明日からは夏休みだ。あれ以来倒れたりする事もなく、平穏な日々が続き今日まで来た。
京介「今度の日曜の花火大会、一緒に行かないか?」
蓮「夏休み俺と遊ぼーよ」
山田「皆で海行こーぜ!!」
僕は、そんな彼らの誘いを全て断った。何故かと言うと、僕の今年の夏休みの予定は決まっているからだ。
遠くの田舎に住んでいる祖父母の家に行くのだ。
明日から行き、夏休み最後の週に帰って来る。
それに、約束したのだ。来年の夏休みも会いに行くって。
新幹線に乗り、電車に揺られ、タクシーに乗り、田んぼの間を通り抜け、住宅街に行く。そして、1件の和菓子屋の前に辿り着いた。
そこには既に祖父母の姿があった。どうやら店の前で待っていてくれたらしい。
「ゆき、よく来たなぁ」
「おじいちゃん、おばあちゃん!久しぶりっ」
僕は車をでると2人の前まできた。
「おぉ、元気だなぁ」
「お久しぶりです、お爺さん」
母さんが僕の隣に並び、そう言った。
「花ちゃんかぇ、久しぶりよのぉ」
「いつ見ても若いわねぇ」
「ありがとうございます、」
「まずは中に入りましょうか」
おばあちゃんが言った。
「ほれ、どら焼きじゃ」
「ありがとう!」
おじいちゃんがどら焼きをくれた。
「ようかんと団子とまんじゅうもあるぞ」
そう言ってそれらを僕の目の前に置いていく。
「わぁあ」
「たんと食うんだぞ」
「あらあらお爺さんったら」
おばあちゃんが笑う。するとお母さんとおじいちゃんも笑った。
その横で僕はどら焼きにかぶりついていた。
和菓子屋を営んでるからか、おじいちゃんがくれるお菓子は全部美味しい。
「ほら、お茶よ。ゆきくん美味しそうに食べわねぇ、嬉しいわ」
「食べ過ぎたら晩ご飯入らなくなるわよ」
「むぐ、、大丈夫」
確かにそうかもしれないが、あったら食べたくなるものだろう。
それに、晩ご飯までの時間はあと3時間はあるはずだ。
僕が祖父母に会ったのは去年の夏休みが初めてだった。お母さんは、家族が1人もいなかった。だけど、お父さんができると同時に祖父母や叔父叔母、従兄弟までできた。
「あ、ゆきくん。来たんだ」
後ろからそんな声が聞こえた。
「え、もしかして」
僕はそう言いながら立ち上がった。
「久しぶり」
「浩人?」
「うん。ゆきくん縮んだ?」
「は、、」
久しぶりに見る浩人は僕より身長が高くなっていた。前は僕より小さかったのに、だ。
「ごめん冗談。ゆきくんもまあまあ身長伸びたんじゃない?」
「ま、まあね、」
僕はショックを受けていた。浩人は前までは弟みたいで小さくて可愛いかったのに、今は、っ、。
「俺結構身長伸びたしびっくりするのはあたりまえか」
「、、身長何センチ?」
「175」
僕より5センチくらい高い。
「く、、」
「身長伸びるのは当たり前だよ。俺もう中3だし」
「そ、そうだね」
その中3に越された。しかもたった1年で。5センチも差をつけられて。
「ゆきくんはもう伸びなそうだけど。」
いやひどい。
「一応伸びてるし、」
「そういう事にしとく」
「……」
浩人は僕の顔をじっと見つめてきた。
「、なに?」
「ゆきくん彼女できなさそうだなーって」
「は」
浩人、性格変わり過ぎやしないか?
「女の子に告られた事ある?」
「あ、あるし」
「あるんだ、意外」
「……」
なんか、見下されてる気がする。
「別に悪く言ってる訳じゃないよ。彼氏ならすぐできると思うし」
僕は歩きながらため息をついた。彼女できなそうって普通にひどいし、彼氏ってなんだ。
浩人は人懐っこい性格をしていたはずだ。なのに今は跡形もない気がする。1年でこんなに性格が変わるものだろうか?弟だと思っていたが、なんか完全に下に見られている気がする。
僕は神社に向かい、長い階段を上がっていた。
久しぶりだからか結構キツい。
そして、やっとの思いで登りきった。
前方を見ると、着物を着た人の姿が目に映った。
「メグ!!」
僕はその人物に声をかけた。
声が届いたのか、その人物はバッと振り返る。そして僕を見ると、こちらに駆けてきた。
「俺に会いに来てくれたのか!!」
勢いよくメグはそう言った。
「う、うん。約束したし、」
嬉しそうに笑顔を見せたメグは、僕の両手を掴み、こう言った。
「ユキ、結婚しよう!!」
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