テラーノベル
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ステージを終えて楽屋に戻ると、まだ少し汗ばんだ身体に冷房の風が心地よく吹き抜けた。同級生たちは片付けや話に夢中で、いつの間にか広瀬くんと二人きりになっていた。
「……すごかったね」
自然に声が出る。手元のタオルで汗を拭いながら、胸の高鳴りをどうにか抑える。
広瀬くんは肩で息を整えながら、ふっと軽く笑った。 言葉は軽いまま、でもその笑顔が眩しくて、目を逸らさずにはいられない。
「奈央さん、こっち来てください」
言われるままに近づくと、広瀬くんは軽く腕を引き、自然に隣の椅子に並ぶ。
その距離に、胸の奥がぎゅっとなる。
視線は落とさないようにしながらも、手先がほんの少し震えているのが自分でも分かった。
「ステージ、緊張しました?」
「え、ちょっと…でも楽しかった」
答えながら、無意識に広瀬くんの動きに目が追ってしまう。
ギターをしまう手の角度、肩の傾き、笑ったときの目元。 こんな近くで見てしまうのに、何も考えず自然に振る舞う彼に、胸がざわつく。
ふと、広瀬くんの手が自分の手元にかかる。
軽く触れるだけで、そこに意味があるわけじゃないのは分かる。
でも、指先が触れた瞬間、身体中が熱くなる。
目を合わせると、いつも通りの淡い笑みを浮かべているのに、心臓は制御不能だ。
「奈央さん」
低くて落ち着いた声に、自然と呼吸が止まる。
「……なに?」
返すのもぎこちなく、でも声が震えていないか自分で確認する。
広瀬くんは少し間を置いてから、真剣な目で見つめる。
「……俺、奈央さんのことが、好きです」
突然の言葉に、胸が跳ねる。鼓動が耳まで響く。
息を整えようとしても、何もかもが一瞬で凍ったみたいに止まった気がした。
「え……」
声が小さくなる。頭の中で考えようとするけれど、心臓のリズムが速すぎて何も入ってこない。
広瀬くんは笑わず、でも重くもなく、ただ真っ直ぐにこちらを見つめる。
「ステージで横に立ってるときも、袖で腕を引いたときも、ずっと思ってました」
奈央は自然に頬が赤くなり、口が開いたまま固まる。 それ以上の言葉は出ない。
ただ、隣にいる広瀬くんの存在と、その言葉の余韻で、世界が少しだけ柔らかく、甘く変わったように感じた。
コメント
2件
初コメ失礼致します(❁ᴗ͈ˬᴗ͈) 題名とイラストに惹かれて拝見させて頂きましたっ!📖𓂂𓏸物語も、とっても面白くて素敵でしたっ🍀*゜何より広瀬くんの雰囲気や奈央さんの考え方などが本当に素敵で、私も奈央さんのようなことを体験してみたいって思っちゃいました!笑 続きも楽しみにしていますっ💭💞
次、最終話です!