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目を覚ました瞬間、まず思った。
――あれ、天国…?
視界いっぱいに広がるのは、黒曜石のように艶やかな天井。
宝石のような光を放つ魔法陣が静かに浮かび、空気は甘く、どこか重い。
(……病院じゃない)
次の瞬間、私の思考は完全に止まった。
小さすぎる。
身体が、ありえないほど小さい。
「――おお……!」
低く、しかし震えた声が響く。
ゆっくり視線を動かすと、そこには一人の男が立っていた。
漆黒の長髪、切れ長の紅い瞳、彫刻のように整った顔立ち。
――ありえないくらい、美しい。
(……誰? モデル? 俳優? いや、コスプレ……?)
混乱する私をよそに、男はそっと膝をつき、
信じられないほど優しい表情で、こちらを見つめた。
「無事に生まれてくれて、ありがとう」
その瞬間、脳内に一気に情報が流れ込んできた。
ここは異世界。
私は転生者。
そして――
(え、待って)
この人、
魔王……?
男の背後には、床に額を擦りつけるほど深く頭を下げる魔族たち。
重苦しい沈黙の中、誰かが震える声で口にした。
「魔王陛下……姫君のお名前は……」
魔王は、私を抱き上げる。
その腕は驚くほど優しく、壊れ物を扱うようだった。
「――セラフィナ・ノワール」
その名を告げられた瞬間、
胸の奥が、すとんと落ち着いた。
(……私の名前)
「我が唯一の娘だ」
周囲がどよめく。
「尊きお名前……!」
「なんという……神々しい……」
……え?
私は恐る恐る、自分の小さな手を見た。
白磁のような肌、細い指。
そして、周囲の視線が、あまりにも熱っぽいことに気づく。
(……なんで、そんな目で見るの?)
魔王――父、らしいその人は、私の額にそっと口づけた。
「安心しろ、セラフィナ。
この世界で、お前を傷つける者など存在しない」
その言葉に、魔族たちが一斉に跪く。
「「「姫君に永遠の忠誠を――!」」」
(……え?)
恐れられるはずの魔王の娘。
孤独な運命を背負うはずだった存在。
なのに――。
(もしかして……)
私は、魔王の腕の中で、静かに悟ってしまった。
この世界、私に甘すぎる。
そしてまだ知らない。
この先、魔界だけでなく、人間界すらも巻き込み、
“溺愛ルート”が確定していることを。