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__x号室
紗雪:…こんにちは、辻村さん。
辻村:えぇ、久しぶりね。
病室に入ってきたのは”辻村深月”。
…母親の方だ。
私が元特務課長官だからなのか、親交は深い。
辻村:…大丈夫かしら?
紗雪:何がですか?
辻村:貴方が居ないと、あの人、大変じゃない?
紗雪:いえ、あの人、子供じゃありませんし。
私は苦笑しながら答えると、辻村さんはクスリと笑いながら、
辻村:違うわよ。周りの人の事。
紗雪:…あぁ。
つまり、私が休んでいる間も、綾辻先生に任務は来る。
先生が事件を解決すると、犯人が死ぬ。
私の、先生の能力より早く人を殺す任務が遂行できない。
いくら元特務課長官とはいえ、わざわざ待ってもらうこともできない。
要するに、通常より多くの犠牲者が出ると言うこと。
紗雪:それは…大変ですね。
辻村:…随分と他人事ね。
紗雪:まぁ…私にとって大事なのは、綾辻先生だけですから。
辻村:あらあら。
紗雪:それに、私は誰かを守る戦いしか、しません。例えそれが、名も顔も知らない特一級異能者でもね。
辻村:立派ね。前と大して変わっていないのね。安心したわ。
紗雪:そうですか。でも綾辻先生にも危害が及ぶならば、私は即刻現場に復帰しなくてはなりませんね。
辻村:…随分と心酔しているようだけど…..どちらかが欠けても倒れないで頂戴ね。
紗雪:心酔じゃありませんよ。
そう、私は綾辻先生を尊敬とも、依存とも、勿論、病気といっても足りない程大切に思っている。
でも、それが心酔とは思っていない。
綾辻先生は、綾辻先生とは、ずっと、それこそ心の支え。
お互いがお互いを支えている。
良い意味で言えば、支えあい。悪い意味なら共依存。
私たちはその綱を空を見上げながら渡っている。
一歩間違えたら共依存。
紗雪:…強いて言うなら、私の強みであり、弱点でもある、ですかね。
辻村:あら、じゃあ貴女を脅すときには綾辻君を人質にしようかしら?
紗雪:ふふふ。死にたいならお構いなくどうぞ。でも、先生もそこまで弱くありませんよ。
辻村:そうねぇ。
看護師:失礼します。辻村様、面会時刻を過ぎています。
辻村:あら、話し込んじゃったわね。
辻村さんはレフトハンドの腕時計を確認して、
辻村:それじゃあ、また今度。
と言って帰っていった。
帰り際、裏切っちゃ駄目よ、と小声で言って行った。
紗雪:裏切り……心には止めて置こうかしら。
でも今は、裏切る要素がない。
もし、万が一にでも私が裏切るのなら、先生によって殺されるだろう。
いや、殺されに行くだろう。
先生でも制御できない、絶対王者的異能に。