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12 - 臆病者たちの恋〈中〉 🐉×🔝

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2025年10月03日

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!アテンション! 


攻🐉×受🔝の捏造まみれのジヨタプ小説。

『臆病者たちの恋〈上〉』の続き。

ご本人様たちとは全くの無関係。

ご都合主義の矛盾まみれ解釈違いもろもろですがたくさんの愛はある、たぶん。

覚悟の上読んでくださる方はそのままお進みください…!













飛び出すように彼の家を出た。逃げるように歩みを早める度に、身体中が痛くて思わず顔が歪む。


『……ねぇ』


初めて、彼に乱暴に抱かれた。俺たちは恋人同士じゃない。でもいつだって彼は俺をまるで恋人のように優しく抱いた。こんなにぞんざいに扱われたことは一度もなかった、今夜までは。


『もう………こういうの、やめにしない?』


無理やり開かれたそこも、足も腰も背中も、心も全部痛い。人通りのない路地裏に入って、思わずしゃがみこんだ。いつの間にか上がっていた息を落ち着かせようと深呼吸をしても、そのスピードは緩まってくれない。溢れた涙がそうさせていた。


『………苦しい』


彼の声が耳からこびり付いて離れない。


「…ぐっ…ぅう……じよ、」


顔を埋めた膝が、自分の涙で濡れた。









マネージャーから週刊誌のゲラを見せられたとき、ジヨンはあからさまにイラついていた。俺だけじゃない、ヨンベもテソンもスンリも、みんなそれに気付いていた。嘘まみれのゴシップ記事なんて今まで散々読んだことがある。傷ついたことがないと言えば嘘になるが、それでもこんな嘘まみれの記事なんてアホらしい、と切り捨てて無視してきた。一々腹をたてるだけ無駄だと分かっていたから。

だから彼が声を荒らげるように反論したときは心底驚いた。そして彼はこう言い放った。


「なに?俺は誰も好きになっちゃいけないってこと?」


シン、とその場が静まる。俺は一瞬息が詰まった。好きになっちゃいけないって、それって。


(ジヨンは誰か好きな人がいるの、か?)


だから、その人の代わりに俺を抱いてるの?言えない気持ちを、叶わない願いを、埋まらない寂しさを、全部俺で誤魔化してるの?

俺はお前が、


「頭冷やしてくる」


好きなのに。

だから全部、許したのに。




「……ジヨンヒョン、大丈夫…ですかね?」

「珍しく荒れてたな」

「何かあったんですかね」


3人は心配そうに、彼の出ていった方を見ていた。俺は小さく息をついてから、カバンのタバコを取って立ち上がる。


「……様子、見てくる」


年上として、といった風を装ったし、3人もきっとそう思っていたに違いない。本当は心配だから追いかけたなんて、誰も知らないんだろうな。



喫煙所から派手な音が聞こえた。そっと扉を開けてると、少し位置のズレた灰皿と地面に転がるライター、そして項垂れる彼がそこにはあった。顔は見えないけど、小さく震えている。俺がライターを拾い上げると、彼はゆっくりと顔を上げた。


(………なにが、)


一体なにが、お前をそんなに苦しめてるの?


「……タプヒョン、」

「物に当たるな」


俺じゃ、お前をその苦しみから解放させてあげられないの?


「……ありがと」


タバコの先をそこに当てて、ジヨンが思い切り息を吸う。それを横目に見ながら、俺も取り出したタバコに火をつけた。


「………タプヒョン」


いくら吸っても、吐き出しても、全く心は晴れない。むしろ重たくなっていく。どんどん、冷えていく。


「……………今日の夜、俺ん家来て」


今までそんな風に、誘ったことないくせに。なんだかこれが、俺たちの最後みたいだな。










最初ジヨンと関係を持ったのは、偶然といえば偶然だった。酒も飲んでいたしその勢いもあったはずだった。持て余した熱を発散したかっただけかもしれないし、どこか感じる寂しさを埋めたかっただけかもしれない。その先に彼がいた、それだけかもしれない。


でも、俺は心のどこかで彼に惹かれていたのは確かで。初めて彼に抱かれながら、ああ俺はジヨンが好きなんだなと自覚したことは覚えている。それを思うと、こうなったのも偶然ではなく必然だったのかもしれない。


でもどうしても、気持ちを言えなかった。伝えたあと、俺たちの関係がどう変わってしまうのかを考えると怖かった。それならば、身体の関係だけでも彼と繋がっていればいい。そう思うようになった。


「順番……、間違えたな」


臆病な俺の、惨めな後悔だ。










「……ヒョン」


楽屋で椅子に座っていた際、後ろから小さく声をかけられた。振り返ると、テソンがその眉を下げながらこちらを見ていた。


「なに?」

「あの…大丈夫ですか?」

「……なにが?」

「最近、元気ないですよね……すごい痩せた気もしますし」


そう言われて鏡を見る。普段から俺は体重が落ちると顔に出やすかった。特に頬の肉が落ちる。鏡に写ったその顔は、たしかに頬が少しこけていた。顔色もよくない。ステージに立つ者として、見られる仕事をする立場として、これは非常によくない。


「あー…たしかに、ちょっと痩せたかもな」

「ちゃんとご飯食べてますか?」

「んー………うん」


嘘。最近は食事がうまく喉を通らない。こんなことで、と情けなくなるときもある。迷惑はかけまいと笑いながら頷いたが、テソンはそれが嘘だとわかったのだろう。隣の椅子に腰かけながら俺を見る顔は、相変わらず心配そうだった。


「体調崩してます?風邪でもひきました?」

「いや、大丈夫だ」

「ならいいですけど……なにか悩みがあるなら聞きますよ?俺でよければ」


俺の方が年上なのに、まるで彼の方がお兄ちゃんみたいだ。優しさが痛む心に染みて思わず泣きそうになる。


(………でも、)


テソンのことは好きだ。弟としても人としても。でもやはり、彼と関係を持ちたいとは一切思わない。テソンもヨンベもスンリも好きなのに、彼らの誰かで寂しさを埋めたいとも、想いが叶わないならせめて身体だけの関係になりたいとも思わなかった。俺がそう願ったのは、ただ一人、唯一彼だけ。


「……大丈夫だ。ありがとうな」

「…そうですか」

「…………ただ。たださ、」


やっぱり俺にはお前しかいなかった。


「俺は俺が……自分が思ってる以上に、臆病者だったって気付いて……後悔、してるだけ」


お前だけだったんだよ、ジヨン。

たとえ俺が、お前にとって誰かの代わりだったとしても。










帰宅してそのまま、ベッドに転がる。冷たいシーツをゆっくり撫でた。

ここで彼に抱かれたのは何回だろう。2人の熱が混ざったような温もりも、今はなにもない。なにもかも置き去りにして、寂しさだけが残っている。


『……………今日の夜、俺ん家来て』


あの日あの喫煙所でそう言われた時に、なぜかこれが俺たちの最後になるとわかった。

だんだんとジヨンが、俺を抱く度に苦しそうな顔をしていることには気付いていた。どうしてか分からないけど、触れたらいけない気がして気付かないフリをしていた、ずっと。


「……ジヨン、」


心臓がギュッとしまって、鼻の奥が痛くなって、あっという間に涙が溢れた。そういえば乱暴に抱かれたあの日、彼も泣いていた。俺の名前を呼びながら、泣いていた。

痛くて怖かった。そのまま嫌いになれたらよかったのに、この気持ちはなくなってなんかくれなくて、今でもお前を想ってる。


『………苦しい』


なんでお前は俺を抱いたの?

なんで俺だったの?

なんで、なんでなんでなんで。


「ぅ…っ、」


俺は、お前が好きだからだよ。

そんなこと、怖くて言えなかったけど。


「ふ、ぅ……うう…っ!」


ジヨンだから受け入れたんだよ。俺が誰かの代わりだったとしてもそれでよかったのに。お前はそれじゃダメだったの?


「…ジヨン…置いてかないで……たすけて…、苦しい、」


いつから、どこで、俺は間違えたんだろう。最初にお前に抱かれたときに、好きだって伝えてたら、こんなことにはならなかったのか。どこで道を間違えたんだ。どこでボタンをかけ違えたんだ。


「好きだ…っ、」


臆病者の俺が全部壊した。


「……好きになって、ごめん」


叶うことならもう一度あの日、初めてお前を抱かれた日の、幸せなときに戻りたい。

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