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title:ある男たちの話
subtitle:映画スペシャルズ妄想小話
映画スペシャルズの続編妄想垂れ流し劇場~!!
ネタバレ込みなので気をつけてくださいね。
作者の夢と希望と願望にまみれた超作者得な小話たちです。
基本的に熊城×ダイヤ、たまに桐生。
作者は誠に遺憾ながら根が腐りきっていますのでどうしてもそーいう雰囲気が匂うかもしれませんので苦手な方は遠慮なくお戻りください。
いちおうぜんぶ繋がってはいます。
妄想なのでいろいろ好き勝手捏造してますので。
熊ダイは一応ブロマンス濃いめの仕事仲間以上恋愛未満な感じを目指してます。
多大なる誤解を受ける熊城の一節
/園田
朝だった。正確には朝七時。フィリピンに身を潜めている熊城組の定例ミーティングが今日、あった。なのに兄貴が来ていない。
「あのぉ…兄貴まだですかね?」
木藤が心配を含んだ声で聞いてくる。園田は腕時計を見やった。
「珍しいな」
兄貴は時間には厳しい。いや、厳しいなんてもんじゃない。約束の十分前には必ず集合。それが兄貴だ。それなのに、今日は来ていない。もう時間を1時間もすぎているというのに。
電話は何度かかけたが繋がらなかった。メッセージにも既読が付かない。
「寝坊か?」
思わず口から出た。自分で言って笑う。
「まさか」
兄貴が寝坊するなんて。きっと明日地球が割れる。とはいえ心配にもなる。もしかしたら体調を崩しているのかもしれない。
仕方なく車を家へと走らせた。そういえば、ダイヤ。一緒に家にいるはずだ。もし万が一兄貴に何かあってもダイヤがいればまず危害の面は問題ないだろうと、園田は思う。あの兄貴がかなり信頼を寄せ、心を許しているダイヤだ。
しばらくして兄貴の家に着く。合鍵は渡されている。何年もの付き合いだ。まだ自分たちが風間組だった頃、熊城の一番近くにいたのはほかでもない自分であったと園田は自負している。一応インターホンをならすが出ない。やっぱり変だ。玄関を開ける。
「兄貴?」
返事がない。部屋は静かだった。リビングにも誰もいない。やっぱり寝坊か。
「兄貴ー?」
二階へ向かう。ダイヤも寝てるのか。ダイヤの部屋を通り過ぎて兄貴の寝室の前に立った。ノックをするが返事はない。
「入りますよー…?」
ガチャ。ドアノブをひねるって中に入る。そして、園田は固まった。脳が理解を拒否していた。
「……は?」
ベッドでは熊城がいる。寝ていた。別にそれはいい。問題はその隣。ダイヤが寝ている。それもいい。まだいい。いやだいぶよくないが。大問題は熊城の腕であって、完全にダイヤの腰に回っている。俗に言うバックハグ。それはもうがっつりと。
しかもだ、ダイヤもダイヤで寝ぼけているのか熊城の腕を抱えている。まぁ、抱き枕状態が園田の目の前で繰り広げられていた。
「……」
園田の脳は無事、停止した。しばらくして再起動。そしてまた停止。そして再起動して、
「はぁあ゛あ゛あ゛!!!!????」
家が揺れた。絶叫だった。生まれて初めてこんな大声出したと、園田は後に語る。ダイヤがびくっと肩をはねさせてもちろん、熊城も起きる。
「な、なんだ」
「なんだじゃないですよ兄貴ぃぃぃ!!!」
園田はパニックだった。
「な、な、な、何してるんですか!?」
「なにって………寝てただけなんだが」
「んなの見たらわかりますよ!」
熊城はまだ半分眠そうだ。ダイヤにいたっては状況を理解していないのかゆらゆら頭を不安定に揺らしながら熊城の肩に頭をあずけている始末だ。
「……?」
寝癖をつけて、ぼんやりした目で毛布に包まっている。
「ダイヤお前も何してんだ!?」
「、?寝てた………?」
同じ答え。園田は頭を抱えた。違う。そうじゃない。寝てたのはそうだけど、そういうことじゃない。ダイヤの白シャツがはだけてるのは、もうそういうことなのか、そういうことなのかもしれない。
「あああああ兄貴!!」
「なんだよ、」
「女じゃないんですか!?」
途端に部屋が静かになった。
「は?」
ダイヤが言う。
「は?」
熊城も言う。
園田はついに叫んだ。
「兄貴が誰かと寝てる(語弊)の初めて見たんですよ俺!!」
それは事実だった。
たしかに熊城は女を連れ込むこともあった。かなりの頻度で。まぁ熊城はかなり異性にモテる風貌と魅力を持ち合わせているので。
だがしかし、誰かを部屋へ泊めるのは別。熊城は睡眠を大事にしているのでその睡眠の空間に他者が入ることを嫌がる。それなのに、同じベッドで、しかも、居心地よさそうに相手を抱いてる(語弊)。抱いてる(語弊)のである。園田の中では大事件だった。
「こいつが床で寝るってきかねぇから」
熊城が言う。
「分かります」
「そのまま寝た」
「はい、分かります」
「それだけだ」
「はい、分かります」
分かる。理屈は分かる。のに、絵面が分からない。
「兄貴」
「なんだ」
「せめてソファで寝てください」
「面倒だった」
それに、こいつがまた勝手に床で寝そうになるかもしれねぇからな、と熊城がダイヤのはだけたシャツのボタンを留めていく。
園田は天を仰いだ。
ダイヤはというと、まだ半分寝ていた。
「辰巳さん……、?」
ぼそりと寝ぼけて呟く。
園田が天を仰いだまま止まった。
「辰巳さん、だと?」
「……」
熊城もボタンを留める手が中途半端に止まる。微妙な沈黙。園田は見た。見逃さなかった。兄貴の耳が、ほんの少しだけ赤くなっているのを。
「……」
ああ、神様仏様閻魔様、これはもう俺の手じゃ負えません。兄貴を名前で呼ぶ奴がこの世に兄貴の嫁さんと家族以外に現れるなんて。俺ですら、1回も呼んだことないのに。園田は悟った。今日はもうダメだ。色々聞いたらいけない日だ。スルーしなければ。つっこんだら終わり。絶対に。
そう確信しながら、朝からとんでもないもの(語弊)を見てしまった園田は、しばらく頭を抱えることになるのだった。
ー
そんな昼過ぎ。
やっぱり園田はまだ疲れていた。ほとんど精神的に。あのあと、なんか普通に招集して解散したけど、あの衝撃を1人で抱えるにはいささか重すぎる。
「どうしたんすか?」
心配性の木藤がたずねてくる。
「いや……」
ものすごく言うか悩む。言わない方がいい気もする。でも、共犯者をつくるのも悪くないかもしれない。
「兄貴が寝坊してた」
「はい、珍しいですね。あの兄貴が寝坊だなんて」
「そうだろ」
「体調悪かったんすか?」
園田は首を振る。
「違う」
「え、じゃあ何ですか。普通に寝坊?」
沈黙のあと、園田はついに声をふりしぼった。
「ダイヤと寝てた(語弊)」
室内が静かになった。さっきまで談笑していたほかの奴も途端に静まり返る。なんか変なこと言ったか、俺。と園田は考えて、あ、となった。
「……」
「……」
「……え、ダイヤって、あの殺し屋っすよね?そいつと兄貴が寝て、、…は?」
園田は慌てた。やばい、こいつらぜったい、勘違いしてる。すんごい誤解してる。
「違う違う違う!”そういう”意味じゃないぞ!?」
「え?で、でも園田さん寝てたって、」
「ただ一緒に寝てた(語弊)だけだ!」
だが、勘違いの衝撃を受けた彼らにこの説明はさらに悪かった。
「一緒に?」
「ああ同じベッドで…」
「えっ」
「あッ、違う!ちげぇって!!おい!!!」
園田が頭を抱える。話が進めば進むほど状況が悪化していく。
「あああ兄貴がダイヤを抱えて寝てたんだ!」
「か、抱えて?」
「そ、そう!バックハグみたいな感じで!」
悲しいかな、園田には語彙力がなかった。時刻は正午過ぎ、完全終了のお知らせである。
ー
園田の失言から、熊城組ではあらぬ誤解がどんどんと広がっていた。
「なんでも熊城さんが男を抱いてたらしい」
「あ、それ俺も聞きましたよ。ダイヤとかいう殺し屋と同衾してたって!」
「バックハグもしてたと」
「なんだそれ、俺も熊城の兄貴にバックハグされてぇ…!」
「熊城さんってそっちもいけるんだなぁ………」
所詮、男はみな盛った野郎なのでまぁ歪曲する歪曲する。
園田は叫ぶしかなかった。
「違う!!!!違うんだ!!!寝てたってそういうことじゃ………!!!!」
誰も聞いていない。もうこの男たちは誰にも止められなかった。
そして数日後のこと。
歪曲しまくった誤解は様々なルートで他の人間にも届く。もちろん、ご近所さんにも。
「なぁ聞いたか?」
「聞いた」
「熊城さん、男も抱くらしい」
「へえ……」
「意外と幅広いんだな」
園田は机に頭を打ち付けた。違う。本当に違う。兄貴、違うんです。俺悪くないんです。だって俺、そんなこと言ってない。言ってないのに。なにがどうしてこうなった。
そしてさらに数日。熊城本人の耳にも誤解が飛び込むことになる。
「兄貴」
曇りなき眼で木藤が言う。
「どうした」
「俺達偏見とか全然ないんでっ」
「…何の話だ」
「応援してますから!」
熊城の眉間に皺が寄る。
「いやだから何を」
木藤はまわりの組員とうなずきあって笑顔で親指を立てた。
「兄貴幸せになってくださいね!ダイヤさんと!」
瞬間、空気が凍った。
「園田ァァァァァ」
熊城の怒声が響き園田が飛び上がる。
「違います違います違います全部誤解なんです俺じゃないんです!!!!」
「いいから説明しろ」
「俺は正しく言いました!」
「そもそも言うな」
「すみません!!俺1人じゃ抱えきれなかったんです!!!」
今更だが、園田は完全な被害者である。
しかし、時すでに遅し。噂は止まらない。火のない所に煙は立たない。
その夜、熊城組の会合の食事中。
1人分くらい金変わらないだろと熊城に連れられたダイヤは本当に何も知らないまま過ごしている。
「辰巳さん」
「なんだ」
「塩取って」
「ああ」
普通の会話。
しかし目の前で聞いていた組員達は途端にザワつきだす。
「今の聞いたか?」
「あ、ああ…」
「た、辰巳さんって言ったぞ」
「名前呼びだ」
「俺この間ちょっとふざけて辰巳さんって呼んだらすんげぇ睨まれたんだけど………」
「あの人ら距離近くない?」
「近い近い」
「やっぱりあの噂って…」
園田は1人頭を抱える。
そんななか恐るべき猛者が現れた。
「ダイヤさんって熊城の兄貴の恋人なんすか?」
新人だった。これだから若者の好奇心というものは末恐ろしい。
ブフォッと園田が緑茶を吹き出した。ダイヤの隣の熊城の拳が机にめり込む。期待に目を輝かせる新人を前にダイヤだけが首を傾げる。
「恋人?」
「違うんすか?」
「違うだろ」
本気で不思議そうだった。これには新人も困惑する。
「じゃあなんで一緒に住んでるんですか」
「え…なんでだっけ、………ああ、辰巳さんが俺と一緒に来いって」
「!!!え、っえ、じゃ、じゃあなんで熊城の兄貴のこと名前で呼んでるんすか、っ」
「………なんとなく、……?」
「えっ???」
実際そうだった。ダイヤは熊城のことをずっと熊城かおいとしか呼んでこなかったが、辰巳という本名を知ってから、なんとなく辰巳さん呼びになった、ただそんだけである。特別な意味は一切ないのだが、周囲にはそう見えなかったようだ。
熊城は園田を睨む。
「園田」
「はッ、はい」
「お前、噂止めろ」
「無理です」
即答だった。
「もう俺の手には負えません」
真顔の園田に熊城は深々とため息を吐く。
隣では、
「辰巳さん、この魚いらない」
「じゃあ俺が食うからくれ」
「ああ」
そんな平和な会話をしているダイヤがいる。まちがいなく元凶の一人なのだが。本人だけが何一つ知らないまま。
今日も熊城組では、熊城に対するあらぬ誤解が着実に広がっていくのだった。
所詮この世は、知らぬは本人ばかりなりである。
以上、お付き合いありがとうございました!!!
お粗末様です!!!!!!!!!
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コメント
1件
園田さんの「語弊」連発、めっちゃ笑いました😂 あの朝の光景を目撃した時の絶叫、脳内再生される…! それにしても、本人たちは至って平和なのに、噂がどんどん一人歩きして組内で大誤解祭りになってるの、最高に面白かったです。ダイヤの「辰巳さん」呼びが熊城さんにだけ許されてるのも、なんか二人の特別な距離感が伝わってきてじんわりしました🌷