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『君が愛おしいのだよ。君の全てが、』
土砂降りの雨が声を掻き消す中、私は彼に想いを伝えた。彼は赤面になりながらも微笑んでいた。
『僕もです。貴方が恋しい、』
彼、“芥川龍之介”は私の元部下。其して、今は世界に1人の恋人。
然し、或る日常的な晴天の日のことだった。
芥川くんが亡くなった。任務中に彼の部下がミスをし、其れを庇った為芥川くんが犠牲になったのだ。
霊安室で会う芥川くんは、彼の儚い瞳をもう開いてはくれなかった。
彼の細い手を握っても、もう微笑んではくれない。此の世に彼は居ない、
其れだけの事なのに私は理解が追いつかない。否、認めたくないと云った方が正しいかも知れない。
「彼は此の世に居ない」そう認めて仕舞えば、弱者の私は絶望するだろう。
唯、其れが厭だった。
『芥川くん、元気かい?』
其れだけ云って彼の墓の前に腰掛ける。其処には静寂だけが残った様で淋しい。
彼が居なくなってもう直ぐ1年が経とうとしていた。
街は聖夜を終えると、新年を迎える準備の為、華やかに彩られて行く。
国木田くんも「来年こそは太宰が真面目に働く様に、」と言い残し、神社参りに行ってしまった。
相変わらずの日々、騒がしい街。今日は私も“恋人”と逢う約束をしている。
芥川くんの墓に黄色の水仙の花束を添えると、とある場所に向かった。
夕暮れ時、私は恋人と海辺を歩いていた。世界に1人だけの恋人、“芥川くん”と。
彼と再会したのは1ヶ月前。何時もの如く入水をしていた時だった。
『何をしてらっしゃるのですか、』馴染みの深い声がしたと思うと、小さな水音が鳴った。
流れに逆らえない私を、彼は優しく手を引き、川沿いに引き揚げた。
其処でようやく見えた彼の容姿は、白い肌、細い躰、儚い瞳、綺麗な髪、紛れもない芥川くんだった。
如何して彼が此処にいるのか、直ぐには判らなかったが、ようやく理解した。
其れから何度か逢う約束をし、あっという間に1ヶ月が過ぎ今がある。
『私、もう君に居なくなって欲しくは無いのだよ。ずっと傍にいて欲しい。此れからも、』
夕日に染まる彼は、私の方を向き直って透き通る声で云った。
『大丈夫ですよ、僕はずっと傍にいます。』
そう云って“中也”は苦笑いをした。
2人の間に沈黙が流れる。
解説 : 太宰と芥川は晴れて恋人となったが、其れから直ぐに部下を庇った芥川は亡くなってしまう。
其のショックに太宰は耐えられず、其の日から色々な幻覚を見る様になる。
そして、密かに太宰に想いを寄せている中也は、太宰の異変に気付き、自分が芥川だと装い、陰で支えていた。
だが、太宰は中也が芥川を装っている事に気付いており、中也を芥川として受け入れようとした。
そして、太宰が芥川の墓に添えた「黄色い水仙」の花束には、「愛して欲しい」や、
『 私のもとへ帰って来て 』と云う意味が隠されている。其れは、
太宰の「中也を受け入れようとしたが、此の世に居ない芥川を求めてしまう。」そんな気持ちが込められている。
END
此処まで読んでくださって有難う御座います(泣)
本当に、太芥&太中を食料とする私からしたら結ばれて欲しかったんですけど、
此れも善いかなって((殴
因みに、ミスった部下は無事太宰さんに○されました☆
取り敢えず此の続きは在りませんので‼︎
また次の作品も読んでってね〜
グッド・バイ☆
コメント
1件
1000いいねにさせて頂きました✨!!めっちゃ深くて面白いです💗🥰!!!