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ネツァソド
‼️キスするよ‼️
芸術の階の指定司書――ネツァクは、社会科学の階のソファで酒を呑みながら何かを訴えている。
勿論、その酒は社会科学の階の指定司書――イェソドが用意したものではなく、ネツァクが自分の階から持ってきたものだ。
テーブルに山積みにされた本だけが唯一、イェソドがネツァクへ用意したものであった。
「だからってこの量を持ってくるのはですねぇ!だめですよ、これ…」
ネツァクはソファに背をくっつけ、だらりと全身を任せている。
そんなネツァクの様子を見たイェソドは、ため息をつきながらネツァクの座っているソファに近寄る。
「だからも何もないです。最後に本の整理をしたのはいつですか?」
イェソドはゆっくりとネツァクの横に座り、腕を組みながらネツァクに説教をする。
「大体、こうして貴方が本の整理をせずに怒られるのは貴方だけじゃないんです。連帯責任で私たちも怒られるんです。司書補たちだって…聞いてますか?」
「うん…聞いてるって…あ、なくなっちゃった…」
「聞いてませんよね??」
イェソドが額に手をあてながらため息をつくと、ネツァクがゆっくりと口を開く。
「ため息つきすぎだって…こっちもめんどくさくなってくるだろ…」
そう言われたイェソドは少しむすっとしながら言い返す。
「別にいいでしょう。なんならため息は自律神経のバランスを整えて血流を改善するという…」
「あーはいはい、そうなんですね、そうですね〜…」
イェソドは更に苛立ったように眉間に皺を寄せる。
とりあえずとソファから立ち上がり、イェソドはネツァクに一冊、本を渡した。
「一冊だけでもいいので。ちゃんと仕事してください。なんならこの前の掃除当番だって…」
「うん、うん…やるから、やるって…」
「もう……キス…し、しちゃいますよ?」
言葉を詰まらせながら途端にそう言い放ったイェソドを、信じられないと言った様子でネツァクは見つめる。
口をぽかんと開けたまま、声を発せずただ見つめる。
「っき、キス!しちゃいますよって!」
イェソドは自分から言ったにも関わらず、顔を真っ赤に染めたままぶっきらぼうに叫ぶ。
そんなイェソドの様子が可笑しく、ネツァクはつい吹き出してしまう。
「ふ。ふふ。ははは。何言ってるんだよ…あなたからはできないくせに。」
ネツァクはソファから体を起こし、イェソドにぐいっと顔を寄せる。今にも唇同士が触れそうな距離だ。
「ほら…もうあと少しで…できちゃうぞ?キス。」
ふっ、と鼻で笑いながらイェソドを揶揄う。だが、そのネツァクの目は本気だ。
「っ………」
イェソドはぎゅっと目を瞑り、そっと顔を近付ける。
ふに。唇の柔らかい感触が感じ取れる。が、すぐに顔を離してしまう。
「っこ、これで懲りたでしょう!早く仕事に…んむっ?!」
ネツァクはイェソドの後頭部に手を添え、こちら側へと頭を寄せる。
「ん…」
まだ完全に理解できていないイェソドの口へ自分の舌を侵入させ、絡める。
全く知らない未知の感覚に、イェソドは体を跳ねさせる。
「んっ……ふ…っ…」
甘い吐息を漏らしながら、ネツァクはイェソドの口内を探る。
しばらく経ち、ゆっくりと口を離すと、互いの唇を銀色の糸が紡ぐ。
「あーあ。懲りちゃった。仕事、しますかね〜。」
ネツァクはそう言い放し、本を回収するとさっさと自分の階へと戻って行く。
一人取り残されたイェソドは、唇を噛み締めながら余韻に浸っていた。