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4 - 静かな怒り

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2025年08月24日

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静かな怒り


(すい・高1/ゆい・高3)放課後、校舎裏。

すいは三人組の男子生徒に囲まれていた。

「なぁ、すいちゃんさぁ、また停学になりかけたんだって?」

「へぇー、マジで喧嘩強いんだ? ちょっと見せてもらおうかな」

にやにやとした笑い声が耳障りだ。

「……鬱陶しい」

低く吐き捨て、すいは男子の一人を鋭く睨む。

「絡むなら、タダじゃ済まさないけど?」

その瞬間、男子たちの顔色がわずかに引きつる。

だけど、すぐにリーダー格っぽい男子が口角を吊り上げた。

「おー、怖ぇ怖ぇ。けどなぁ、女一人じゃ――」

「……お前ら、何してんだ」

低く、冷たい声が、すいの後ろから響いた。

男子たちが振り返ると、そこにはゆいが立っていた。

無造作にポケットへ手を突っ込み、ゆっくりと歩み寄ってくる。

「え、三年の……?」

「やべ、ゆい先輩だ……」

一気にざわつく男子たち。

だけど、ゆいの顔は感情を一切浮かべていなかった。

目はただ、氷みたいに冷たく光っている。

「……すい、何やってんだ」

「別に。こいつらが勝手に絡んできただけ」

すいはツンと横を向く。

けど、兄の声を聞いた瞬間、胸の奥がじんわり熱くなるのを隠せなかった。

ゆいはため息を一つ吐くと、男子たちに視線を移した。

「で、お前ら」

低い声が、空気を張り詰めさせる。

「俺の妹に手ぇ出したんだな」

男子たちは言葉を失ったように固まる。

その中の一人が、震えながら言い訳を口にした。

「い、いや、別にちょっと話しかけてただけで……」

ゆいは近づき、一人ひとりを見下ろすように視線を走らせる。

笑っていないのに、吐き気がするほどの圧力。

それだけで、男子たちの呼吸が浅くなる。

「――二度と、近づくな」

静かな声だった。

けど、その声は低く、重く、確実に脅しだった。

男子たちは慌てて頭を下げ、そのまま逃げるように走り去っていく。

「……あーあ、また怖がらせて」

すいは呆れたように言いながらも、少しだけ口元が緩んでいた。

それを見たゆいは、眉ひとつ動かさずに答える。

「お前、ほんと喧嘩売りすぎ」

「別に。売られた喧嘩買ってるだけだし」

「次やったら停学だぞ」

「うっさいな。兄貴に言われたくない」

わざとツンとした態度を取るけど、胸の奥では――

“助けに来てくれてよかった”

その言葉が喉の奥まで出かかって、飲み込んだ。

そんなすいを見て、ゆいはふっと視線を逸らす。

そして、背を向けたままぼそりと呟いた。

「……困ったら、呼べ」

「え?」

「……それだけだ」

そう言って歩き去る兄の背中を、すいはしばらく見つめ続けていた。

――やっぱり、この人には敵わない。

でも、素直に「ありがとう」なんて、絶対言ってやらない。

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