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感動する手紙(アツクラ)

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感動する手紙(アツクラ)

3 - どんどん成長していく君たちへ

♥

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2024年06月30日

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「余命、残り僅かです。」

あぁ、そうか………やっぱり。体が動きにくいもん………。

「そうですか……。」

「これから、毎日病院となりますが……なにかやりたいことは…、?」

真剣な瞳で、1つの願いをお医者さんに真っ直ぐ伝えた。


「最後に、大切な人とお出かけをしたいです。」



僕がお昼を食べていた時だった。スマホが揺れて通知音を鳴らした。

『今日、2時から外出できませんか。』

雨栗さんだ。今日の2時か。何も予定はないな。

最近、雨栗さんは風邪を引いたとかで、YouTubeの撮影はこめしょーと2人きりでしていた。

雨栗さんに久しぶりに会える!とワクワクしていたが、メッセージの文に違和感を覚えた。

「『できませんか。』………敬語ぉ?なんでだぁ……、?」

雨栗さんはもっとフレンドリーで、タメ口なはず……。

でも、微かな違和感は僕のワクワクには勝てなかったようだ。

『了解!いつものところ集合でいいよね。』

僕がメッセージを送った途端、既読2になった。そして、グッドのリアクションが付く。いつものところ集合で良いということだ。

ちょっと後に『おっけー!久々で楽しみ!』とこめしょーからメッセージが届いた。


「あ!雨栗さーん!」

「雨栗、自分から誘ったくせにー遅いぞ!」

「はは、ごめんごめん!ちょっと混んでて(笑)」

んー、雨栗さんが遅刻とは珍しいな。いつもなら、誰よりも早く着いてお菓子をくれたり、近くのキッチンカーで奢ってくれたりするのに。

「雨栗、どこ行きたい?」

「んー………海、とかどう?」

雨栗さんにしては珍しいチョイス。こめしょーも、まさか海とは言われると思ってなかったのか、とっても驚いた顔をしてる。

3人で海に行くのは、登録者33万人パーティー以来だ。

3人ともルンルンな気持ちで海へ行った。


「あぁあ、もう終わりかぁ………。」

病院のベッドの中で真っ白な天井を見ながら思う。

今日は異様に調子が良かった。多分、死ぬ直前だからだろうか。

3人で最後の海を楽しんで、美味しいものを食べた。

楽しみすぎて、伝えようと思ってたことも忘れちゃったし。

「手紙………書こうかな。」

2人に宛てて手紙を書く。途中で視界が歪んできて、涙がこぼれ落ちてきて便箋の上に落ちてしまった。それでも、そのまま書き終えて眠りについた。


『今日は、〇〇っていう企画の撮影やろ。2人とも、どう思う?』

雨栗とルザクくんと3人で海で遊んだ次の日、ルザクくんからそんなメッセージがきた。ルザクくんは真面目だなー。

『おっけー、何時に始めるー?』

俺がメッセージを送ると、すぐに既読1と付く。ルザクくんだろう。

ルザクくんは雨栗からの返事を待ってたようだった。でも、どれだけ待っても雨栗からの返事は来なかった。


撮影の時間になって、ディスコに集まったのはルザクくんと俺だけ。

結局、雨栗からは何もメッセージは返ってこなかったようだ。既読も付いていない。ルザクくんは寂しそうな声で「風が悪化しちゃったのかな。」と言う。

俺はしびれを切らして、雨栗に電話をかける。

すると、3コールくらいで電話に出る音がした。

「おいっ、雨栗。メッセージの既読くらい………」

『雨栗さんのご遺族の方でございますか?』

なんだ、この声?雨栗じゃない?というか、ご遺族?どういう……。

「ど、どちら様ですか?雨栗はどこに…。」

その人は〇〇病院の医者と名乗り、雨栗が重い病気で亡くなったことを告げられた。俺はそのことをルザクくんに伝えて、急いで雨栗のところへ向かうことにした。


「ぁまっ…………ぐり……?」

「あま……ぐりさ、…ん……。」

病室のドアを開けると、雨栗の両親とお医者さんが1つのベッドを囲んでいた。

「ぁ……、ルザクさんに米将軍さん……。」

「雨栗の母さん……、雨栗はっ………。」

3人が囲んでいたベッドには、見慣れている髪色に白い布がかかった人がいる。間違いなく、雨栗だ。

「雨栗………?うそだ、嘘だと言ってくれよ……。」

心臓が嫌な感じで音を立てている。ルザクくんは、雨栗の顔にある布を見ながら立ち尽くしている。表情はよく見えない。

「もしかして……この子、病気のこと貴方達に……。」

そうですよ、雨栗の母さんの言う通り。言われてない。どうして言ってくれなかったんだよ。

「あの、2人とも。」

雨栗の父さんが、俺たちに1つづつ二つ折りにされた便箋を手渡した。

「雨栗の机の上にあったんだ。『ルザぴへ』と『こめしょーへ』の2つがあったから、きっと君たちへの手紙だろう?」

震える手で雨栗からの手紙を受け取る。震えながら便箋を開くと、力弱い雨栗の文字が綴られていて、思わず涙が溢れてきてしまう。

ルザクくんは、ボロボロと涙を流しながら文字を目で追っている。


Dear ルザぴ

これを読んでるってことは、私は死んじゃったってことかな?

しばらくの間、さんちゃんく!をルザぴに任せっきりでごめんね。

2人の動画は全部見たよ。とっても面白かった。

でも、ちょっと寂しそうな声なのが視聴者さんにバレてたよ。

ダメじゃん。隠し通さないと。本当に、素直なんだから。

ずっと病気のこと黙っててごめん。言うつもりだったけど、いざ言おうと思うと足がすくんで言えなかったよ。

私は弱いね。

これから、私がいないさんちゃんく!はさんちゃんく!じゃ無くなっちゃうだろうけど、頑張ってね。ルザぴとこめしょーにさんちゃんく!の未来は任せたよ。信頼してるから。

最後に、お願い。視聴者さんにも、私が亡くなったことを伝えてほしい。

視聴者さんが知りたくなかった、とか、嘘だ、とか言っても、構わず続けていいから。2人の言葉なら信じてくれるはずだから。

じゃあ、またどこかで会えたらいいね。

From 雨栗


Dear こめしょー

こめしょー、ごめんね。私、もう死んじゃうみたい。というか、もう死んでるかな。黙っててごめん。

私が風邪とかほざいてる間にも、こめしょーは成長しててって……。

最初の初心者時代とは、本当に見違えるほどになったね。

こめしょーには才能があったんじゃないかな。凄いよ。

私はさんちゃんく!からいなくなるから、私の座はこめしょーに譲るよ。

今日から、こめしょーはプロ枠でいいよ。初心者枠はもうおしまい。

視聴者さんも、アツクラのみんなも、こめしょーがプロ枠でも認めてくれるはずだよ。だってこめしょーだもん。

弱音吐いたらぶっ叩くからね。私の座に座ってるんだから、堂々として!

最後に、お願い。

私がこれから楽しめない分、こめしょーが全力で楽しんでね。

泣いていいのは、嬉しかった時。

私のことで絶対泣かないでね。私まで悲しくなっちゃうから。

じゃあ、またどこかで会おうね。

From 雨栗


「今日は、緊急生放送なのに集まってくれてありがとうございます。」

ルザクくんが、もう泣きそうな震えた声で視聴者さんに伝える。

視聴者さんは雨栗がいないことで察したのか、雨栗に関してのコメントがものすごいスピードで流れていく。

たまに、いつもうるさい米将軍が静かというコメントがある。やかましいわ。

アツクラメンバーもちょこちょこコメントをくれて、雨栗は幸せ者だな、と感じる。

「今日は、しばらくお休みしていた雨栗さんについてお話します。」

ルザクくんが喋っていくが、どんどん声が小さくなり、途中では泣き声しか聞こえなくなってしまった。

俺が引き継ごうをしたが、放送前に「僕が伝えてって言われたから。」という言葉を思い出して、出しかけた言葉を飲み込んだ。

でも、ルザクくんに任せっきりでは雨栗の座を貰った者として情けない、と思い途中から喋り始めた。

俺もボロボロと涙を流してしまっているが、震える声のまま、懸命に伝えた。

喋り終わると、放送には俺とルザクくんの泣き声しか聞こえなくなった。

そこに、ポコンと、ディスコに誰か入ってくる音がした。

「僕から、雨栗さんへメッセージを送ります。」

この声は、ドズルさんだ。ドズルさんは、泣き声だけの放送はまずいと思ったのか、場繋ぎをしてくれる。ドズルさんが話終わると、ぼんさんが来て、次々とアツクラメンバーが集まってくれた。

ラストは、アツクラメンバー全員が一緒に泣いた。

「僕っ、からも………雨栗さんに…メッセージっを…。」

ルザクくんが、頑張って雨栗へのメッセージを残していく。

ルザクくんが喋り終わり、残りは俺だけとなった。

俺も、嗚咽を抑えて雨栗へメッセージを送った。

天国にいる雨栗は、今、幸せだろうか。


その後、さんちゃんく!は雨栗さんがいないからさんちゃんく!の名で活動を続けることは辞めることにした。

さんちゃんく!のままが雨栗さんの本望だけど、多数決で僕たちの案に決定。

新しいチャンネルを作って、新しいチャンネル名を記入する。

雨栗さんの「あま」、ルザクの「る」、米将軍の「こめ」。

3人合わせて………

『余る米』

なんちゃって。

僕とこめしょーの2人は、今日から『余る米』で活動を開始した。

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