「わーい! ナオトの腕枕だー!」
「わーい! ですー!」
二人はそう言いながら、彼の二《に》の腕に頭を置いた。
「おい、お前ら! どうして俺の体をそんなに見ようとするんだ!!」
彼がそう言うと、二人は彼の胸部《きょうぶ》にあるスイッチを押した。
「くっ……! や、やめろ! そんなところ触《さわ》るな」
「あっ、ごめんねー。手が滑《すべ》っちゃったー」
「すみません。ついうっかり……」
「そうか、そうか。なら、仕方ないな……って、そんなわけあるかー! わざとだろ! 絶対わざとやっただろ!!」
「えー、そうだったっけー?」
「全《まった》く記憶にないですー」
くっ! こ、こいつら……。思考が完全に悪魔だ。
いつからだ? いったい、いつから……こんな風になったんだ?
彼が困惑していると、二人は彼の首筋にキスをした。その後、彼の首筋を舌でゆっくり舐《な》めた。
「なっ……! お、おい、お前ら! さっきから何なんだよ! 俺を弄《もてあそ》ぶな!!」
彼がそう言うと、二人は彼の唇《くちびる》に人差し指を押し当てた。
「別に弄《もてあそ》んでなんかないよー。私たちはただ、ナオトに気持ちよくなってほしいだけだよ」
「ユヅキちゃんの言う通りです。私たちはただ、ナオトさんに気持ちよくなってほしいだけです」
「俺には、お前らが何を言っているのか分からない。どうして、こんなことするんだ?」
彼が涙目になっていくのを目《ま》の当たりにした二人は彼の頭を撫で始めた。
「ごめんね、ナオト。怖がらせちゃって……」
「ナオトさん、ごめんなさい。ナオトさんの反応が可愛くて、少し暴走してしまいました」
彼は泣くのをグッと堪《こら》えると、二人にこう言った。
「……そう、だったのか……。けど、俺には刺激が強すぎるから、もうやめてくれ」
「うん、いいよー」
「もちろん、いいですよ」
『た・だ・し……』
「……ん?」
『お代《だい》は、きっちり支払《しはら》ってもらいますからね?』
「お、お代? いったい、いくら出せばいいんだ?」
『それはもちろん……か・ら・だ……で支払ってもらいます』
「え?」
二人は彼の頬を伝《つた》う雫《しずく》に目を向けると、それを受け止めるように舌で舐《な》めとった。
「……なっ! 何やってんだよ! 二人とも! 涙を飲むってことは、俺の血を飲むのと同じことなんだぞ!!」
彼がそう言うと……二人は、ぼそっと呟《つぶや》いた。
「……フィアちゃんにしてたくせに……」
「……フィアさんにしてたくせに……」
「え? 今なんか言ったか?」
「ううん、何にも言ってないよー」
「いえ、別に何も言っていませんよ」
「そ、そうか……。あっ、そういえば、この面談の目的を果たしてなかったな……。なあ、お前ら、最近困ってることとかあるか?」
「ないよー」
「ないです」
「即答かよ……。あー、もうなんか慣れたな……。えっと、じゃあ、俺にしてほしいことはあるか?」
「ナオトの体を解剖したーい!」
「ナオトさんの体を敏感《びんかん》にして、私だけのものにしたいです!」
二人とも目を輝《かがや》かせながら、そう言った。しかし、彼は乗り気ではなかった。
「……ごめん、それはちょっとできない」
「えー、なんでー?」
「どうしてですか? 私たちの望みを叶《かな》えてくれるんじゃないんですか?」
「いや、その……物事には限度というものがあってだな」
「じゃあ、私のおでこにキスしてー!」
「あっ、私もそれでいいですー!」
「な、なんか急にレベルが下がったな……。けど、いいのか? さっきと全然違う内容だけど……」
「私はねー、ナオトの愛が欲しいのー。だから、それにしたんだよ」
「私もユヅキちゃんと同じ意見です。なので、早くナオトさんの愛をください」
「お、おう、分かった……」
彼はそう言うと、二人の額《ひたい》に優しくキスをした。
「わーい! やったー! ナオト、大好きー!」
「私もですー!」
二人はニコニコ笑いながら、彼に抱きつく。
「お、おい、お前ら、あんまりくっつくなよー」
彼は二人を離そうとしていたが、その時の彼は嬉しそうに笑っていた。