テラーノベル
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四月。
桜がまだ校門の前に残る、高校一年生の春。
「今日から席替えしまーす」
担任のその一言で、教室は一気にざわついた。
「頼む、窓側!」
「前だけは勘弁!」
あちこちで悲鳴や笑い声が飛び交う。
その中で、一人だけ静かに胸を高鳴らせている生徒がいた。
緋八マナ。
(……また見れるかな。)
彼が視線を向ける先には、教室の後ろで友達と笑っている伊波ライがいた。
入学式の日からだった。
笑うと少し目が細くなるところ。
誰にでも優しく話しかけるところ。
体育の時間になると少し髪が乱れるところ。
気づけば、授業中も休み時間も、つい探してしまう。
もちろん話したことなんてほとんどない。
せいぜいプリントを回してもらった時に、
「ありがと。」
「う、うん。」
それだけ。
だからこそ、遠くから見ているだけだった。
「緋八ー!」
後ろから肩を叩かれる。
「今日こそ神席当てろよ!」
同じクラスの友達、
「俺は絶対窓側!」
「いや、お前毎回言ってるやん。」
笑いながら返すマナだったが、心の中では別の願いを抱いていた。
(……できれば、ライくんの近く。)
そんなことあるわけない。
そう思いながら席替え用のくじを引いた。
「じゃあ順番に移動してくださーい。」
教室中がガタガタと机を動かす音でいっぱいになる。
マナは紙に書かれた番号を見て、自分の席へ向かった。
「……え。」
思わず足が止まる。
右隣の席。
そこにはまだ誰も座っていない。
(ここ……。)
その時。
「お、俺ここだ。」
聞き慣れた声。
振り向くと、机を持った伊波ライが歩いてきた。
「よろしく。」
自然な笑顔。
その一言だけで、マナの頭は真っ白になった。
「よ、よろしく……!」
心臓がうるさい。
(え、待って待って待って!!)
(隣!?本当に!?)
(夢じゃない!?)
必死に平静を装うが、耳まで真っ赤になっていた。
ライはそんな様子には気づかず荷物を整理している。
(近い……。)
いつも遠くから見ていた横顔が、手を伸ばせば届きそうな距離にある。
まつ毛長い。
横顔きれい。
思わず見つめてしまう。
「……?」
ライがふとこちらを見る。
「なんかついてる?」
「へっ!?な、なんでもない!」
慌てて前を向くマナ。
(終わった……。)
(絶対変なやつだと思われた……。)
その様子を見ていた友達は笑いをこらえていた。
「マナ今日なんか変じゃね?」
「朝からずっとソワソワしてる。」
「恋でもした?」
「し、してへん!!」
思わず大きな声で否定する。
ライも少し驚いてこちらを見た。
「……?」
「な、なんでもない!」
教室に笑いが起こる。
マナは机に突っ伏した。
(恥ずかしい……。)
昼休み。
ライは男子数人に囲まれて話していた。
「放課後ゲーセン行かね?」
「いいね。」
そんな何気ない会話を、マナは本を開きながら聞いていた。
もちろん内容は全然頭に入っていない。
(楽しそうやな。)
するとライが振り返った。
目が合う。
マナは慌てて本を見る。
(また見てもうた……。)
その時だった。
「緋八。」
「え?」
ライが話しかけてきた。
「この英語のプリントって今日提出?」
突然のことで思考が止まる。
「え、えっと……今日やったはず!」
「助かった。ありがとう。」
また笑った。
(近い……。)
(笑顔反則やって……。)
その日の放課後。
ライは友達二人と帰っていった。
「また明日な!」
「おう。」
その後ろ姿を見送りながら、マナも友達と帰り道を歩く。
「今日めっちゃ嬉しそうだったな。」
「え?」
「隣になって。」
「……そんな分かりやすかった?」
「めちゃくちゃ。」
「顔真っ赤だったぞ。」
「うわぁぁぁ!」
頭を抱えるマナ。
友達は笑いながら肩を叩く。
「頑張れよ。」
「だから違うって!」
否定する声は、春風に流されていった。
一方その頃。
帰り道。
ライはふと思い出す。
(緋八って……。)
(今日、何回か目合ったよな。)
偶然だろうか。
それとも——。
「ライ、聞いてる?」
「あ、ごめん。」
考えを振り払うように笑う。
まだこの時のライは知らなかった。
隣の席になったことが、自分たちの高校生活を大きく変えていくことを。
コメント
1件
きゃあ〜〜!!もう最高すぎる!!😭💕💕 席替えで好きな人の隣になるって夢みたいな展開じゃないですか!?マナの心臓バクバクがこっちまで伝わってきて、読んでるこっちまでドキドキしっぱなしでした…っ!! 「近い…」「反則やって…」のところ、もう完全に恋する高校生の心情がリアルで共感しかない…!! 最後にライくんも「目合ったよな」って気づいてるのがまたニヤニヤポイントですね…この先どうなるの!?!? しろさん、続きめっちゃ気になります!!次の話も楽しみにしてますね🌸
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ナギサノサナギ
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