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第十七章 狼の診察
沈黙。
蓮と亮平の視線が、同時に俺に向いていた。
逃げ場がない。
椅子の背もたれに背中がくっつく。
ラウ男がメモを閉じる音がやけに大きく聞こえた。
ぱたん。
ラウ男🤍「興味深い」
翔太💙「なにがですか」
ラウ男🤍「捕食競争」
翔太💙「違うったら」
亮平は小さく笑った。
亮平💚「ラウ」
ラウ男🤍「はい」
亮平💚「回診」
ラウ男🤍「あ、そうだった」
机に寄りかかる。
完全に見物姿勢だ。
亮平は俺の前に立った。
白衣の影が落ちる。
亮平💚「翔太」
翔太💙「はい」
亮平💚「今日は俺の部屋」
静かな声だった。でも、逆らえなかった。
そして蓮を見る。
蓮 🖤「……」
腕を組んだまま動かない。
でも視線は俺から外れない。
亮平はもう一度、俺を見る。
亮平💚「翔太」
翔太💙「はい」
亮平💚「過労」
少し間。
亮平💚「今夜は安静」
翔太💙「はい」
亮平💚「だから」
ゆっくり言う。
亮平💚「俺の部屋」
空気が止まった。
蓮が低く笑う。
蓮 🖤「ふざけるな」
亮平は穏やかな顔のままだった。
亮平💚「内科判断」
一瞬だけ、俺を見る。
蓮 🖤「コイツさっきまで、元気に鳴いてたぞ」
翔太💙「!!」
ラウ男が呟く。
ラウ男🤍「……黒豹、特大のマウント」
翔太💙「実況するな!」
ラウ男🤍「黒豹」
蓮 🖤「……」
ラウ男🤍「狼」
亮平💚「……」
ラウ男はペンをくるくる回した。
ラウ男🤍「どっちに食われるかな」
翔太💙「食われません!!」
亮平が手を伸ばした。
俺の手首を掴む。
優しい力。
でも逃げられない。
亮平💚「翔太」
翔太💙「はい」
亮平💚「診察」
少し笑う。
亮平💚「続き」
そして言った。
亮平💚「俺の部屋で」
蓮の目が細くなる。
蓮 🖤「……」
何か言いかけて、やめた。
そのまま踵を返す。
ドアへ向かう背中。
翔太💙「先生パジャマ……ありがとう」
右手だけが、軽く上がった。
亮平💚「おいで」
翔太💙「阿部先生……あの」
亮平💚「亮平。下の名前で呼びなさい」
ラウ男🤍「頭ひとつ分リード狼」
翔太💙「お前うるさいんだよ!回診終わったろ」
亮平が手を振るとラウールは〝ちぇっ〟と舌打ちしながら自室へと帰って行った。
亮平💚「で、何?」
翔太💙「亮平先生の部屋で寝ないとダメ?俺元気だよ」
亮平💚「俺医者ね。まだ本調子じゃないでしょ?」
確かにまだ、身体は重い。
だからと言って、よくなるとも思えないんだけど。
亮平💚「翔太が決めな」
亮平💚「俺はアイツと違って、無理はさせない」
亮平💚「……翔太が嫌がることは、しない」
亮平の部屋の前で、俺に向かって伸びて来た手。
自然と掴んだその手に引かれて、
亮平の部屋へと入った。
薄かりの灯る亮平の部屋は、蓮の部屋とは対照的だった。
参考書が壁いっぱいに並び、ソファの上は畳まれた洗濯物が
山積みにされていた。
亮平💚「診察するから……悪いねベッドに座って。片付ける暇がなくて」
翔太💙「ふふっ今度片付け手伝いましょうか?俺得意ですよ」
亮平💚「翔太にも得意なことがあったか……」
亮平💚「悪い……今のは失言だったね」
首を左右に振った。
俺だって、それくらいの自覚はある。
頰に触れた熱で、隣に亮平が座ったのだと分かった。
亮平💚「ごめんって」
翔太💙「泣いちゃいそう……」
亮平💚「どうしたの?辛い?」
翔太💙「俺看護師向いてない。目黒先生に怒られてばかりだ」
亮平💚「まだ始まったばかりだろ?大丈夫上手くやれてるよ」
翔太💙「ほんとう?」
亮平💚「うん」
亮平💚「診てもいい?」
翔太💙「うん。お願いします」
亮平は静かに頷いた。
手が伸びて、俺の顎に触れる。
少しだけ上を向かされる。
さっきまでとは違う触れ方だった。
優しい。
でも、逃げ場はない。
亮平💚「口、開けて」
翔太💙「え」
亮平💚「診察」
小さく笑う。
仕方なく口を開けると、指先が喉元に触れた。
亮平の指は温かかった。
脈を測るみたいに、喉の横に軽く触れる。
亮平💚「うん」
亮平💚「まだ早い」
翔太💙「脈?」
亮平💚「舌出して」
翔太💙「えっ」
亮平💚「早く」
翔太💙「あの……ンッ?」
首に置かれていた手が、ゆっくりと頰を撫でた。
亮平の指先が下唇をなぞると、
親指が口内の奥へと侵入した。
長くて細い指が縦横無尽に蠢き
声にならない声が漏れた。
温度を確かめるように舌の上を撫で、
歯列をなぞり、舌を摘んだり。
その度にいやらしい声が漏れ、だらしなく開いた
口の端から露が溢れ出た。
翔太💙「ねぇ……あってる?これおかしくないっンンンッ…… せんっせ……」
少しだけ顔を近づける。
距離が近い。
翔太💙「やっ……阿部せんせ………変なる///」
亮平💚「りょうへい」
翔太💙「りょうへい……っ……はっ……」
亮平💚「緊張してるね。顔も赤いし、舌先から熱を感じる」
翔太💙「……先生のせい」
亮平は小さく笑った。
亮平💚「俺?」
翔太💙「さっきから……指が」
亮平💚「ああ」
少し間。
亮平💚「黒豹のあとだから?」
心臓が跳ねた。
亮平は俺の顔を覗き込む。
逃げないように、でも追い詰めるように。
亮平💚「自分から行ったの?蓮の部屋に?」
翔太💙「パジャマ返しに行っただけ」
亮平💚「こんな夜更けに?」
亮平の目が細くなる。心の中まで覗くような鋭い視線。
亮平💚「どこ触られた?」
翔太💙「……」
言葉が詰まる。
亮平は静かに息を吐いた。
亮平💚「別に責めてない……あの人」
亮平💚「乱暴だから」
その声は怒っているわけでもない。
でも。
優しくもない。
亮平💚「怖かった?」
翔太💙「……うん。少しだけ」
亮平はしばらく黙っていた。
そして、そっと言う。
亮平💚「俺は」
少し間。
亮平💚「怖いことしないよ」
その言葉のあとも、亮平は触れてこない。
距離だけが近い。
そのとき。
廊下から、誰かの声が聞こえた。
康二🧡「まだ起きてるん?」
ラウ男🤍「観察継続」
翔太💙「帰れ!!」
亮平はくすっと笑った。
亮平はベッドの端を軽く叩いた。
亮平💚「横になりな」
翔太💙「え」
亮平💚「診察の続き」
翔太💙「それ絶対違う」
亮平は小さく笑った。
亮平💚「過労」
翔太💙「……」
亮平💚「医者の判断」
少し迷った。
でも体は正直だった。
ベッドに腰を下ろすと、マットレスが静かに沈む。
柔らかい。
翔太💙「……失礼します」
横になる。
天井がぼんやり見える。
亮平はベッドの反対側に回った。
そして静かに隣へ腰を下ろす。
距離が近い。
でも触れない。
翔太💙「先生」
亮平💚「なに」
翔太💙「近いです」
亮平💚「ベッド狭いからね」
翔太💙「広いです」
亮平💚「そう?」
少し沈黙。
部屋の中は静かだった。
外の廊下の音も遠い。
俺の呼吸だけが聞こえる。
亮平がそっと言う。
亮平💚「消毒しておかないとね?」
翔太💙「えっ?」
亮平は、人差し指で唇をなぞった。
亮平💚「ここは?」
一つずつ確かめるように。
亮平💚「他にはどこに触れた?言ってご覧」
翔太💙「亮平先生何もしないって言った」
亮平💚「これは処置だもの……教えなきゃ全部消毒しちゃうよ?」
長い指が、ズボンのボタンに手が掛かった。
ボタンを外し、チャックに手が添えられる。
翔太💙「そんなとこ触られてない、お腹と背中!あっあと、耳とか……えっとえっと」
亮平💚「ふふっ教えてくれてありがとう」
翔太💙「へっ?ンンンッ……あっ……っ」
亮平💚「狼はね、賢いんだよ。覚えておきなさい」
耳元でくすっと笑った亮平は、
一つずつ、蓮の痕跡を消すように、
事細かに俺から行為を聞くと、
蓮の痕跡をなぞるように、ひとつずつ、上書きしていく。
翔太💙「ンッ……はっあっ……だめっ///」
亮平💚「翔太、俺に触られるのいや?」
嫌じゃなかった――
ただ、自分の身体じゃないみたいに疼いた。
唇が触れるたび、息がこぼれる。
亮平から目が離せない。
翔太💙「……怖いよ」
亮平💚「すぐに良くなる――ほらもう――」
反応する下半身をそっと撫でた。
ピクリと跳ねた身体。
クスッと耳元で笑った亮平は、
シャツのボタンを一つ、また一つと外していく。
シャツから覗いた赤い花びら。
一段と目を細くした亮平は、嫉妬しているように見えた。
亮平💚「これも蓮?」
顔を横に振った。
亮平💚「あぁ……ロイヤルな患者様だね」
亮平💚「でも……翔太、嘘はよくない」
翔太💙「嘘じゃないよ」
亮平💚「上書きされてる……全く……どうしようもないな」
噛み付くように鎖骨に歯を立てた。
口内には指が這い、ダラリと空いた口からは雫が落ちる。
弱々しく押し返した腕は手首を取られ頭上で拘束された。
亮平で頭がいっぱいになる。
長い睫毛を伏せて、うっとりと俺を見つめた。
上気した肌に舌が這う。
翔太💙「ンンンンッ……あっ……はっ……せんせっ」
静かな部屋に
甘い音だけが残った。
亮平💚「残念だけど今日はここまで」
亮平💚「これ以上は、本気になるからやめておく」
翔太💙「疲れた……」
亮平💚「よく鳴いたものね」
俺は少しだけ体を丸めた。
疲れが急に押し寄せてくる。
亮平が小さく言う。
亮平💚「寝な」
翔太💙「……」
翔太💙「先生」
亮平💚「ん」
翔太💙「俺」
少し間。
翔太💙「向いてないのかな」
亮平はすぐに答えなかった。
少しだけ沈黙が続く。
そして静かに言う。
亮平💚「向いてるよ」
翔太💙「ほんと?」
亮平💚「うん」
亮平💚「あんな顔して患者の背中さすれる看護師」
少し笑う。
亮平💚「なかなかいない」
俺は目を閉じた。
胸の奥が少しだけ軽くなる。
亮平の声が静かに続く。
亮平💚「だから」
亮平💚「大丈夫」
その声を聞きながら、
俺の呼吸は少しずつゆっくりになっていった。
部屋は静かだった。
――
翔太の呼吸は、もう完全に眠りのリズムだった。
しばらくして。
亮平は横を見た。
翔太はもう眠っている。
亮平は小さく笑った。
そして。
そっと、翔太の頭に手を置く。
ほんの一瞬だけ。
亮平💚「……かわいいな。もっと堕ちなさい……俺しか見えなくなるように」
そのとき。
廊下から声がした。
ラウ男🤍「観察記録」
亮平は目を閉じた。
ラウ男🤍「狼」
少し間。
ラウ男🤍「我慢中」
亮平💚「……帰れ」
ラウ男は楽しそうに笑った。
寮の夜はまだ続いていた。
でも、
雪うさぎは――
もう夢の中だった。
コメント
3件
寝つきがいい雪うさぎ可愛い えっとえっとがむちゃくちゃ可愛い😍💕
