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ミシシッピ川の橋の上。夜風が川面を揺らし、街の灯が水面にちらちらと反射している。


ハルはギターをケースに入れ、クロエの横に座った。

言葉をどう切り出すか、ずっと考えていた。

昨日のライブハウスの熱気、クロエの鋭くも優しい言葉……

胸の奥で、何かが弾けそうに膨らんでいた。


「……クロエ」

小さな声で呼びかける。

クロエは煙草の先を指で叩き、淡い笑みを浮かべた。


「どうしたの? 急に真面目な顔して」

「いや……その……」

言葉がなかなか出てこない。

心臓が跳ね、手は少し震えている。


橋の欄干越しに流れる川面を見つめながら、ハルは決意を固めた。


> 「俺、クロエのことが……好きなんだ」




言い終えた瞬間、沈黙が訪れた。

クロエの目が一瞬、真っ直ぐにハルを射抜く。

でも怒りでも困惑でもなく、ただ静かに見つめ返してくる。


「……わかってたよ」

クロエは静かに笑う。

「言葉にするのって大事だよね」


ハルは驚きと安堵で言葉を失った。

クロエはそっと手を伸ばし、彼の手の甲に触れる。

温かく、でも強い手だった。


「私も……あんたと一緒にいたい」

その一言に、ハルの胸は熱くなる。

孤独だった日々、音楽の中で手探りだった自分の道が、ここで光を得たような気がした。


橋の上で二人は、そっと手をつなぐ。

川風が二人の髪を揺らし、街の灯がきらめく。


「これからは……一緒に旅をしよう」

クロエが囁く。

「音楽も、人生も、全部」


ハルは深く頷いた。

心の奥底にあった不安と孤独は、クロエの存在によって確かに溶けていく。

初めて、怖くなく、未来を想像できた。


その夜、橋の上で二人は初めて、恋人として手を重ねた。

音楽と愛の新しい旅が、静かに始まった瞬間だった。


青い蝶が一匹、川風に乗ってふわりと舞う。

それはまるで、二人の未来を祝福するかのように、夜空を横切った。



青い蝶が降りた日

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