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例の気まずい飲み会が終わって1ヶ月。
いつものように仕事でミスを押し付けられて、上司に理不尽に怒られて、家に帰れば自棄酒をする、という生活をしていた。
そして、貴重な休日である今日をいつものように何もせずゴロゴロしていた。
ブーッブーッ
珍しく電話が掛かってきた。どうせ上司からの電話だろう、と思い気が乗らなかったが、相手を見てとても驚いた。
なんと、香織ちゃんだ。
彼女から電話なんて物凄く珍しい。何があったのだろうと急いで電話に出た。
「もしもし?香織ちゃん?」
「あ、隼人。休みの日にごめんね。話したいことがあって」
「話したいこと?」
まさか………香織ちゃんから告白っ……!?といつもならふざけられるが、今はそんな雰囲気ではない。
「うん、直接、できれば今すぐ話したいこと。お願い……駅前のカフェに来てくれない?」
彼女から電話が掛かってきて数十分。 約束したカフェで1ヶ月振りに香織ちゃんに会った。
「それで……話って?」
「その………」
言いにくそうにする彼女の様子を見て、オレは彼女が話したいことの内容がわかって立ち上がった。
「ごめん、その話をするつもりはない」
「隼人っ……待って!」
立ち去ろうとするオレの腕を香織ちゃんは思い切り引っ張った。
「ごめんっ………ごめんね、でもどうしても帰らないでほしい………」
「香織ちゃん?」
オレは彼女の名前を呼んだ。彼女は泣きそうだった。
「私に隼人の今の気持ちをぶつけて欲しい」
「え?」
予想外の言葉にとても驚いた。
「なんで………」
「急にごめん、私だって本当は気がついてたの。この前、隼人が私たちと距離を感じてるって。だから………」
なんで………?どうして……?なんでそんなことを聞くんだ?
お前にはオレの気持ちがわかるのか……?
脳内ではぐるぐると様々な言葉が巡り巡っている。
何か言わなきゃ、そう思った。
「香織ちゃんにはわかんないよ」
気がついたらオレは酷く冷たい言葉を言っていた。
「香織ちゃんにはオレの気持ちをわかってほしくない」
「っ………」
香織ちゃんは傷ついたような表情をして、オレの腕を掴んでいた手を離した。
「もう1回、仲良くできると思ってた………。ごめんね、隼人。私、隼人を傷つけてたね」
香織ちゃんはオレの目を見ずに立ち去った。
「何やってんだオレ………」
いつも一緒にふざけていた香織ちゃんに酷いことを言ってしまった後悔がどっと押し寄せてきた。
そんな後悔を抱いたままオレの家があるアパート帰ったら、オレの部屋の前で聡が待っていた。
「聡?急にどした?」
聡ともこの前の飲み会ぶりだ。
「久しぶりに会いたくなってさ」
「香織ちゃんになんか言われたの?」
「ちげぇわ、まぁまぁそんなことより早く部屋、入れてほしいんだけど。さすがにずっと立ってんのは疲れるわあ」
オレは「じゃあ来んなよ」と笑いながら自分よ家に入れた。 なんだか、高校時代に戻ったみたいだった。
「まじで来るなら来るって言えよ、部屋掃除出来てねぇから」
聡をその辺に座らせてテキトーなお茶を出してオレもドカッと座る。
「ごめんごめんって」
「てか、どしたの急にさ」
「んー?なんか、会いたくなってさ」
恋人みたいなことを言う聡にオレは吹き出した。変なことを言い出すのは昔から変わらない。
「なんか、あるよな。急に昔の友達に会いたくなるってやつ。」
「あーね、てか聡にもあるんだ。そんなこと」
「オレをなんだと思ってる。ちゃんと人間だわ!」
純粋にクスクスと笑いあっていると本当に懐かしく感じる。
社会の理不尽に押しつぶされ、他人との劣等感に負けた惨めな社会人から、少しだけキラキラした高校生に戻れた気がした。
だから、自然と口に出していたんだ。
「……寂しいな」
多分、オレは泣いていたと思う。その証拠に隣の聡はすっげぇびっくりしていた。
「ど、どうしたんだよ」
「………オレさ、さっき香織ちゃんに酷いこと言っちゃったんだよね。香織ちゃんに俺の気持ちはわからないって。」
聡は最初こそ驚いた表情をしていたが、うんうん、と頷きながら話を聞いてくれている。
「香織ちゃんはさ、オレの気持ちを親友として受け止めようとしてくれてんのに………オレは自分の気持ちすら正直に言えねぇんだよな」
「……じゃあ、今、オレに言ってみな?」
「え……?」
聡は見たことないほど優しく言った。
「オレら、親友だろ?なんでも受け止めるって。安心しろよ」
なんだか、その言葉に無性に涙が溢れた。
その勢いでオレは聡に、
自分がまだ葵ちゃんが好きであること、自分と他人を比べて劣等感を感じていること、そして孤独を感じていること
を打ち明けた。
きっと、オレは世界一ダサかった。
「オレ、今、辛いんだよなぁ」
えへへ、と笑いながら泣くオレはどうかしている。
それでも聡はオレを受け止めてくれた。
そして、言った。
「親友に謝ってこい」
優しい表情で言った聡の言葉にオレは素直に頷いた。親友に謝るんだ。
自分の過ちを許してもらうんだ。
「聡、ありがとな」
「まぁな、“親友”だし?」
あいつは笑った。昔から変わらない、キラキラした笑顔だった。