「________ で 。」
煩い程雨が地面を叩きつける音が街中に響いている。傘を差さない人なんて居ない。行き交う人は皆多種の傘で雨を凌いでいた。
この時間帯は基本部活があって、ここを通るのは後二時間後だと言うのだけれど、今日は部活が休みで。俺はいつもの友人と帰ろうかと誘ったがどうやら委員会での仕事があるらしく、仕方なしに一人で帰るところだった。
そんな時、偶然にも部活仲間で同じクラスのknmcと会って、一緒に帰ることになった。
それで、帰る途中に雨が降って、持っていた傘を広げた。次第にそれは強くなっていて、話すにも雨の音に遮られ中々聞き取れない。それでも何だかそれが楽しくて、後ろにいるknmcに聞こえるように部活で出す声量で話を振れば、knmcもそれなりの声量で返事が帰ってくる。
それで、なんだっけな… 。あと少しで三年生かぁって話になって、新しい生活に楽しみと期待と、それでいて少し寂しさを語り合う。
そうだ 。knmcがか細い声でなにか言っていた。何を言ったのか?
「何てぇっ!何か言った?!」
並行出来ない道で俺は前に、後ろにknmcの状態で、俺はほんの少しだけ後ろを向く。傘があって剣持の顔が伺えない。
「んいやっ何も言ってないけど!!」
傘の向こう側にそういった返事が帰ってくる。
「ほんとかよっ!」
「んっふふ!ほんとだよ!」
雨の日でも楽しめるなんて、中々ない事だよな。
その友人はあと少ししたら進級して、最高学年と言われる三年生へとなる。彼はそれが楽しみで期待していて、でも何処か不安らしい。何となく分かる。だって彼は次期部長とも言われてるものだから。それなりにプレッシャーは感じているのだろう。
僕もそこそこ上手い方であるが彼には敵わない。何もかも僕と違っていてとても綺麗で、そんな彼の竹刀を持って構える姿は傍から見てもかっこいいものだ。
だからそう言われてるのも納得。
しかし、なんだかなぁ。寂しいものだ。本当に寂しい。
寂しいなんて、去年は思いもなかったのにな。今年はそれなりに思入れがあるらしい。
彼は言った。今日お前と一緒に帰れて良かった、お前と話すの楽しい。って何だよ、そう言われると僕は更に寂しくなるじゃないか。
ズルいと思う。
僕に寂しいなんて言っても、楽しいなんて言っても、どうせ来年の春には忘れてるんだろ?
君もどうせ置いて行くんだ。僕を。
でも、もしかしたら覚えていてくれるかもって淡い期待をこの時期抱えてしまう。あぁ、鬱陶しいな。
不老不死と言う、永遠の16歳を道を選んだのは自分なのに。
なのに何故か、こういう時期になるとその選択肢を後悔してしまう。だって置いていかれるんだもん。帰り際に偶に見かけたのだ。元同級生で現在社会人として紺のスーツを身に纏った元友人を。
そんな姿を幾度となく見てきた。彼らには今という時間が流れていて、止まった自分とは正反対に、歳が増える人達が少し羨ましく思ってきた。
だから、来年の話となった時少し寂しさを感じたのだ。
そしてつい、口が緩んで言ってしまった。
『置いていかないで』
無理な事だとは分かっていても何処か期待してる自分がいる事に呆れてしまう。
彼が何か言ったかを聞き返しに此方を振り向いて来たから、急いで傘で顔を隠す。今は見せられない。こんな顔を見せたら何かと焦って色々と聞いてくるだろうから。
それでも面白いものが見れるのはいいけど、これ以上僕に楽しさを感じさせてお別れする時に苦しむのはいやだ。あぁ、明日なんて来なければ良いのに。そしたらまだ一緒に居られるんだよ。
まぁでも僕のような不老不死の人間が増えても困るだけか。
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