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そして、そこに書かれている文字を指さしながら言った。
「これはね、『汝の隣人を愛せよ』って意味だよ」
この言葉を聞いた途端、人々は一斉に笑った。
だが、その笑い声は次第に小さくなり、最後には消えた。
なぜなら、誰もが知っているからだ。
この国の宗教において、「隣人」とは、すなわち異教徒のことだということを。
この国の宗教において、「隣人」とは、すなわち悪魔のことだということを。
そして、誰もがこう思っているはずだ。
つまり、「汝の隣人を愛せよ」という言葉は、単なるお題目に過ぎないのだろうと。
人々が笑う中、老人も笑っていた。
しかし、どこか寂しげにも見えた。
それは、この老いた男が、今の言葉に込められた本当の意味を理解してしまったからかもしれない。
あるいは、自分自身の心の中にある矛盾に気づいてしまったからかもしれない。
それでもなお、男は言う。
「これはね、僕の故郷の言葉で『愛する』という意味なんだ。僕たちは互いに手を取り合って生きていかなくちゃいけないんだよ」
すると、また人々が笑う。今度は先ほどよりも大きな声で。その笑い声はしばらく収まらなかった。
だが、それも長く続かなかった。
なぜかというと、男たちの表情が変わっていたからである。
今や、誰もが無言のまま、こちらの顔色を窺っていた。
誰も何も言わないが、明らかに空気が変わったのを感じた。
そこで、自分は慌てて笑顔を作った。
それから、できるだけ優しい口調でこう尋ねた。
「君たちは、何のために生きている?」
ふとした瞬間に思いついた言葉を、僕は口に出してしまった。
その言葉を聞いて、目の前にいる男は少しだけ考え込んだ後、私に向かってこう告げる。
「生きる理由なんて、別にないよ。
ただ、なんとなく生きてるだけだ。……まあ、あえて言うなら、楽しい人生を送りたいからかな」
その返答を聞きながら、僕は思わず苦笑する。
おそらく、この男の本音はこれなのだろうと悟ってしまったのだ。
生きることに疲れてしまい、ただ息をしているだけの日々を送っているに違いない。僕が何も言わずに黙っていると、彼は続けてこう語った。
『神の教えを守る者こそが正義であり、守らない者は悪だ。だからこそ、我々は常に正しい道を歩む必要がある』……なあ、君たちは、今まで一度でも自らの過ちを認めたことがあったか?」
そう言って、彼は微笑みを浮かべた。
すると、突然どこからか銃声が響き渡り、目の前にいたはずの男が血を流して倒れた。
「貴様ぁっ!」
続いて聞こえたのは、男の叫び声だった。
そして、僕は見た。男を殺した犯人の姿を……。