※注意※
この小説は、純度100%の私の妄想で出来たnmmnです。ご本人様には一切関係ありません。
ご本人様はもちろん、その周辺の方々やnmmnが苦手な方の目にも入らないよう、配慮をお願いします。
私の癖を詰め込んだので、誰かの地雷の上で踊り狂っているかもしれません。それぞれで自衛をするようにしてください。
読後の誹謗中傷等は受け付けておりません。チクチク言葉が届くと泣きます。
その他、微BL要素(🌵×🟦🧣)、プランツドールパロ要素あります。
鬼にわかなので、原作に忠実じゃないと許せない方は今すぐこの小説を閉じる事をオススメします。
ふらり、と、目眩が俺を襲った。
「ああ゙ー……きっつ」
ブルーライトにやられた目を固く閉じては開く。ぼやぼやした視界のまま、アスファルトとにらめっこしながら帰路についた。
今日も今日とて、半分死んでるんじゃないかと思うぐらいまで働き詰め。毎日、肉体的にも精神的にも限界なラインの、キワっキワのギリギリを攻めるのだ。チキンレースみたいだな、と考えると、乾いた笑いが口から漏れた。
金に困っているわけではない、ちゃんと貯金も蓄えている。なのに、どうしてこんな毎日を送り続けているのだろうか。
変化が怖いのか、もう今の生活でいいか、と諦めてしまっている自分がいるのか……ここからどうにも進めない出来ない気がして、もううんざりである。
何か、バチンと目が覚めるようなものは見つからないかな。
そんなの、都合よく落っこちてるモンではないだろう。そんなことは分かってるけど……この虚しさを埋めてくれるなにかが欲しい。
そんな事をぼやぼや考えていたからだろうか。思いっきり道を間違え、気づいたら全く知らない道に出ていた。
「あ゙ー……やっちまったな」
疲れてるし、さっさと帰って寝たいのだが……ぼんやりしてると本当にいいことがない。
スマホを取り出し、眩しい光に目を顰めながらも現在地を検索する。幸いなことに、さっきまで歩いていた道からはさほど逸れているわけでは無さそうで安心する。
地図を見ながら、とぼとぼ歩く。俺以外に道を歩く人はおらず、1人分の足音が静かな夜道に響いた。
「……ん?」
ふと、どこからか視線を感じ、足を止める。
きっと気のせいだろうとこのまま通り過ぎようとしたが、絶えず視線は俺に刺さり続けていた。蛇が獲物を捕らえる為に体を巻き付ける様のように、じっとり体に纏わりついた。
早く帰りたいのだが……誰に見られているのか分からないままでは不安で落ち着けない。正直少し怖いが、思い切って下がっていた目線を上げた。
その瞬間、瞼の閉じた瞳と目が合った。
「ッ!?あ、あぁ、人形か……」
肩が跳ねるほど驚愕して、つい声を上げそうになる。ただの人形だと分かった後には、こんな可愛いお人形に驚いた自分が情けなくて思わず笑ってしまった。
あまりに整った顔立ちに、ガラス窓に顔を近づけて見入る。綺麗な顔だが、なんで目を閉じているのだろう。普通、こういう観賞用のお人形は、くりくりの大きな目をしているもんじゃないか?
その疑問の答えは、店の看板にあった。
「……プランツ、ドール」
別名、観賞少女。
極上の美しさを誇る、名人と呼ばれる者が手間を尽くして作る人形だ。不思議なことに、波長の合う人と出会うと、目を覚まして人間の子供のように動き出すらしい。
恐ろしく高額で、維持費も目を見張るものと聞いている。そんなもの俺には見合わないし、もし俺の波長が誰かと合ってしまったら、きっとお迎えしてしまうことだろう。だから出来るだけ避けるようにしていたのだが……ここで出会ってしまうとは思わなかった。
すぐにそこを離れたいのに、一瞬感じた視線が頭から離れない。こっちへおいでと手招きするような、俺を呼んでいるような視線。
あれは、一体何だったのだろう。誰がこっちを見ていたんだろう。気になって気になってしょうがない。
好奇心と眠気を天秤に掛け、悩みに悩んだ末に、意を決して俺はドアノブに手を掛けた。
チリチリとベルが忙しなく鳴り、あたたかい光が扉から流れ出した。店内では、妙に胡散臭い見た目の店主が待っていた。
「いらっしゃい。お兄さんと人形に、素敵な出会いがありますように」
「は、はぁ」
老いた老人のようにも見えるし、まだまだ若い青年のようにも見える。なんとも不思議で、掴みどころのない男だった。
かけられた言葉はそれきりで、店主と思しき男は再び視線を落とした。自由に見て回れ、ということなのだろうか。多分そうなのだろう。
俺は、恐る恐る人形に近づいた。
人形達は全て、値段相応に美しい。アンティーク調の椅子に丁寧に座らされた人形達の前では、髪の毛一本を揺らすことも許されないような緊張感が湧く。どうにも恐ろしくて、少し離れてじっくり見て回った。
それにしても、多いな。そう思い、腰を上げて店内を見回す。
すると、角も角、ほとんど人の目がつかないであろうところに、質素な木製の椅子に座る人形を見つけた。周りの女の子達とは違い、髪が短く、相変わらずフリフリではあるが服装もボーイッシュっぽい。
少し気になって、近くに寄って顔を覗き込む。女の子でも男の子でも納得できる、中性的な顔立ちだ。
「あぁ、その子は辞めておきなさい」
「え?」
「波長の合う人間を待ちきれなくなって、一度目を覚ましてしまった子んです。今はメンテナンスをしながら眠らせています。せっかちな人形がタイミングを間違えて起きることはよく聞く話ですが……まぁ、その子は扱いにくい」
「そう、なんですか」
そんな話を聞いたからか、目の前の人形が妙に人間じみたものに見えてきた。
せっかちって……性格とか、人形にもあるもんなのか。ますます人間みたいだな。ほんと、今にも動き出しそうなぐらい……───
「───は、」
不意に、目の前で空気が揺らいだ。
人形が動いている。
寝起きの人間と同じようにぐしぐし目元を擦って、ヘッドドレスで飾った頭をふるふる振る。その度に、精巧な装飾が光を反射してキラキラ輝いた。
深い深い海のような、底知れない青がこちらを見つめている。かと思ったら、まだ光に慣れてないのか顔を顰めて固く目を瞑った。
驚きで固まる俺に向かって、人形はふわっと笑いかけた。めちゃくちゃ可愛いが、今はそれよりも恐怖の方が大きい。
人形は、椅子からぴょんっと飛び降りる。そのまま側まで来て、心配するような素振りを見せた。
コイツは生きているのか?それとも、人間の真似事をしているだけなのか? 疑問は止まることなく頭を埋め尽くす。何がなんだか分からなくて、もう何がなんだかな俺に店主が手を差し伸べた。
「大丈夫ですか?」
「え、あ、すいません」
「いえいえ。また眠らせておきますので、お気になさらず」
そう言って伸ばされた手から逃げるように、人形は俺の後ろに隠れてしまう。指に絡んだ小さな手の、その無機質な冷たさに、ゾワリと背筋が凍った。
人形が、腰元にぎゅっと抱きつく。スーツに顔を埋めて、絹糸のような綺麗な髪が崩れるのも気にせず、グリグリ頭を擦り付けた。
可愛い、猫みたい。
チラリと俺を伺う青い瞳も、真っ白な肌も、サラサラの髪の毛も、他の人形とは比べ物にならないほど美しい。なんでだろう……なぜかこの子だけが、特別に、一際美しく見えてくる。
つい見入ってしまったが、はっと我に返る。この子がいくらかは分からないけど、他の人形を見るにかなりの高額と見た。汚してしまったらどうなるか分からない。急に恐ろしくなって、こわごわ声をかけた。
「えっ……と、汚れちゃうから、離れたほうが───」
「……ぃやだ、絶対離れない」
小さな口から紡がれた声に、俺は再び動きを止めた。
「おいで、お兄さんが困っているだろう?」
「いーやーだー、もう逃がさんからね」
「えっ、え、っ?」
「あのさ、俺がどんだけお前のこと待ってたか分かる?もうずーー……っと寝てばっか、ほんと頭おかしくなりそう。もっと早く迎えに来てくれたらよかったのに」
さっきの一言を皮切りに、人形は流暢にべらべらと話し出した。とろけたアイスクリームのような間延びした声は、幼い外見とは裏腹にやけに大人びている。
その身振り素振りも、可愛い姿からは想像もつかないような、わんぱくそうで、お世辞にも高貴とは言えない粗雑な仕草に早変わりする。男子小学生……いや、もっと年を食った男性に近しいものを感じた。
こんなに可愛いのに、中身がこれじゃあもったいないな、とぼんやり思った。店主が言っていた『扱いにくい』とは、このことだったのだろうか。
そんな俺を放っておいて、店主は駄々をこねる人形の話を、呆れながら聞いていた。満足するまで話させて、改めて俺に向き合った。
「この子と貴方の波長が合ったんでしょう。いやはや、よかったよかった」
「よかったって……その、 俺、別に人形を買いに来たわけじゃなくて、」
「ええ、ええ、それはもちろん承知しております。ですが……」
店主は、人形を見て眉尻を下げた。
「これ以上、その子を店に置いておく余裕はありませんからねぇ」
「……え?メンテ辞めちゃうの?」
「そうなるね。君も長いことここにいるだろう?メンテナンスだってタダじゃないんだし、残念だけど諦めも肝心だよ」
それを聞いた途端に、人形の顔がどんどん青ざめていく。何かを考えるように目を伏せ、恐怖からか焦りからか震えた息を吐いた。
尋常じゃない取り乱し方に、俺も不安になってきて、店主に尋ねた。
「メンテナンスしなかったら、この子はどうなるんですか?」
「このままだと、『枯れる』……まぁ、人間でいう死ですかね。そもそもメンテナンス自体君に出会うまで無理矢理生かす方法に過ぎないから、そろそろ眠らせてやろうとは思っていたので」
心なしか、俺の指を握る手が力を増した。今にも泣きそうなぐらいくしゃくしゃに歪んだ目は、懇願するように俺を見上げている。
俺に買われるか、死ぬか。それ以外、この子に道はないようだ。
恐ろしい事実と急に襲いかかった究極の二択に、今すぐ逃げ出したくなった。人……では、ないのだろうが、これだけハキハキ喋るのだから、もはや生き物みたいなもんだろう。そんなヤツの命を無理矢理握らされたことが、今は恐ろしくてたまらない。
どうしよう。これからの維持費だとか、そもそもの初期費用だとか、考えただけで頭が痛くなってくる。そもそも、子供1人が生活ようなスペースなんて、俺の家にないし。
ぐるぐる考える俺に、店主はにっこり笑いかける。
「無理に買われなくてもいいんですよ。元より、その子はプランツドールにしては知能が高すぎる。まぁ、言葉を選ばず言えば『不良品』ですから」
「……不良品」
「はい。とても綺麗な出来なだけあって、もったいないですがね」
今までの、物腰柔らかな、生き物を相手にするような態度から急に一変。人形に向けられた店主の目は、淡々とした冷たいとのに変わった。
その恐ろしさに、人形がまた一歩身を引いた。俺も後ずさりそうになるが、後ろで怯える子供の姿に、ギリギリで踏み止まる。
「さて、どうしましょうか?」
口が渇く。迷いが捨てられない。
どうしよう、どうしよう。怖い、分からない、帰りたい、本当に助けて欲しい。そんな思いに頭を支配された俺を現実に引き戻したのは、人形の手の冷たさだった。
先程までの恐怖に怯えた表情から一転、全て諦めたような、もう好きにしてくれと言わんばかりの顔だ。おおよそ、こんな子供がしていい顔ではない。
それを見て、覚悟が決まった。俺は、店主に向けて口を開く。
カッスカスに裏返った情けない声で、俺は精一杯の返事をした。
「あの、───」
パチん。
と音がして、部屋に冷たい光が満ちた。春もまだ始まったばかりだからか、充満する空気は少し冷たい。
俺は、両手を塞ぐ荷物を、そっと床に下ろす。道に置くことも出来ず、ここまでずーっと運んできたのだ。特別重いわけでは無かったが、もうヘトヘトである。
不純物を一切含まない、透き通った青色が光を反射してキラキラ輝いた。
「つ、疲れた……」
「俺だって歩けるし、別に運んでくれなくてもよかったのに」
「安くしてもらったとは言え、普通に高かったし、貴重品なんだから汚したくないんだよ。ほら、早く靴脱いで」
「はぁい」
ローファーのような可愛い靴が、くたびれた俺の靴の隣に並ぶ。この靴で、あの店からここまで歩いてこれるとは思えない。歩かせていたとしても、結局は俺が運ぶ事になっていただろう。
それにしても……これだけわんぱくなのに、よくこんな動きにくそうな服を着てられたな。コイツは、無難な子供服の方が性に合うんじゃないか?
「……なに?」
「いやぁ?なんでもない」
人形は、不満げに眉をひそめる。コロコロ変わる表情は、百面相を見ているようで面白い。
本来、プランツドールはこんなに人間らしく無いらしい。俺は、店主と最後に交わした会話を思い出していた。
『本当は、笑うか泣くかぐらいしかしないんです。静かに、ただそこにいるだけでこちらを満足させてくれる存在。それが、観賞少女と呼ばれる所以です』
『観用少女?でも、この子は男の子ですのね』
『ええ、困ったことに。加え、目を覚ました途端に話しだしたものですから……不良品、と呼ぶ理由がわかりましたか?』
困ったようにそう言う店主の姿は、強く印象に残っている。
そりゃあ、不良品とも言いたくなるだろう。こんなの、そこら辺にいるような子供と同じようなものだ。見た目と中身のちぐはぐさには、違和感が拭いきれない。
まぁ、俺にとってはいい話し相手が出来て嬉しいのだが。話してみれば馬も合うし、これからの生活が楽しくなりそうだ。
せっかくだし何か会話をしてみよう。そう思い、名前を呼ぼうとして、何も聞かされていない事に気付いた。記憶を掘り返してみても、店主も人形のことは、この子、としか呼んでいなかった気がする。
「そういや、名前聞いてねぇな」
「名前は無いよ。好きに呼んで」
ぶっきらぼうに、人形はそう言った。
困ったな。この見た目に合うような名前を付けられる自信がない。
名前を記された物とかは付いてないのか?俺は、人形をまじまじと見つめた。
よく見たら、首におしゃれな紅茶のタグみたいな装飾を巻いている。なにか書いてあるのだろうか、掬い上げて確認する。
「……RADER………?うーん……ら、だぁ、か?らっだぁ?」
らっだぁ。
なんか、あだ名みたいだな。ニックネームみたいな、親しみを込めた呼び名のように聞こえる。こんなに綺麗なんだから、もっと西洋人形っぽい洋風な名前な気がする。
まぁ、別に嫌がってる様子は無いし。一旦適当でいいか。
「じゃあ、お前は今日かららっだぁね。俺はぐちつぼ、よろしくな」
「らっだぁ、かぁ……いいね、呼びやすそう。これからよろしくね、ぐちつぼ」
差し出した拳に、小さな手がコツンとぶつかる。人形、もといらっだぁは、綻ぶような笑みを浮かべいて、なんとも嬉しそうだ。
可愛いヤツ。口では色々言ってくるが、意外と大人しそうだし。独りぼっちだった生活にこんな素敵な人形がいると、このどうしようもない寂しさも紛れることだろう。
本当に、会えてよかった。
心の底から溢れてくる何とも言えない気持ちを、ゆっくりゆっくり噛み締めた。
『プランツドールパロを書いてほしいです』
遅れましたがリクエストありがとうございました!プランツドール大好きです!!!
6000文字強あるのに、5回しからっだぁという名前が出てきてません。いいんですかこんな少なくて、もっと早くに名前を付けてあげればよかったものを……違和感のない文を書ける文字書きの皆さんは本当に凄い!
さて、ついに4月が始まりましたね。新しい毎日がたくさん顔を出し、朝方にはブカブカの制服を着た子達の姿が見られるようになりました。
私もこれから忙しくなりそうですので、更新がゆっくりになると思います。 リクエストでもぶん投げながら、気長にお待ち下さい。
コメント
2件
長文失礼します。 gtさんが変化が怖い、急に命を握らされて怖いなどとずっと恐怖を感じていたのに、rdさんの全てを諦めた様な表情を見て覚悟を決めて、最終的には【本当に、会えてよかった。】って、 もう大好き、ダメだ好きすぎる、うわぁぁぁ、ってな感じで感情爆発しました。 リクエストに答えて頂いた事、素敵な作品を作ってくださった事、本当にありがとうございました!