五感
人間は死ぬ時に五感を一つ一つ失う、聴覚、視覚、触覚、味覚、そして最後に残るのは嗅覚
フェーズ1が始まる前。簡単に言うとメジャーデビュー前。君に出会った。
事務所に入ると背の高い君がいた。
「こんにちは。今日はよろしくお願いします。」
どうやら違う事務所の人。研修に来てるらしい。
そんな彼に一目惚れだった。ボサボサでピッチピチの服を着て、いかにもヤンチャそうなのにどこか柔らかさを感じる人だった。
パシっ
「うおっ!?」
僕は気づけばその人と手を掴んでいた。
「あの!バンド入りませんか?」
「バンド……?」
「99%メジャーデビュー出来るから!」
「へっ?あのっ?」
「キーボード弾けますか?」
「ピアノなら……ひけます。」
「ちょっと来てください!」
「うえっ?あっ?えとっ。」
僕は君の手をひいて自分の練習部屋へ引き寄せる。まず親友の若井に紹介した。
「元貴っおまっ大丈夫かよ。」
「大丈夫!ピアノ弾けるらしいから!」
「そこじゃねぇよ。」
「ごめんなさいっやっぱ僕には……。」
「えっと……。名前聞いてませんでしたね……。」
「大森元貴です!よろしくお願いします!」
「藤澤涼架です……。」
「じゃあ涼ちゃんだね!よろしく!」
バンドのデビューは一直線に進んで行った。
最初は小さなライブ会場だったがいつの間にかアリーナになってだんだんと波に乗ってくるようになった。
でも。僕は今、このまま進んでいっていいのか。と不安になり、活動休止をした。
「元貴。ごめん私抜けるね……。」
「はっ……?あやか何言って……」
「自分のしたいこと見つけたの。本当に自分勝手なことは分かってる。でも……ごめんなさい。」
「わかった……。」
あやかが抜け。
「元貴。ごめんね。活動開始前に言うんだけど。俺も抜ける。」
「高野も……?」
「俺、大学に行って先生をしたいんだ。」
「そっか……頑張ってね。」
「じゃあミセス終わりかな?」
「……。それだけはやめて欲しい。続けて欲しい。今でも待ってる人がいるんだ。だから解散だけは……解散だけは……やめて欲しい。」
「そっか。……わかった。」
あの日高野の言葉が無ったら解散していたと思う。
そしてミセスは3人で。2人の気持ちを背負って活動開始を進めた。
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