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あまね🍡💠
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朝の訓練場。
育成プログラムのメンバーが整列していた。
日下部が全員を見渡す。
「今日は最初の課題を行う。」
「課題は災害現場を想定した救助訓練だ。」
訓練場の奥には、瓦礫を再現したエリアが用意されていた。
崩れた壁。
倒れた柱。
その隙間には救助用の人形が置かれている。
「能力だけで解決しようとするな。」
「人命救助に正解はない。」
「最も安全で、最も早い方法を考えろ。」
静かな空気が流れる。
「まずは九条。」
「朝霧。」
「二人でやってみろ。」
「はい。」
九条が前へ出る。
湊もその後ろに続いた。
九条は瓦礫の前で立ち止まる。
状況を確認すると、ゆっくりと右手を前へ出した。
念力が発動する。
大きな瓦礫が少しずつ浮き上がる。
しかし、その下の瓦礫がわずかに傾いた。
「……。」
九条はすぐに動きを止める。
さらに慎重に角度を変え、少しずつ瓦礫を持ち上げる。
時間はかかったものの、人形を無事に救出した。
「終了。」
九条は小さく息を吐く。
見学していた能力者たちが頷く。
「さすが九条だ。」
そんな声も聞こえてくる。
その横で、湊は何も言わず、九条の一つ一つの動きをじっと見つめていた。
「次。」
「朝霧。」
「はい。」
湊は瓦礫の前へ立つ。
能力はない。
だからこそ、しゃがみ込み、瓦礫全体をゆっくり見渡した。
手で軽く触れながら、どこが支点になっているのかを確かめる。
そして、一つの小さな瓦礫へ手を伸ばした。
ゆっくりと横へ動かす。
すると、支えていた瓦礫の重心が変わり、奥の空間が大きく開いた。
湊はその隙間から人形を取り出す。
九条より短い時間だった。
訓練場が静まり返る。
九条は驚いた表情で瓦礫を見る。
日下部が静かに尋ねた。
「朝霧。」
「なぜ、その方法を選んだ?」
湊は少し照れくさそうに頭をかいた。
「さっき九条さんがやっているのを見ていて思ったんです。」
「この瓦礫は上から動かすより……。」
「先にこっちを手で動かした方が、安全で早いと思いました。」
誰も言葉を発しない。
九条はもう一度瓦礫を見る。
確かに、その方法なら能力を使う必要すらなかった。
日下部の口元がほんの少しだけ緩む。
「……そうか。」
その一言だけだった。
「偶然だろ。」
静寂を破る声が響く。
全員の視線が一人へ向いた。
蒼井源太だった。
腕を組み、真っ直ぐ湊を見ている。
「一回うまくいったくらいで評価するのは早い。」
「無能力者は現場じゃ足手まといになる。」
「俺は、まだ認めない。」
訓練場の空気が少し張り詰める。
湊は反論しなかった。
静かに蒼井を見る。
そして、小さく頷いた。
「……そうですよね。」
それだけだった。
蒼井は一瞬だけ表情を変える。
反論されると思っていた。
しかし、湊は自分を正当化しようとはしなかった。
その姿に、蒼井は言葉を失う。
日下部は二人を見つめ、静かに口を開いた。
「課題は、まだ始まったばかりだ。」
その一言で空気が戻る。
能力者たちは再び訓練の準備を始めた。
湊も静かに瓦礫へ視線を向ける。
最初の課題は終わった。
しかし、本当に試されるのは——
これからだった。
第16話 最初の課題 完
コメント
1件
第16話、読み終えました……。 湊くん、無能力でここまで冷静に現場を見渡せるの、すごいなって思いました。九条さんの能力をちゃんと観察して、「上からじゃなくて横から動かす」って発想に辿り着くところ、めちゃくちゃかっこよかったです。蒼井くんの「認めない」発言には胸が痛んだけど、湊くんがああやって受け流す強さを持ってるのが、何よりのバロメーターだと思います🌙 日下部さんの口元がほころんだシーン、じんわりきました。次が気になる……!