、まるで壊れやすいガラス細工を扱うように優しく撫でる。
「学校なんてさ、もう名前すら覚えなくていいよ。君を傷つける世界も、人間も、全部僕が消してあげる。君には僕の体温だけあれば十分でしょ?」
覗き込んできたてるとくんの瞳には、一切の光がない。
ガラス玉のような、底の抜けた漆黒。
その狂気に満ちた全肯定の檻が、今の私には世界の何よりも安全な聖域だった。
「てるとくん、わたし、を、、、ころして、、。もう、何を考えたくない、、なにも、いらない、、っ」
私の狂った願いを聞いて、てるとくんはフフ、と天使のように無邪気に笑った。
背負っていたスクールバッグを床に乱暴に投げ捨て、ブレザーを脱ぎ捨てて、私の狭いベットへと潜り込んでくる。
「あったかい。ねぇ、もっと僕の奥までおいで?」
骨が軋むほどの力で、てるとくんの細い腕が私を抱きしめる。
彼の肌の匂い、心臓の音、制服の感触が、私の壊れた精神の隙間を埋め尽くしていく。
「君が壊れたのに、僕が学校なんて行くわけないじゃん。今日だけじゃない、明日も明後日も、2人でいようね。ねぇ、僕がいないと息もできないの?、、、最高。じゃあ、僕の許可無しでは死ぬこともできないようにしてあげる」
「あ、あ、、、てるとくん、、てるとくん」
昼が過ぎ、平日の静まり返った時間。
てるとくんのポケットの奥でスマホが何度も激しく震え、学校からの着信を知らせている。
しかし、彼は画面を見ることすら拒むように、スマホを思いっ切り壁に投げつけた。
プラスチックが砕ける音が響き、完全な沈黙が訪れる。
「うるさいゴミは壊しちゃった。僕には今、君の呼吸の音しか聞こえてないもん。外の世界の奴らも、君の家族も、君を追い詰めるものは全部僕が排除してあげる。君の脳みそ、僕だけでいっぱいにしよ?他の誰もいらなくなっちゃえばいいんだよ。君をこんな風にした世界が悪いんだから。僕たちのせいで全部めちゃくちゃにして、一緒にドロドロに溶けちゃおうね」
彼の優しい全肯定という名の毒蜜が、私の壊れた脳髄を、完全に麻痺させていく。
気づけば、カーテンの隙間から差し込むわずかな光すら消え去り、部屋は完全な虚無の闇へと呑み込まれていった。
私達はもう、人間であることをやめていた。
「ねぇ、ずっとサボろうね。ずっと、ずっと」
暗闇の中、てるとくんの冷たい舌が私の涙を舐めとる。
明日になればまた朝が来る。
けれど、私はもう、あの眩しくて息苦しい場所を恐れる必要すら忘れてしまった。
私の絶望も、病みも、存在そのものすら、全部この人が食べてくれるから。
「君がここから一歩も出られないように、僕がずっと、この部屋で飼ってあげる。、、、大好きだよ、僕の動かないお人形さん。死ぬまで一緒だよ♡」
「うん、てるとくん、だいすき、、、ずっ、と、、、おにんぎょうに、して、、、、♡」
私は彼の腕の中で、完全に思考することを破棄し、終わらない2人の破滅へと、深く、深く永遠に沈んでいった。
どうでしょう?なかなか頑張りました!主
バージョン2はさらに闇を深くしてみました!
主を褒めて下さい
♡とフォローよろしくぅ
by主
コメント
1件
うわあ……読んだあと、しばらく息ができなかったよ(苦笑) てるとくんの“全肯定”が、もう完全に毒蜜でさ。優しさでじわじわと蝕んでいく感じ、すごく丁寧に書かれててゾクゾクした。“動かないお人形さん”っていう台詞、頭から離れない…。 バージョン2、確かに闇が深くなってる。でもその徹底した表現が、この作品の魅力だと思う。えいや🌿さんの書く“狂気”は、ちゃんと読者の胸に刺さるんだよね。このままのスタイル、大事にしてほしいです🌙