「あの、持ってきました…」
使えるか分からないけど、使えそうなのがこれくらいしか…
「かぼちゃかい、?」
「そうです、使えますか?」
「、いいだろう」
先程と同じ様にかぼちゃに魔法の棒を向けるお婆さん。
キラキラと光り、かぼちゃがどんどん大きくなっていく。
人が乗れるくらいに大きくなると、ドア部分がくり抜かれ、くり抜いたかぼちゃでドアを作る。
こうして、出来上がったかぼちゃの馬車。
これで僕は舞踏会に行けるっ!
お礼を言って馬車に乗り込もうとしたら…
「待て小僧。その格好で行くつもりなのか?」
あ、服を忘れていた。
「でも僕持ってない、」
「生地はお前の着ている服で充分さ」
そう言って、今度は僕に魔法の棒が向く。
お婆さんが上から下へと棒を動かすと、水色のボロい服がカッコいいスーツに変わっていく。
「最後に!」
お婆さんはレース生地の布を取り出し、スーツジャケットの下にドレス型のレースを付ける。
男の僕でもドレスを着ている様に見せれて可愛い。
僕はお婆さんにとても感謝して馬車に乗った。
「お婆さんありがとう。」
「0時になると魔法がとけるからね」
それまでに帰らないと行けない。僕は気を引き締めて馬車を発車した。
僕はお婆さんに教えて貰った近道を通って舞踏会の会場に着く。
もう始まっている様だった。
でも、舞踏会はまだまだこれから。
勇気を振り絞って、一歩を踏み出した。
僕が会場に入ると、みんなが僕を見つめる。
静まり返ってしまった会場。
そんな状況が長く続いたが、それを打ち切ったのはまさかの王子様!?
「君は美しい。俺はこの国の王子、橙だ」
「も、もちろん存じ上げてます、!」
焦っていたから、あまり会話が記憶に残っていない。
いつのまにか王子と踊ることになっていた。
「俺のお妃になりたくてここに来てんですか?」
「はい、家を出たいのもあり…」
手を繋いで音楽に乗りながら雑談をする。
橙様はとても良い方だった。
周りの目がちょっと痛いけど…
「なんで青が、!?」
「姉の結婚を尊重できない弟がどこにいるんだい」
「大人しく待ってれば良いのに、、」
ひそかに姉や母の声も聞こえてくる。
その言葉はもちろんいいものではなかったが、僕の方が良い立ち位置にいる現状何も効かなかった。
踊って、喋っているうちに僕もだんだんと橙様に惹かれていった。
式もそろそろ終わりに近づいてきた頃、王子様の結婚相手が発表されるという時。
僕は会場にいなかった。
もうすぐで0時になるからだ。
魔法がとけてしまうッ!
履きなれないヒールで走りにくく、所々で転けそうになる。
なぜかなのか、誰かが僕を追いかけて来ている。
誰かは分からないが今は早く帰ることしか考えられない。
「お待ちくださいっ青様ッ!橙様がっ、およびですッ!」
あぁ、僕橙様のお妃様に選ばれたんだ…
なのに今行くと僕の醜い姿があらわになってしまう。
ごめんなさい、橙様
階段に差し掛かる。
やはりヒールは走りにくい、階段だし…
レースを持ち上げて3段まとめて飛び降りる。
しかし、着地に失敗してしまった…
咄嗟に手すりを掴んだから落ちる心配は無くなったが少し遠くに転がる僕の片方のガラスの靴。
そして、すぐ上から聞こえる追いかけに来ている人達の足音。
もう靴を取りに行く時間はないようだ。
僕はもう片方の靴も脱いでまた走り出す。
馬車に乗り込む。
ゴトンゴトンと馬車が発車する。
少し離れてから、舞踏会の金の音がした。
その途端ミシミシと音がなりだんだんと小さくなっていくかぼちゃの馬車。
押しつぶされる前に出ないと、と思い塞ぎかけているドアに身体をねじ込む。
間一髪で出ることができ、かぼちゃは元の大きさに戻っていた。
もちろん、従者や白馬も犬とネズミに戻っている。
僕の服もいつもの醜いボロボロの服に戻っていた。
「あーあ、終わっちゃった…」
しばらくしたある日、家のドアがコンコンと叩かれる。
ザワザワしていたので窓から見ると、なぜか王子様が家の前まで来ていた。
そして母が王子様を家にいれる声が聞こえる。
ほんとにお姉様が選ばれちゃった、?
僕は部屋のドアに耳をくっつけて話を盗み聞く。
「この靴を履けるものはいないかね?」
靴?僕が置いてってしまったやつかな?
「その靴がどうしたんですか?」
「俺のお妃にしたいと思ってた人が置いてった靴なのです。この靴を履けた人をお妃にしようと」
王子様の声だ…
「その靴っ!!私のです!」
「違うわよ!私のよ!」
王子様の一言で姉が飛びつく。
僕と姉では靴のサイズが違う、入るわけない
「なにこの靴…ちっさいわねッ」
「ち、縮んだのかしらッッ」
「貴方たちでは無いようですね、他に女性はいないですか?」
「……いないです」
「あの階段は?」
「物置に繋がる階段です!誰もいません!!」
「………念の為見に行きましょう。」
うわっ、こっちに来る、
僕の醜い姿を見たら結婚取りやめなのかな…
「失礼します」
僕の部屋に入ってくる王子様とその連れ
「ど、どうぞ」
「ッッ…昨日見た顔に似てる…」
「へっ!?……」
「とりあえずこの靴を履いてみてくれないか?」
「はいっ」
僕が履いていた靴だから当たり前にスポッと入る。
「やはりあなたでしたか」
「改めて言います。俺の妃になってください。」
「は、はいッ!」
勢いよく返事し、僕と橙様の結婚が決まった。
橙様と僕は仲良く暮らしましたとさ
コメント
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可愛いッッ 語彙力失うわ、こんな尊いふたり。