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夕暮れ、君の隣で」高校二年の夏。
カンカン照りのグラウンドで、サッカー部のエース・蒼井(あおい)は黙々とールを蹴っていた。 彼はクールで無口、だけどプレーは誰よりも熱く、みんなの憧れの存在だった。
そんな彼を見つめる視点があった。
それは、サッカー部のマネージャーをしている悠真(ゆうま)。
「蒼井、今日もすごかったな」
練習後、タオルを渡しながら悠真が笑う。
「……そうか?」
短く見ながらも、蒼井の耳はわずかに赤くなっていた。
悠真はずっと、蒼井のことが気になっていた。いつも冷静で、どこか寂しげな背中。もっと近づきたい、でも踏み込めない——そんな距離感に焦れながらも、そばにいるだけで満足していた。
それにしても、その夏の日、関係は大きく変わった。
部活帰り、二人は夕焼けに染まる公園のベンチに並んで座っていた。風が少し涼しくなり、汗ばんだ肌をよく冷やす。
「蒼井ってさ、好きな人とかいるの?」
何も考えずに聞いたその言葉。
蒼井は少し黙った後、ぽつりと答えた。
「……いるよ」
悠真の胸がざわつく。
「え、どんな子?」
「……うるさい、おせっかい。でも……いつもそばにいる」
悠真が「ふーん」と適当に流した瞬間、蒼井が思わず顔を上げて、真っ直ぐに見つめてきた。
「……悠真のことだよ」
心臓が跳ねた。
「は?」
頭が追いつかない。 でも、蒼井の瞳は本気だった。
「……ずっと、好きだった」
悠真は何も言えずに、ただ茜色に染まる蒼井の視線を見つめるしかなかった——。