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寮に着いた頃には、もう日が沈んでいた。街灯に照らされて歩くなんて、優くんと付き合ってた時ぶり。あの時は結構不良だったから、母からも心配されてたんだよな。懐かしい薄暗さに、つい昔を思い出してしまう。そしてまた思うのだ、思い出したらダメなのにって。
「こんばんは。」そう言って寮に入った。
「おかえり」ホストの寮だと昇が教えてくれたから、きっと誰もいないと思っていたけど、挨拶を返してくれたから内心びっくりだった。休みの人なんだって。
玄関からリビングに進んだ。外から見た時にも思ったけど、大きい建物だ。東京にこの大きさを建てれるなんて、ホスト業はよっぽど盛り上がっているのだろうか。
だけど、変だ。昔起業に成功してから、企業の手伝いの事業を進めた、起業のプロフェッショナルの父が経営に手を貸すなんて。こんなに成功してそうなホストなのにな。
「一応、紹介しとくからね。」私が考え事をしている間に昇がそういった。
「こっちの背が低いのが夢野苺。そっちのパーマの人が藍川奏。今はこの2人しかいないけど、後で帰ってくるんだ。まあ、美晴は関わらないかもだけど。」夢野苺って可愛い名前。本名なのかな。
「少しの間ですが住ませていただくので、よろしくお願いします。」私はそう言った。
「よろしくね。呼び捨てでいいからね。」藍川さんはそう言った。だけど呼び捨てなんて、なかなか馴染めないかもな。少し緊張してしまった。
「今日は部屋に行こっか。」昇がなぜか慌てた口調でそういった。だけど何だかすごく優しかった。
昇といると、優くんを思い出してしまう自分が少し怖い。だって私は、優くんがまだ好きなんだ。離れたことも後悔しているくらいに。
「はー、あいつ言い寄りそうだったんだけど。」ありえないわーって口調で、昇が話したから、きっっと奏くんと友達なんだろうなって思う。
「苺は大丈夫だよ。あいつは他人に興味ないし。」
「そうなんだ、喋りかけない方がいい?」私が聞く。
「跳ねのけられるの嫌だったらね。俺もあんまり喋んないしな。」昇は奏くんと仲良さそうだったけど、苺くんとはほとんど喋っていないかった。
「あと、ここでは源氏名で呼び合うんだ。苺も奏もだから、俺のことも昴って呼んでね。」私はうなずいた。
「私のも決めてほしい。さっき名前言ってないし。」
「女子のはつけたことないから、センスないけどな。じゃあ、こはる。漢字は小さいに悠久の悠で小悠ね。」なんか気に入った。
「ありがと」
大きいリビングもあるけど、私はそこには行かなかった。昴こと昇に止められたからだ。また言い寄られるーって焦っていた。昇が焦る必要なんてないのにな。だけどそういうところも優しくて、でも自分のため?でもある感じが無邪気で可愛い。
「部屋はあるんだけど、まだほこりかぶっててさ。明日また掃除するから、今日は俺がリビングで寝るからね。ベッド使ってね。」一瞬受け入れかけたけど、そんなに気を使わせたくない。」
「え、そんなの申し訳なくて寝れないよ。というか私がリビングでいいよ、客だし。」
「ダメに決まってるし。酔って帰ってくるんだよ、ホストの男が。嫌でしょ?」こんな感じで私たちは3分ほど論争をしていた。だけどなぜか一緒に寝ることになったんだ。私が提案してしまった、後先考えずに。でも大丈夫。昇は何もしない。多分、、、