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#異能力
ここと🌹🫶 @低浮
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#異能力バトル
名無の男2
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背後から、男二人の痛烈な叫び声が上がった。
「……嗚呼、驚かせちまったね、すまなかった。 でも、そんなに叫ばなくたっていいじゃあないか」
「野崎っ……、どうして此処に……!」
「今日は『いつもの場所』に行く日だったろう? 君を待っていたというのに、どこで油を売っているのかと思えば……、煌。 君は本当に、厄介事を引き寄せる天才だな。 いいや、天災ってのが正しいか」
野崎の両手にはシャープペンシルが握られていた。
後ろを取られていた不良二人が、肩を押さえてその場に倒れ込む。
「たまに手の甲や指の腹にシャープペンシルの芯が刺さった奴がいるけどね、人によっては、芯が肉に埋まったまま大人になるまで放置する奴もいるそうだ。 特段、その状態じゃ健康に問題はないそうだが、刺さったら早いうちに抜かないと芯は体内に残ってしまう。 色素が広がり、黒子のような点となって拡大することがあるらしい。 さて、ここからが怖い話。 黒子になればまだマシさ。もし深く刺さったら、肉にめり込むだけに収まらず、血管に到達する場合もある。 シャープペンシルの芯は細いからね、血管を伝って欠片が流れていくだろう。 ここらでひとつ、義務教育の敗者たる君らに問題を出そう。 血管を通った血液が辿り着くのはどこか、分かるかい? ……そう、心臓。 筋肉を動かし、血液ポンプとして全身の核を担う心臓だ! そんな人体の重要区画の内側に、本来流れてくるはずのない異物が……、鋭角なシャープペンシルの芯が流れ込んだらどうなると思う? 柔らかい貯水タンクの内側から、鋭い槍で突いて穴が開くのを想像してもらえば、人体に起きる影響くらいは君たちみたいなのでも分かるかもしれないね? しかもその槍が複数本となったら、一体どうなるのだろう……? さて、そんな危険なシャープペンシル芯を、君たちの背中に五、六度ほど|刺した。 互いを傷つけあってしまったハリネズミみたいに、いいや、毛繕いをし合う猿みたいに、今すぐ背中を向けあって芯を抜き取れば助かるかもねえ? こういうのはね、早期の対応ってのが一番大切なのさ。 君たちだって、最悪の結果になりたくはないだろう? 嗚呼、そう言えばこんな話もあったな。 鉛筆の芯なんかは鉛で構築てるから鉛中毒に――――、」
まだ話の途中だったが、転がっていた二人組は小さな捨て台詞をいくつか吐いて逃げ出していってしまった。
にしても……、なんとも野崎らしい脅し文句だ。
包帯頭の怪人に突然刺された挙句、あんな長台詞を宣われては、初見じゃ恐怖するに決まっている。
必要以上に相手をビビらせる。
想像以上に対象を不快にさせる。
本当に、野崎の悪い癖だ。
しかし、今回はその悪い癖に助けられた。
不気味なハロウィン野郎は、不良より強し。
……にしても、何だか今日のはいつにも増して舌が回っている。
何か、不機嫌なことでもあったのか……?
「おいお前ぇ、何モンだよ包帯」
「何者だ、とは。 まるで戯曲の悪役らしいことを言うね。 君も不良生徒の端くれなら、私のことを覚えておくべきだと思うけどね? ほら、ヤクザ者が警察関係者の重鎮の顔を記憶しておくのと同じように、ね」
「アァ!? 何言ってやがる!」
「私はこの学校における警察サイドだってことだよ、不良の君」
野崎はシャツの胸ポケットに入れていた学生証を突き出した。
「風紀委員会 二年 執行役。 上村松園だ。 これ以上の争いは上への報告対象になるけど、いいかい?」
「風紀委員……、ってことは”お人形の一条”の……!」
ザキが言う一条というのが誰なのか、転入してきたばかりのオレは知らない。きっと野崎もそうだ。
しかし、その口調は紛れもない弱点の露出であったというのは明確に把握できた。
当然、そんなのを利用せず放っておくはずもなく、包帯の上からでも分かるくらいにニヤリと笑った。
野崎という奴は、本当に嫌な女だ。
弱点特攻のような、およそ相手の嫌がることをさせれば天下一級に違いない。
「ご名答。 君の想像通り、”あの一条”だ」
「チッ……! タイミングわりぃんだよくそが。 おいキラキラネーム、お前覚えとけよぉ……! ぜってぇに許さねぇからなぁ!!」
「……素晴らしいな。 あそこまで自然かつ本気で、古典的な捨て台詞が吐けるとは」
小走りは敗走っぽくって流石にダサいと思ったのか、先に消えた二人組を歩いて追い、校舎裏から姿を消した。
「全く、低脳ってのは困るよな。 少し勉強していれば、私が日本画家の名を借りて適当に名乗ったことにすぐ気が付いただろうに。 というか……、極細の血管にシャープペンシルの芯が流れていくわけがないだろう。 芯は児童も使うような筆記用具なのだから毒性物質を使っているわけもないし。 少しの痛みと恐怖を突くだけで白旗とは、下らない奴らさ」
「助かったよ……、野崎。 お前、風紀委員なんて入ってたんだな」
「おいおい、君まで騙されるなよな。 私がそんな面倒なことを望んですると思うかよ?」
「……あれハッタリだったのかよ! じゃああの、アイツに見してた生徒手帳は!?」
「特に何の変哲もない一般支給の生徒手帳さ。 ああして自信満々に見せつければ、風紀委員所属を意味する証拠品か何かだと勘違いするだろう?」
「マジかよ…………」
野崎はため息をついて、
「分かったかい煌、ハッタリってのはこうやって並べるものだよ。 そうでなければ、意味がない。 効果がない。 前のボールペンの件で、中途半端な君のそれに仕方なく騙されてやったのが、私の優しみ溢れた温情であったと改めて知るといい。 女誑しめ」
そう語る野崎を横目に……、壁に背をつけて座り込む鮫島の姿があった。
「なあアンタ、大丈夫か?」
「…………うっ、うっ」
「どうしたんだ? もしかして鮫島さん、どっか怪我を――――、」
「泣゛い゛て゛な゛い゛っ゛!!」
「お、おう……!」
いや、誰も泣いてるかどうかなんて気になってなかったんだが……?
しかも滅茶苦茶に泣いてるし。
「……巻き込んで、ごめんなさい。 私、アイツにずっと付きまとわれてて……、彼氏いるって嘘ついて離そうとしたのに、アイツ証拠見せろって……、それで…………」
「そっか、やっぱそういう感じだったのか」
「怒らないの……? 巻き込まれたのに?」
「ああ。 鮫島さんとあのピアス、もしかして仲良しなのかもって最初は誤解してたんだ。 もしそうなら……、無用なお節介しちまってるだろうなあって不安でさ」
「…………そんな。 あの状況で、そんなことを考えてたっていうの……?」
あの状況、っていうと、気になることがひとつある。
「なあ……、どうしてオレだったんだ? 校門前で声掛ける相手探してたんだったら……、御山とか流星みたいなイケメンとか、野球部かどっかから喧嘩強そうな奴連れてきたりとかした方が、こんな状況に連れてくる彼氏役としては適役だったんじゃねえの?」
「……だって、そんなの、ダサすぎるじゃない」
「ダサい? どこが……?」
「……こんなトコ見られた方がダサいか。 はぁ、おっけー。 ちゃんと話すわ」
鮫島は涙目を拭い、鼻をすすって立ち上がった。
「私さ、めっちゃ弱いのよ。 泣き虫だし、頭も悪いし、力もない。 でも強くなりたくてさ、中学の頃から……、ずっと強がってきた。 不良みたいな真似事して……、虚勢張ってた。 だから今更、皆に弱いのバレるわけにはいかないのよ」
「……そうか、何となく言いたいことは分かったよ。 鮫島京子は強いってイメージを崩したくなくて、まだ印象の固まってない転校生なら利用できると思った。 だから、オレを使ったってことか?」
「その通り。 ……謝る、巻き込んでごめんなさい」
あのクラス1のテンプレ不良、鮫島京子が。
恥を振り切って、目の前でしっかりと頭を下げている。
「助けてくれて助かったわ。 説明をしてなかったのに、その……、彼氏って名乗って、話を合わせてくれて……、ありがと。 あれだけメンツ潰されたら、ザキも少しは懲りたはずよね。 でも、代わりにそっちが目をつけられたかも」
「そりゃあまあ……、どうにかなんだろ。 鮫島さんも、また何かあったらいつでも頼ってくれよ。 本当に強い奴ってのは一人でいる奴じゃなくて、躊躇いなく頼ったりできる仲間がいる奴のことだって、オレは思う」
「……変わってるね、転校生」
「あー、あと。 転校生っていうとさ、この包帯オバケも転入してきたばっかでどっちのこと言ってっか分かんねえからさ。 名前で呼んでくれねえか? オレは神無月。 こっちのは野崎だ」
「おい煌、誰が包帯オバケだ」
頬がまだジンジンと痛む。
今回の件は完全に巻き込まれだったが……、まあオレも感情に乗って煽りすぎた節もあるし、とにかく、なんとか穏便に済んで良かった。
それじゃ、と学生鞄を拾い上げたところに差し込むように、
「……待ちなよ。 これじゃ一方的に迷惑かけて助けて貰っただけじゃん。 お礼……、させなよ。 この後、時間あんだろ? 付き合いなよ……、えっと……、神無月――――、」
「残念だが鮫島さん。 煌と私はこの後も予定があってね。 先約だ、優先させてもらえるね? 行こう、煌。 今日は妹さんが先に着いて待ってる日だろ?」
「えっ? あ、おう――――、」
半ば強引な野崎の細い腕に引っ張られて、校舎裏を後にする。
遠ざかっていく鮫島の顔がどんな表情をしていたのかは分からなかったが、教室で見たよりずっと柔らかい顔をしていたと感じた。
「……君って奴は。 夏休みの件もそうだが、目を離すとすぐに何か面倒事に巻き込まれるな。 監視役の気にもなってくれよ」
「いや、勝手に監視してんのはお前らの方だろ。 でもさっきはありがとな、また助けられたよ」
「不良の揉め事か。 くくく……、にしても、偽の彼氏役に君を抜擢するとは、何とも役者選びが下手な女だよ」
「なんだよそれ、オレじゃ彼氏役つとまんねーってか?」
「実際、反抗は口だけで、ボコボコにされてたじゃあないか。 あんな格好の悪い彼氏がいるものかよ」
「まあ……、それもそうか。 ダセェとこ見しちまったなー……」
「どうせ運とアドリブに任せれば上手くやれると思ったんだろ? 馬鹿者め、君はドラマの主人公でも、ましてや映画の重要人物でもないんだ。 複数の不良に囲まれれば負ける、当然の摂理。 だけどそれでいい、それがいい。 それこそが煌らしいよ」
「……なんでちょっと嬉しそうなんだよ。 てかお前、途中まで助け入らず様子見てたろ!」
「くくくく、たまには痛い目見てもらおうと思ってね」
コメント
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うわあああ野崎さんかっこよすぎる!!😭💕 シャーペンの芯で脅すシーン、めっちゃ不気味で逆に痺れた…「風紀委員の一条」ってハッタリもズルすぎるでしょ笑 でもそれ以上に、鮫島さんの「弱い自分を見せられない」って心情が切なくて…「本当に強い奴は頼れる仲間がいる奴」って神無月くんの言葉、グッときたよ…! 野崎の「たまには痛い目見てもらおうと思ってね」も含めて、キャラの掛け合いが最高だった!次が気になる〜!