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momo
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っだぁ
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W国の朝は、今日も騒がしい。
「おい、ゾム。それ俺のや」
「は? 早いもん勝ちやろ」
「それ、俺が先に取っといた席なんやけど?」
「席に名前書いとけや、コネシマ」
「書いてもお前、上から座るやん」
食堂の一角で、朝っぱらから不毛な争いが繰り広げられていた。
ゾムとコネシマが睨み合い、その隣ではチーノが呆れた顔で味噌汁を啜っている。
「お前ら、朝から元気やなぁ……」
「チーノ、お前も他人事ちゃうぞ」
「えっ、なんで俺?」
「エーミールの隣、空いとるやん」
「……は?」
チーノが顔を上げた。
長机の端。いつもエーミールが座る席の隣が、ぽつんと空いている。
その事実を認識した瞬間、チーノは手に持っていた箸を置いた。
「……あー、なるほどな?」
「何がなるほどなん?」
「いやぁ? 別に?」
にやりと笑い、チーノは何食わぬ顔で空席へ移動しようとした。
しかし。
「そこ、俺が座る」
背後から伸びた手が、チーノの肩をがっしりと掴んだ。
「トントンさん!?」
「お前、さっきまで向こうで食べとったやろ」
「いや、こっちの方が景色ええかなって!」
「食堂の景色なんかどこも一緒や!」
「そんなことないですよ! ほら、こっちは窓が近い!」
「窓から見えるん、訓練場やぞ」
「最高やん」
「何が最高やねん!」
わあわあと騒ぐ四人を、少し離れた席から眺めていた鬱が、ふっと笑った。
「朝からようやるわ。あいつら」
「鬱先生、笑ってる場合ちゃうで」
隣に座っていたロボロが、パンを齧りながら言う。
「エーミール来たら、また始まるやろ」
「せやなぁ」
「……何が始まるんですか?」
穏やかな声が、騒がしい食堂に落ちた。
四人が、一斉に振り返る。
「エーミール!」
真っ先に声を上げたのはゾムだった。
「おはようございます。皆さん、朝から賑やかですね」
エーミールはいつものように微笑み、手に持ったトレーを少し持ち上げた。
「何かあったんですか?」
「いや、何もないで!」
チーノが即答する。
「せやせや。実に平和な朝や」
コネシマも真顔で頷いた。
「お前ら、嘘下手すぎひん?」
ロボロのツッコミに、食堂のあちこちから笑い声が上がる。
エーミールは首を傾げたあと、空いている席を見た。
「あ、ここが空いていますね。座ってもよろしいですか?」
「どうぞ!」
「もちろん!」
「ええで!」
「いや、俺の隣やろ?」
最後の一言に、全員の動きが止まった。
ゾムだった。
彼は当然のような顔で、自分の隣の席をぽんぽんと叩いている。
すると、ショッピがすかさず反対側の席を引いた。
「エーミールさん、こっち空いてますよ」
「いやいや、こっちの方がええやろ。窓際やし」
「窓際なら俺の隣もそうやけど?」
「チーノ、お前は黙っとけ」
「なんでやねん!」
また始まった。
トントンが額を押さえ、ロボロが呆れ、鬱は面白そうに眺めている。
その騒ぎを聞きつけたグルッペンまで、食堂の入口から顔を出した。
「朝食から随分と盛り上がっているではないか。何の話だ?」
「グルッペン! エーミールの隣、どこがええと思う?」
「は?」
総統は数秒、沈黙した。
そして、実に堂々とした足取りで歩み寄ると、エーミールのトレーをひょいと持ち上げた。
「エーミール、今日は私の隣だ」
「えっ?」
「総統命令である」
「それ、職権乱用やろ!!」
ゾムの叫びが食堂に響き渡った。
「総統命令をそんなことに使わんといてください!」
トントンが即座に抗議する。
「何を言う。総統と参謀の親睦を深めることは、国の運営において重要な事項である」
「絶対いま考えたやろ、それ!」
チーノが腹を抱えて笑い出した。
ショッピは小さくため息をつき、エーミールに向き直る。
「エミさん、総統命令なんか無視していいんですよ」
「いや、無視していいものではないで!?」
トントンが叫ぶ。
「……ふふっ」
そのとき、エーミールが笑った。
大きな声ではない。けれど、その場にいた全員が、ぴたりと口を閉じるくらいにはよく通る笑い声だった。
「皆さん、本当に仲がいいですね」
「「「「どこが!?」」」」
四人の声が重なる。
グルッペンだけが、満足そうに頷いた。
「うむ。実に仲がいい」
「グルさんは黙っといてください!」
トントンの悲鳴に、再び食堂が笑いに包まれた。
結局、エーミールは全員に囲まれる形で席についた。
右隣にグルッペン、左隣にゾム。
正面にはショッピとチーノが陣取り、少し離れた場所からトントンとロボロとが会話に加わる。鬱とコネシマはいつの間にかエーミールの近くに移動していた。
「……これ、いつもこんな感じなん?」
後から来たシャオロンが、光景を見て呟いた。
「いつもこんな感じや」
ロボロが答える。
「平和やなぁ」
「せやろ」
「いや、どこ見て言ってんねん!」
コネシマのツッコミに、また笑い声が弾けた。
そんな朝の騒ぎも、やがて終わりを迎える。
食事を終えた幹部たちは、それぞれの仕事へ向かうために席を立った。
「エーミール、今日の会議、一緒に行こな」
ゾムが声をかける。
「ええ、構いませんよ」
「俺も行きます」
ショッピが即座に続いた。
「俺も!」
「いや、俺もやろ!」
「全員で行ったら遅刻してくるやろ!」
トントンが頭を抱える。
グルッペンは腕を組み、堂々と言い放った。
「ならば会議の時間をずらそう!」
「アホか!!」
今日もW国は平和だった。
少なくとも、この幹部達が仲良くしている間は。
そして彼らは、まだ知らない。
互いに笑い合い、競い合い、時には譲り合いながら過ごすこの日常が、少しずつ、確かに形を変えていくことを。
誰かが一歩近づけば、誰かがそれを見つける。
誰かが名前を呼べば、誰かが振り返る。
その小さな積み重ねが、いつか彼ら自身にも無視できないものになっていくことを。
――けれど、今はまだ。
「エーミール! 昼飯も隣な!」
「ゾムさん、気が早すぎますよ」
「予約や予約!」
「食堂の席に予約制度はありません!」
エーミールの声と、幹部たちの笑い声が廊下に響いていた。
今日もまた、いつも通りの一日が始まる。
誰もが当たり前のように、彼の隣を望みながら。