テラーノベル
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中年の男は正源にまた一礼し、本堂の縁側に座って作業を見ていた女性の所へ小走りで近寄り、ちょこんと頭を下げて言った。
「では、これで。責任もってリサイクルセンターまで運びますので」
女性は板の間に両手をついて深々とお辞儀しながら応えた。
「お世話をかけました。よろしくお願いいたします」
やがてバリバリバリと、ドローンの回転翼が一斉に空気を切り裂く音が響いた。ドローンはそのままゆっくり宙に浮きあがり、周囲の建物の屋根より高い位置に到達すると、そのまま水平に動き出し、隣のアパートの屋根の向こうへ消えて行った。
男たちはもう一度軽く頭を下げ、寺の門に向って歩き去って行った。
本堂へ戻り、女性と向かい合って座布団に座り、お茶を勧めながら正源は相手にかけるべき言葉を探していた。
女性は分厚い和紙で出来た高級そうな封筒を畳の上を滑らせるように差し出した。
「些少ですが、お布施でございます。本日は檀家の者でもない私の、非常識な頼みを聞いていただき、本当にありがとうございます」
「頂戴いたします」
正源は右手を体の正面で縦に構えて一礼し、封筒を手に取って袈裟に懐に入れた。すると女性が不意にこう言った。
「ご住職さま。ロボットにはあの世とか、極楽とか、そのようなものはあるのでしょうか?」
「え?」
予想もしていなかった問いかけに、正源は絶句しかけたが、気を取り直して必死で返すべき言葉を探した。
「まあ、それは拙僧のような未熟者には分かりかねますが。今度お山へ行く事があったら、本山の高僧にでも尋ねてみましょう」
「そうですか」
女性は少し残念そうな顔をした。その時、正源の頭に、さっき中年の作業員が言っていた言葉が突然浮かんできた。
「ですが、輪廻転生はあるのかもしれません」
「生まれ変わりですか? ロボットに?」
今度は女性の方がきょとんとした表情になった。正源は小さくうなずいて言葉を続けた。
「さっきの業者の方がおっしゃるには、あのロボットはいろんな部品などを再利用されて新しい製品に生まれ変わるのだと。人が死して、その体が土に返り、植物の養分となって新しい命が生まれる。リサイクルとは、それと似たような事なのかもしれませんね」
女性は心底感心したようで、数回続けてうなずきながらつぶやいた。
「確かにおっしゃる通りですわ。ピーちゃんはまたロボットになるのかしら?」
コメント
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うわあ、第7話、すごく静かで深い話でしたね。ロボットのリサイクルを「輪廻転生」に重ねる正源さんの言葉、心に染みました。お寺の縁側の情景と、ドローンのバリバリいう音が映像として浮かんできて、現実と信仰がふわっと重なる瞬間の美しさ。あの女性の「ピーちゃんはまたロボットになるのかしら」という最後のつぶやき、何だか切なくて、また読み返したくなりました。