気付けば季節は桜の咲く頃なった
吉原では、知らぬ地から持ってこられた桜が置かれる
ふわりと風に吹かれてはらりと散ってしまうそれを見てはなんとも思えない気持ちに私はなった
外を呆然と眺めているとすーと襖が開きセラフが入ってきた
「聖来さん…、頼まれてた掃除、終わりました」
ふっと振り返り彼の顔を見る、あいも変わらず
仏頂面だ、
「……あぁ………ありがとう」
「………、桜…見てたんですか、?」
「ええ」
「せっかくですし、外に見に行っては……」
「そうね…でも私はここで良いわ、ここからでも十分桜は見えるし」
「あと…セラフ二人の時ぐらい敬語はやめて頂戴気が休まらないの…」
「あ…はい」
「じゃあ俺と一緒に桜見に行きませんか…」
「え?」
「実は桜主様から少しばかり使いを頼まれて…でも俺は…ここでの土地勘がなく…案内してくれれば、」
段々と顔が下がり声が小さくなっていった
「まぁ、…しょうがないわね…いいわよ、」
「それならすぐに支度を」
私は箪笥からいつかの日に客にもらった着物と帯を一枚出した
私の持っているものの中で柄が派手ではないものはこのぐらいだろう
着物は藍染か何かで染まっていてきれいな藍色だ
白い糸と金色の糸で桜の模様が書いてあり今の季節にはちょうど良さそうだった
私はすぐにそれを着て楼主に外出の許可をおろしてもらうとセラフとすぐに店出た
案外許可がすんなり降りたものだ。
逃げ出すかも知れないのに…いや…セラフと一緒だからそんなことはないとでも彼はいいたいのだろうか
店を出るとすぐに太陽の光が私達を照らした
いつぶりだろうこうして窓からではなく外に出て陽の光を浴びるのは
街の外は窓の外とは違い行ってみないとわからないような賑やかさだ
陽の光が眩しい
セラフは私がはぐれてしまわないようにとしっかりと手を握った。
「聖来さん俺はここで少し買い物をしていますから、余り遠くにいかないでくださいね」
かんざしを見てるのだろうか、
「えぇわかってるわ」
私は特にすることはなく右に左へと流れている沢山の人たちを眺めていた
微かだが…誰かの声がした
揉めているようなそんな声
これは………悲鳴だ…
「聖来さん買い物が出来ましたので次の店に…、」
「聖来さん?」
あたりを見渡すが彼の姿などどこにもない
暗い裏路地こんなとこに迷い込んで閉まったのが積の山なんだろうか
護身術は出来たとしても男二人には単純な力では叶わない
「やめてッ!離して!!」
「カナは嫌だって言ってるでしょ!!?」
「うるせぇこの尼!さっさとついてこい!!!」
「嫌だってば!!」
「この!!!!」
ブワッと風を切り私の手を掴んでた男の左手が上げられた
あッ……、打たれる
ギュッと目を強く結んだがいつまで立ってもその衝撃は来ない
代わりにカンッと言う鈍くもなにかにものが当たったような音が鳴り響いた
恐る恐る目を開ける
下駄だ、女物できれいな黒に金で少し模様が書いてある
「やめなさい!!!」
「その子が嫌がっているでしょうッ!!!!!」
声の先にあったのは声こそ聞いてしまえば男だがそこには見とれてしまうほど綺麗な女の人がいた
「何だと!!!貴様ッ…!!」
「ッ……、!」
一人の男が女の人に襲いかかる
危ない
そう思った瞬間女の人は男の腕を掴み
あっさりとその男は空中にふわりと浮き地面に思いっきり投げ出されてしまった
駄目だ後ろにもう一人避けれない
そう思うとどこからともなく一人の少年が出てきてそいつに蹴りを食らわすではないか。
少年の顔立ちも美しかったそれよりかは今は勇ましいのほうが買ってしまうのかも知れない
「セラフ!」
「ちょっと…、聖来さん……ッ無理はしないでよ…」
息を切らしながら少年は言う
荒い息から察するにここまで走っていたのだろうか
女性は転がっていた下駄を再び履き少年に謝る
「ごめんなさい…気づいたら先に体が動いていて…」
「あっ…それより貴方大丈夫?」
「え、はい私はだいじょうぶで…す」
「そう…?なら良かったわ」
にこやかに女性は微笑んだ
多分…同性?の私ですらドキッとしてしまう
なにはともあれこの人が無事なら良かった
「カナさ〜〜ん」
声のする方を向くとそこには私を追いかけてきたのだろう
「あ〜!雲雀君ではないか!どうしたのー?」
「いやいや…どうしたもこうしたも…無いですよ……急にどっか行っちゃうから」
「奏斗も俺も探してて」
「あれ?なんか人が転がってる?」
「あぁこれはねカナを襲った人たち!」
「はぁ!?えっ???」
「でも大丈夫!その人たちが助けてくれたから」
「女の子一人ではこの街を歩くのは危ないから一緒についていて上げてくださいね…」
「は…はい」
「では…私はこれで」
そう言うときれいな女の人は行ってしまった
「カナ!良かったやっといた!」
「奏斗じゃんか!どした!」
「チッお前えすぐにどっか行くからさ……」
「あー舌打ちした〜カナお団子食べたーい」
「あっちょいッ」
「奏斗!それより早くカナさん追いかけないとまたい失くなる!!」
「早く追いかけよ!」
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