テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
満員の車内。吊革に掴まるこさめと、その隣に立つひまなつ。
対面に座る男の視線が、じろじろと二人の身体を舐め回していた。
胸元や太ももへといやらしく這う視線に、こさめは気まずそうに目を逸らし、ひまなつは眉をひそめる。
「ねぇねぇ、今から暇?ご飯でも一緒に行こうよ」
「俺ら、いいとこ知ってんだ」
下心丸出しの言葉が飛んでくる。
ひまなつは一瞥しただけで「……興味ねぇ」と冷たく言い捨て、こさめは小さく首を横に振るだけだった。
その素っ気ない態度に苛立ったのか、男は舌打ちし、それ以上話しかけてこなくなった。
──しかし。
ふいに車内が揺れた拍子に、こさめの背後に立っていた男の手が、そっと服の裾に滑り込む。
「っ……!」
ぞわっと鳥肌が立ち、振り返ろうとした時、さらに別の手が胸を掴んできた。
「っ……!やっ……」
押し殺した声が漏れる。柔らかな膨らみをぐいぐいと揉まれ、服越しに強引に形を変えられる。
さらにもう一つの手がスカートの裾をめくり、下着越しに秘部をなぞり始めた。
「や、やめて……っ」
必死に腰を引こうとするが、人の波に押し込まれて逃げられない。
下着の布越しに指が谷間を擦り、敏感な場所に触れられるたび、こさめは耐えきれず小さく声を震わせた。
「ん……っ……いや……っ」
電車の揺れに合わせて胸は揉まれ、下腹部はなぞられる。羞恥と恐怖で、全身が硬直する。涙がにじみ、隣のひまなつの手をとっさに握りしめた。
その時。
「……やめろ」
低い、氷のような声が耳元に響いた。
ひまなつがこさめの背後に伸びる男の手首を鋭く掴む。
男が「ぐっ……!」と呻き声を上げる。
「勝手に触ってんじゃねぇ……」
振り返ったひまなつの目は鋭く細められ、怒りに燃えていた。普段は気だるげで柔らかな声が、今は獣のように、冷たい声音で吐き捨てる。
「二度とすんな……潰すぞ」
周囲の男たちもその気迫に凍りつく。
こさめはひまなつの肩に顔を埋め、小さく震えながら涙があふれる。
「……こわかった……なつくん……」
ひまなつはその頭をそっと抱き寄せ、背中を撫でながら、怒りを押し殺すように「大丈夫だよ…」と優しく呟いた。
電車が停車し、ドアが開いた瞬間。
ひまなつは震えるこさめの手を取り、強く引き寄せた。痴漢たちは他の同乗者に取り押さえられ、駅員に引き渡されていく。ざわめく車内を背に、ひまなつはこさめを連れて足早にホームへ降り立った。
「……もう大丈夫。怖かったな」
人混みから少し離れた柱の陰。
こさめは我慢していた涙を堪えきれず、ひまなつの胸に飛び込んだ。小さな肩が震え、嗚咽がこぼれる。
「なっ……なつくん……っ、すごく……こわかったぁ……っ」
「……、分かってる。よく耐えたな」
ひまなつはその背中をゆっくり撫でる。
普段の飄々とした様子とは違い、今は驚くほど静かで落ち着いた声だった。涙で濡れたこさめの頬に触れ、親指でやさしく拭い取る。
「……絶対に、もう触らせねぇから」
こさめは胸に顔を押し付けたまま、小さく「……ありがとう」と震える声で呟いた。
その後。
タクシーに乗り込み、ひまなつはこさめを自宅へと連れて帰った。
玄関の扉を閉めると、こさめは緊張の糸が切れたようにその場に座り込む。目元は赤く腫れ、唇はかすかに噛み締めた跡が残っていた。
ひまなつはしゃがみ込み、こさめと目を合わせる。
「今日はもう何も考えんな。ゆっくり休め」
「……うん……でも……」
「“でも”じゃねぇ。こさめが泣いてるの、俺は放っとけねぇんだよ」
そう言うと、ひまなつはこさめを誘導し 、リビングのソファに座らせた。
毛布を肩に掛け、頭を撫でる。
「……眠れるまで、傍にいるから」
その言葉に、こさめはまた涙を溢れさせながら、ひまなつの手をぎゅっと握り返した。
コメント
6件
やばいかっこよすぎて、尊死するところだった( ´ཫ`)痴漢野郎は煮るなり焼いたりしときますね_( º﹃º`」∠ )_ズリズリ
…いるま先生です
暇ちゃんかッッッッこよ! すちいるなつの彼氏組行動がイケメンすぎる……(顔面も勿論イケメン)