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昨日のリオンたち。
ロゼッタが入院したという情報はリオンたちに届いた。
すぐに見舞いに行きたいところだったが、ロゼッタに止められたのだ。
今は大会に集中してほしい。
ロゼッタからの手紙にはそう書かれていた。
「大丈夫かなぁ、ロゼッタ師匠」
「まあ、あの人なら大丈夫だと思うけど」
「そうですよね、うん。きっと大丈夫!」
そう言葉を交わし、アリスとリオンは互いに笑い合う。
とはいえ、やはり心配だ。
大会には出場しないアリスが見舞いに行くことにした。
リオンとシルヴィは大会に専念することに。
そして、ロゼッタの容態も安定してきたころ。
アリスは病院へと向かった。
「こんにちはー!」
元気よく挨拶をするアリス。
受付の人に話しかけると、ロゼッタの病室を教えてくれた。
アリスは早速、そこへ向かうことにした。
教えてもらった部屋の前に着き、ノックをする。
返事は無い。
もう一度ノックをするが、結果は変わらなかった。
「いないのかな…?」
首を傾げるアリス。
しかし、鍵は開いている。
中に入ってみると、ロゼッタは寝ていた。
事件当日よりも包帯の数は減っていた。
随分と安定したみたいだった。
「ん、ああ。アリスくんか」
そう言いながら目を覚ますロゼッタ。
起き上がろうとする彼女を、慌てて止めるアリス。
まだ無理をしてはいけない状態だ。
それを理解したロゼッタは再び横になる。
少しの間沈黙が続いた後で、ロゼッタの方から口を開いた。
何か話したいことがあるのだろうと思ったからだ。
「迷惑をかけてしまってすまなかった」
「いえ、そんな…」
ロゼッタの謝罪に対し、アリスは恐縮してしまう。
謝られてしまうと、申し訳ない気持ちになってしまう。
だが、ロゼッタはアリスの反応を見て察していた。
自分が気を使わせてしまっていることに。
だからあえて、話を逸らすことにした。
「わざわざお見舞いに来てくれたのかい?」
「あっ、はい!その、ロゼッタ師匠のことが心配だったので」
「ありがとう。でも、あまり長居はできないよ?私はまだ安静にしていなければならないからね」
「分かりました。けど一体、何があったんですか?」
アリスからの問いかけに対し、ロゼッタは言うべきかどうか迷った。
しかし、いずれ知ることにもなるだろうと彼女は話すことに決めた。
「ああそれか。実は、ガ―レットのヤツと会ってな…」
ロゼッタが襲われたこと。
その後、助けてくれた兵士によって病院に連れてこられたこと。
ロゼッタはアリスに一部始終を説明した。
もちろん、ガ―レットのことも。
話を聞いたアリスは、驚きを隠せない様子だった。
「そ、そんなことがあったなんて…」
「ああ、本当に情けないよ。ハハハ…」
自嘲気味に笑うロゼッタ。
そんな彼女に対して、アリスはこう言った。
それは彼女の身を案じての言葉であった。
「そんなことないです!無事でよかった…」
「ははは。そういえば、明日はいよいよ大会当日だったか」
「ええ。そうですね」
リオンとシルヴィが出る武術大会。
当然そこにはガ―レットたちも出る。
「…アリスくん、頼みがあるんだが」
「なんですか?」
「私の代わりと言っては何だが…二人を守ってあげてくれないか?」
「私が…?」
意外な言葉を聞いたアリスは戸惑ってしまう。
しかし、ロゼッタの表情はとても真剣なものになっていた。
冗談ではないということはすぐに分かった。
「頼む。私はしばらくは戦えない。だけど君たち三人なら、きっと大丈夫だと信じている」
「わ、わかりました!」
「ヤツの『眼』を見るな!アレはヤバい」
「眼…わかりました」
力強く返事をするアリス。
ロゼッタの言葉を信じることにしたのだ。
そして、アリスはもう一つ大事なことをロゼッタに伝えた。
ガ―レットと決着をつけることを。
翌日。
リオンとシルヴィ、そしてアリスは大会の会場へとやってきた。
そして、ついに大会が始まった。
まずは予選が行われることになった。
その中から上位十六名が本選に出場できる。
組み合わせはくじ引きによって決められることになった。
観客席には多くの観客が集まっている。
「二人とも、頑張って…」
アリスは観客席にいる。
ロゼッタのようにガ―レットに狙われぬよう、人の多いところにできるだけいるようにしている。
さすがに多くの観衆がいる前で妙なことはしないだろう。
そう考えてのことだ。
リオンとシルヴィの二人は第六控え室で待機し、開始の合図を待つ。
この部屋にはガ―レットたちはいないようだ。
他の控室にいるのだろうか。
「うぅ…緊張する…」
「シルヴィ、落ち着いて。いつも通りやれば勝てるから」
「そうだよね…うん、頑張ろう」
そう言って自分に喝を入れるシルヴィ。
リオンはそんな彼女に微笑みかける。
しかし、心の中では不安が渦巻いていた。
武術大会に参加するのは初めてだ。
しかも、相手は強敵ばかりである。
果たして、自分はどこまで通用するのか。
そう考えると、どうしても体が震えてしまう。
その時だった。
誰かの手がリオンの手に重ねられる。
驚いて隣を見ると、シルヴィが彼の手を握っていた。
「シルヴィ…?」
「大丈夫だよ、リオンくん。ボクがついてるから!」
笑顔を浮かべるシルヴィ。
その言葉と手の温もりのおかげで、リオンの心は落ち着きを取り戻した。
そうだ、一人じゃない。
自分には頼りになる仲間がいるのだ。
そして、大切な人が傍にいるのだ。
だから、恐れるものは何も無い。
「…ありがとう」
礼を言うリオン。
そんな彼に、シルヴィは満面の笑みで答えた。
二人のやり取りを見ていた他の参加者たちは、「あの子、かわいいな…」などと呟きながら見つめていた。
第六控え室にて、試合開始の時を待っていた二人。
しばらくして、係の者が入ってきた。
どうやら時間が来たらしい。
「では、これから開会式を始めます。皆さん、準備はよろしいですか? 」
係員の言葉に皆が返事をする。
それを聞いて、彼は説明を始めた。
この大会のルールについてだ。
以前から聞いていた通り、武器の使用は許可されている範囲で自由だ。
ただし、相手を死に至らせるような攻撃は禁止とする。
そして制限時間やその他基本的なマナーなど…
これらのルールを聞き、いよいよ始まるんだという実感が湧いてきた。
シルヴィは気合十分といった様子であり、リオンも覚悟を決めている。
「それでは、これより予選を開始します」
係員の言葉と共に会場へと出る。大勢の視線を浴び、緊張感が高まる。
しかし、ここまで来た以上はもう引き返せない。
「さあ、ついに始まりました!第三十四回、武術大会!実況は私、レヴィンがお送りします!」
どこからか声が聞こえてくる。
どうやら魔法を使って拡声しているようだ。
司会の声に観客たちが盛り上がる中、選手たちは静かに入場していく。
そして観客たちの興奮は高まっていく。
「おっ、今回は女の子の参加も結構多いんだな」
「ああ。でもまだ子供だぜ?」
「いや、見た目で判断するのは良くない。油断できないぞ」
ざわつく観客席。
そんな中、リオンとシルヴィは冷静だった。
おそらく、ガ―レットたちも参加しているはずだ。
ならば、ここで予選を抜ければガ―レットと戦うことができる。
彼も間違いなく、予選を勝ち抜いていくだろうから。
二人は闘志を燃やし、予選に臨んだ。
最初に行われたのは予選第一試合。
この中にはガ―レットたちの姿は無かった。
リオンの出番まではまだ少しあるため、彼は待合室の席に座って待つことにした。
最初の試合はシルヴィだ。
やがて、試合開始の合図が鳴る。
「はじめっ!」
戦いが始まると同時に、シルヴィが飛び出していく。
彼女の対戦相手は棒術使いのようだ。
相手のリーチの長さを警戒しつつ、慎重に攻めるシルヴィ。
だが、相手はなかなか隙を見せない。
そしてついに、シルヴィの攻撃が当たる。
だが浅い。致命傷には至っていないだろう。
すかさず追撃を行うシルヴィだったが、逆にカウンターを食らいそうになる。
それを避け、カウンターに対しさらなるカウンターをシルヴィが当てる。見事な攻防だ。
観客たちは固唾を飲んで見守っていた。
そして、とうとうシルヴィの拳が相手にクリーンヒットする。
「勝者、シルヴィ!!」
審判の勝利宣言を受け、観客たちから歓声が上がる。
シルヴィはガッツポーズをしながら戻ってきた。
「やったな、シルヴィ」
「ああ!次も頑張ろね!」
そうして武術大会の予選は続いた。
リオンとシルヴィは勝利を重ねていった…
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