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「あの」
オレはそのタイミングでようやく後ろから二人に声をかける。
「オレの大切な彼女に手出さないでもらえます?」
これ以上もう見てられないから。
これ以上もうオレが耐えられないから。
今はあなたの彼氏の代わりをさせて。
これくらいならあなたも許してくれるよね?
すると、オレの声に気付いて二人が後ろを振り向いてオレの姿を見て驚く。
「君・・が? 今の透子の?」
だったら何?
てか、透子とか名前、今でも馴れ馴れしく呼んでんじゃねーよ。
「あと。前の彼氏かどうか知りませんけど、今オレのモノなんで気易く呼び捨てにしないでもらえますかね?」
オレ以外もう呼んでほしくない。
お前にはそんな権利ないから。
「オレが彼女のこと大切にしてるんで心配しないでください。あなたの代わりにちゃんとオレが幸せにしますから」
今は彼氏代わりとして伝える言葉だけど、実際そうしたいと願っている彼女への言葉。
そうなりたいとこの先願う想い。
この男が幸せにしなかった分、オレが絶対彼女を幸せにする。
お前に彼女は絶対渡さない。
彼女はオレが守る。
「随分若い彼氏だね。ホントに君に幸せに出来るの?」
なのにこの男はオレを相手にもしないかのような態度を取る。
はっ?どういう意味だよ?
若ければ彼女を幸せに出来ないとか言いたいわけ?
「だから?オレが彼女より年下でもあなたより好きな自信も幸せにする自信もありますけど」
手放したお前にそんなこと言われたくない。
ずっとどんな時も見つめ続けたオレの方が絶対彼女を好きな自信がある。
「すごい自信だね。だけどオレも昔のオレと違うんでね。そうそう簡単に諦められそうにもないからオレも今ここにいるワケだし」
なんだよ。
なんで今更食い付いて来るんだよ。
昔のあんたと違うって何が?
オレももう昔の自分とは違うから。
今は彼女を守れる自信がある。
「透子はオレのモノなんで絶対あなたに渡しません」
もう彼女がどう思ってるとかそんなのどうだっていい。
彼女はオレのモノだ。
とにかくお前には渡さない。
「透子。この彼氏のことホントに好きなの?」
そんなオレと彼女との関係やオレの言葉を疑ってるのか彼女に確認する昔の男。
たけど、その問いかけに対してどう答えるのかは正直そこにはオレも自信がなくて。
このタイミングでオレを好きかと聞かれて、そうだと彼女が答えてくれる自信はないに等しい。
とはいえ、彼女もこの場をやり過ごしたいなら、何かしらの言葉でオレの言葉に乗っかるはずだけど・・・。
「・・・好き。だから、もう来ないでください」
・・・え?
彼女の口から一番出ないと思っていたその言葉。
こんなに早くに聞くとは思ってなかった言葉に、密かにオレも驚く。
きっと彼女もそんな風に思ってるわけではないとはわかっているけど。
ただオレの言葉に乗っかってそんな風に言っただけだとわかっているけど。
でも、聞きたくて聞けなかったその言葉に、嘘でもオレに対して言ってくれたその言葉に、ただオレの胸は躍って。
「そっ。ならとりあえず今日は帰るよ。また出直す」
「ちょっ、しつこいヤツだな・・!」
納得したのかしてないのかこの男はまだそんなことを。
「もういいよ樹・・」
つい反応してしまって動こうとしたオレを、すぐに抑えてなだめてくれる彼女。
って・・え?
今、自然にオレの名前呼んだ・・よな?
あまりにも自然で聞き間違えたのかと思ったけど、確かに聞こえた。
あっ、そっか。
彼女も、オレと付き合ってるフリしてそんな風に呼んでくれただけか。
自分でそんな風に持って行ったくせに、いざ予測しないことか起きると素に戻ってしまう。
「美咲ちゃん。お会計してくれる?」
「あっ、ハイ・・」
そして昔の男はそのまま店を後にした。