「おはよう」
「雫さん、おはようございます!」
金曜日……
綺麗な青空に、ほんの少しの白い雲。
ふわふわの綿菓子みたいに、今日の始まりを可愛く演出してくれてる。
希良君は175cmあるらしいけど、すごく均整のとれた身体付きで、白パーカーにグレー系のコーチジャケット、黒のパンツスタイルが良く似合ってる。
背伸びし過ぎず大学生らしくて好感が持てた。
「希良君、今日はよろしくね」
「こちらこそ。はい、これチケットです」
「えっ? もう買ってくれてたの? ごめんね。いくらだったかな?」
私がバックから財布を出そうとしたら、
「いいですよ、お金なんて。今日は僕が誘ったんですから。それに言ったでしょ? この間のメロンパンと塩パンとカフェオレのお礼がしたいって」
そう言って、キャラクターが印刷された入場券をサッと渡してくれた。
「でも、これ8000円以上するでしょ?」
「そのくらいバイトしてるから大丈夫です。そんなことより早く行きましょうよ」
「でも……」
「本当に気にしないで。ちょっとは僕にカッコつけさせて下さい」
その笑顔、何だか春のひだまりみたいにポカポカして心が温かくなる。
「うん。ごめんね……本当にありがとう」
ハニカミながらうなづく顔も可愛い。
ゲートに近づく2人。
進むにつれ、ワクワクとドキドキに包まれる。
それをくぐると、目の前に夢のような空間が一気に広がった。
いろいろな映画などの世界観を再現したテーマパークは、細部までこだわりがすごい。
遠くから見る全体像に感動し、近くで見るリアルに驚く。
音楽も加わって、更に気分が盛り上がる。
「うわぁ~すごい」
希良君、子どもみたいにはしゃいでる。
「ほんと、すごいよね」
そういう私も、久しぶりに来てテンションがかなり上がってるかも。
「雫さん。あれ、乗りましょうよ」
希良君が指差した先にあるのは、後ろ向きに走るジェットコースター。
耳元についたステレオから流れる曲が気持ちよく、走る時の爽快感は半端ない。
でも、実は……ちょっと苦手だったりする。
「う、うん」
「怖い?」
「少し……ね」
「じゃあ、止めよう。他のにしよ」
希良君は、本当に優しいんだね。
嫌な顔ひとつしない。
「ううん、大丈夫だよ。前に1度乗ってるし、怖いけどまた乗りたいから」
それは本当。
あのスリルはクセになる。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫」
「よし、じゃあ、乗ろう。手を握ってれば安心でしょ?」
「あっ、うん」
手を握るって、恋人同士みたいだよ。
とにかく、私達は列に並んだ。
平日だけど、春休みと重なったせいでかなり混んでる。
それでも、その待ち時間の間に希良君といろんな話ができた。
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