テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
文化祭は大成功に終わった。 劇が終わった後の拍手は、僕の耳にいつまでも残っていた。カーテンコールで舞台に引っ張り出されたとき、真っ赤な顔で俯く僕を、クラスの連中が笑いながら小突いてくれた。あんなに怖かった彼らの手が、今はただ温かかった。
数日後。熱気が引いた放課後の教室で、僕は一人、机の片付けをしていた。
「秋山くん、お疲れさま」
後ろから声をかけてきたのは、桜井さんだった。彼女の手には、文化祭の打ち上げで撮ったらしい集合写真が握られている。
「これ、後で回すね。秋山くん、すごい顔で写ってるよ」
「……見せないでよ。恥ずかしいし」
僕が顔を背けると、彼女はコロコロと鈴が鳴るように笑った。
窓の外では、吹奏楽部の練習する音が聞こえる。
「ねえ、秋山くん。次はどんなお話を書くの?」
彼女は僕の隣の席に、当たり前のように腰を下ろした。
「……まだ決まってないよ。でも、今度はもっと明るい話にしようかな。例えば、図書室で偶然出会った二人の話とか」
「それ、面白そう! 私、ヒロインのモデルになってもいいよ?」
冗談めかして言う彼女の横顔を盗み見る。夕暮れの光が、彼女の髪を金色に透かしていた。
僕はまだ、クラス全員と仲良くなったわけじゃない。相変わらず一人が好きだし、大勢で騒ぐのは苦手だ。けれど、もう自分のことを「嫌われ者」とは呼ばない。
僕はカバンから新しいノートを取り出した。
最初のページに、ペンを走らせる。
『嫌われ者の僕』
その文字に、すっと横線を引いて消した。
その上に、新しく書き直す。
『物語を書き始めた僕と、君のこと』
「いいタイトルだね」
隣で彼女が小さく呟いた。
僕の世界は、もう狭い図書室の中だけじゃない。
ペン一本で、どこへだって行ける。誰とだって繋がれる。
僕はゆっくりとノートを閉じ、彼女に向かって微笑んだ。
「……うん。最高の物語にするよ」
コメント
5件
もしゃもしゃもしゃもしゃもしゃもしゃもしゃ (新しい物語でも始まりそうな終わり方だね(?))