フェラルーシアです。今私は惑星アードの軌道上にある宇宙ステーションでフィーレちゃんと一緒に過ごしています。取り敢えず最初のミッションであるフィーレちゃんの必要な雑貨の入手は問題なく終わりました。端末を使って吟味して購入するだけなので、そこまで手間は掛かりませんでした。
簡単に用件が終わってしまって手持ち無沙汰となりましたが。
「フェル姉ぇ、せっかくだから地球の事を教えてよ。資料はあるけど、体験談が聞いてみたい」
フィーレちゃんからの話題提供に救われました。私の方がお姉さんなのに……頑張らないと。
先ずは端末を使って画像や動画を見ながら、私がティナと一緒に過ごした地域の説明をすることにしました。フィーレちゃんはエンジニアさんなので風土や文化には興味がないかなと心配していましたが、意外と興味津々でした。
自然とソファーに座ってる私の隣に座って身体を預けてくるのが可愛らしいです。この時羽根の位置に注意しないとお互い大変なことになりますが、まあリーフ人同士ですからその辺りは問題ありませんでした。
「地球人って服がバラバラなんだねぇ」
「不思議ですよね」
リーフ人は基本的に統一された服を身に纏っています。私やフィーレちゃんも地球で言えば若草色の丈が長いワンピースタイプの服です。これはリーフ人女性の一般的な服で、男性の場合は若草色のシャツとベルト、長ズボンですね。
アード人も基本的には皆さん同じような、地球の絵画で見た天使?のような服を着ています。ちょっと露出が多くて大胆だと思いますけど。
なのに地球人は、制服もありましたが皆さんバラバラの服を着ているんです。見分けが付かないと思うのは、私たちがリーフ人だからかな。
「塗料や繊維がたくさん手に入る場所なんでしょうね」
「へぇ、結構豊かな場所なんだね」
私の経験からすれば、惑星アードに比べて天然の資源は地球の方が豊富だと思います。陸地の面積が二倍以上も違うので、それも当然なのかもしれませんが。
私達のように環境適応魔法が付与されていないみたいですし、気候や風土に合わせた服装をするのは当たり前の事なのかもしれません。それでも種類が豊富なのは理解できませんが。
「へぇー、未開の惑星だって聞いたけどそれなりの技術力はあるんだね。資源も豊かで人口も多いじゃん」
「地域によって文化や風土が違うのも面白いですよ?」
「ふーん、退屈はしなくて済みそう。地球の技術にも興味があるし」
「アードから比べたら随分と古い技術ですよ?」
「だから良いんだよ、フェル姉ぇ。技術発展の過程を見るのは新しい発見にもなるし」
「私には良く分かりませんが……」
「フェル姉ぇ達の役に立てるってことだよ」
フィーレちゃんは地球の技術と自然に興味津々ですね。私もそれは分かります。星が違えど、豊かな森の中に居ると心が安らぎます。
折角だから観賞用の植物をたくさん取り入れたアトリウムを新しい船に作るのも良さそうです。自然で安らぐのはアード人も変わりませんし、ティナに相談してみないと。
「でも、履き物の文化だけは意味不明で理解不能なんだけど」
「それも分かりますよ、フィーレちゃん」
「靴だっけ?足全体を覆うなんて正気の沙汰じゃないよ」
どうやらフィーレちゃんも変わらないみたいですね。私達リーフ人はとにかく足を圧迫されるのを嫌う傾向があります。私自身大嫌いですし。
「特にこの靴下?とか言うもの、拷問具?」
「寒さを和らげたり、足を保護するためのものみたいですよ?」
「いや無理、絶対に無理」
「ですよね」
ティナにお願いされても断固拒否する自信があります。
「取り敢えず地球の履き物文化だけは理解できないことが分かった。それでさ、フェル姉ぇ。話は変わるけど、新しい船なんだけどさ」
「デストロイヤー級でしたっけ。里長の私物ですよね」
「そう、それ。引っ越しと調整はするけど、この艦名とデザインは残したままの方が良くない?」
「銀河一美少女ティリスちゃん号をですか?」
里長の絵が船体全域に描かれていて、名前も呼ぶのは恥ずかしいのでティナが変更するように要望を出していましたね。私も賛成なのですが、担当者のフィーレちゃんは反対の様子。
「そう、理由はさっきフェル姉ぇに見せて貰った日本とか言う国の情報なんだけど。見てよ」
端末を操作して幾つかの画像を見せてくれましたが、そこには里長の船と同じように一面に絵が描かれている地球の乗り物、たしか自動車だったかな?それが写し出されていました。
「これは、里長と同じ?」
描かれているのは可愛らしい女の子ばかりで、持ち主さんの自画像なのかな?
「これだけじゃないよ、フェル姉ぇ。他にも色々と画像があるんだ」
フィーレちゃんが見せてくれた画像には、一台だけが写されたものからたくさんの絵が描かれている自動車が集まっているものまでありました。これは一体……。
「もしかしたら、日本には自動車に自画像を描く文化があるのかもしれませんね」
「あれかな?持ち主が誰か分かるようにしてるんじゃない?」
「それはとても合理的ですね。あっ、これは確か宗教的な施設だったような気がします」
背景に……確か鳥居だったかな?宗教施設のシンボルが写し出されている画像もありますし、もしかしたら神事に使われているのかもしれません。
「宗教?地球人が信じてる神様への捧げ物だったりするのかな?」
「それは分かりませんけど、神聖な儀式のために描かれている可能性もあります。例えば交通安全とか」
「それならなおさらこのままの方が良いんじゃない?地球人の文化に寄り添ってるって感じてくれるかも」
「交流にも弾みが付きますね。分かりました、ティナには私から言っておきますからフィーレちゃんはお引っ越しと調整をお願いします。私も出来ることは手伝いますから、遠慮無く言ってね」
「助かるよ、フェル姉ぇのマナ保有量は桁違いだから魔法のサポートを期待しとく」
「はい、任せてください」
地球の文化は不思議なことばかりですが、これで少しでもティナの役に立てるなら嬉しいです。
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