テラーノベル
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風呂から上がった佐野勇斗は、洗面所の鏡の前で深呼吸していた。
「……よし」
頬はまだ熱い。
でも。
このままずっと仁人にやられっぱなしなのは流石に悔しい。
今日ずっと甘やかされて、照れさせられて、心臓を壊され続けてる。
だから。
今度は自分が頑張る番だ。
「……彼氏だし」
小さく呟いて、自分に気合を入れる。
そしてリビングへ戻ると――
ソファでスマホを見ていた仁人が顔を上げた。
その瞬間。
仁人が固まる。
「……え」
「な、何」
勇斗は部屋着の裾を引っ張る。
仁人に借りた少し大きめのTシャツ。
袖も長い。
「……かわい」
「また!?」
「いや無理、サイズ感やばい」
仁人が片手で口元を押さえる。
勇斗は一瞬たじろいだ。
でも。
ここで負けるわけにはいかない。
「……仁人」
「ん?」
勇斗はゆっくり隣に座った。
距離はかなり近い。
仁人が少し驚いた顔をする。
「どうしたの」
「……今日さ」
「うん」
「仁人、いっぱい甘やかしてくれたじゃん」
仁人が静かに瞬きをする。
「だから……」
勇斗は少し照れながら、そっと仁人の頭に手を乗せた。
「俺もする」
空気が止まる。
「……え」
「いつも頑張ってるし」
「……」
「今日デートもいっぱい考えてくれたし」
「……勇斗」
「だから……なんか、甘やかしたい」
仁人が完全に固まった。
勇斗は内心パニックだった。
うわ無理恥ずかしい。
でももう止まれない。
「……よしよし?」
ぎこちなく頭を撫でる。
その瞬間。
仁人が勢いよく顔を伏せた。
「っ……」
「え!? 嫌だった!?」
「違う……」
声が小さい。
耳が真っ赤だった。
勇斗は目を丸くする。
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「……仁人?」
「今それやるの反則……」
「え」
「無理、心臓やばい」
勇斗は思わず笑ってしまった。
「仁人でもそうなるんだ」
「なるに決まってる」
「かわいい」
今度は仁人がゆっくり顔を上げた。
「……勇斗」
「ん?」
「今日ほんとどうしたの」
「頑張ってる」
「何を」
「彼氏」
その一言に、仁人が完全に黙る。
勇斗は照れながらも続けた。
「だって仁人、いつも余裕あるから」
「余裕ないよ」
「ある」
「勇斗の前だとない」
「……」
「今日ずっと振り回されてる」
その顔が本気っぽくて、勇斗は少し嬉しくなる。
だから調子に乗った。
「……仁人」
「ん?」
「おいで」
「……は?」
「甘やかしてあげる」
言った瞬間、自分で死にたくなった。
何言ってるんだ。
でも仁人はじっと勇斗を見つめたあと、ゆっくり隣へ寄ってくる。
「……ほんとに?」
「う、うん」
「後悔しない?」
「しない」
すると仁人は小さく笑って、そのまま勇斗の肩にもたれた。
「っ……!」
重みがかかる。
近い。
シャンプーの匂い。
勇斗の心臓が一気に暴れ始める。
でも。
逃げない。
頑張ると決めた。
「……よしよし」
再び頭を撫でる。
仁人が小さく息を漏らした。
「……勇斗」
「な、何」
「それ続けて」
「え」
「気持ちいい」
勇斗の耳まで赤くなる。
でも嬉しくて、撫でる手を止めなかった。
すると仁人がぼそっと呟く。
「……好き」
「っ……」
「今日の勇斗、破壊力高い」
「知らん……」
「かわいくてかっこいいのずるい」
「それ仁人の方だろ」
「今は勇斗」
仁人が少しだけ顔を上げる。
その距離が近くて、勇斗は息を止めた。
でも仁人はふっと笑うだけだった。
「……なんか幸せ」
その声があまりにも柔らかくて。
勇斗は胸がぎゅっとなる。
「……俺も」
「ん」
「仁人が嬉しそうだと、俺も嬉しい」
その瞬間。
仁人が再び固まった。
「……勇斗」
「な、何」
「今日メロすぎる」
「またそれ!?」
「だってほんとにやばい」
仁人が勇斗の肩に額を押しつける。
珍しく完全に甘えてる。
勇斗はそれが嬉しくて、また優しく髪を撫でた。
「……仁人」
「んー?」
「いつもありがとう」
仁人がゆっくり顔を上げる。
その目が少しだけ驚いていた。
「急にどうしたの」
「なんとなく」
「……」
「仁人と付き合えてよかった」
数秒、沈黙。
そして仁人は、困ったみたいに笑った。
「……ほんと無理」
「え!?」
「好きすぎる」
そう言って、仁人は勇斗をぎゅっと抱き寄せる。
「わ、ちょ、仁人!」
「充電中」
「何それ!」
「勇斗成分足りない」
「……っ」
耳元で笑う声がくすぐったい。
でも嫌じゃない。
むしろ安心する。
勇斗はそっと仁人の背中に腕を回した。
すると仁人が小さく息を飲む。
「……勇斗」
「ん?」
「それ、反則」
「仕返し」
「今日ずっと負けてる気がする」
「へへ」
やっと一回勝てた。
そう思った次の瞬間。
仁人が勇斗の首元に顔を埋めながら、小さく呟く。
「……でもまだ全然足りない」
「……へ?」
「もっと甘やかして」
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹
コメント
1件
みぅです🤍🥀 第9話、拝読しました……! 勇斗くんが「彼氏」として頑張って仁人を甘やかそうとする姿、めちゃくちゃ尊かったです。特に「おいで」からの仁人の「後悔しない?」ってやり取り、心臓に悪すぎました。仁人が「充電中」って甘えてるの、ギャップ萌えでやばいです。 お互いを想い合う空気が丁寧に描かれていて、読んでて胸がぎゅっとなりました。続きも楽しみにしてます🌙