時間は容赦なく過ぎる。
オフかリハかの数日間でよかった。
じゃなきゃ、りょうちゃんの事を隠し通すのは難しかっただろう。
オフの日は二人で。
リハの日も、二人で。
毎日りょうちゃんの所へは通った。
いや、通ったからって、どうにかなるもんでもないんだけども。
お互い無言のまま、ギターの練習したり、作詞したり。
ハティとスコルが突然現れて、多分フェンリルがいるあたりで、寝てたり。
そんな感じで過ごしてた三日目の事だった。
その日は、オレもギターを持ち込んでた。
近所迷惑にならない程度に、若井と二人、ギターの練習をする。
二人してあれやこれややってた時だった。
ハティとスコルが、また突然現れた。
『起きるって。』
『起きるって、言ってる。』
二匹が飛んで行った先の空間は揺れてる。
フェンリルが、先に起きる?
若井と二人、顔を見合わせてから、揺らぐ空間を見つめる。
『パパ、おはよう?』
『起きた?』
『あぁ、起きた。お前らがいると言う事は、二人もいるな。』
フェンリルが起きて、二匹を鼻で突き回してる。
嬉しそうな二匹を見てると、こっちも幸せな気分になる。
『お前ら、覚悟はいいか?』
二匹を愛で終わったのか、フェンリルは顔を上げた。
「覚悟…って何を?」
『選択の、時だ。』
その声は、彼が神話の生き物だと、思い出させる響きを持ってた。
背筋が伸びる。
フェンリルの背後で寝てたりょうちゃんが、ころんと横になってその背中を撫でた。
「…おはよぉ、フェル…。」
名前を呼びたい。抱きしめたい。
でも、目の前の存在の鋭い視線が、それをさせない。
一頻り背中を撫でた後、りょうちゃんは起き上がった。
その瞬間、オレと視線がぶつかる。
「えっ…?」
彷徨った視線は、若井ともぶつかったみたいだった。
「えっ…えっとぉ、おはよう、ございます?」
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