テラーノベル
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訓練兵団の演習場は、朝から騒がしかった。立体機動装置のワイヤーが空を裂き、怒号と指示が飛び交う。
「遅い!次!」
教官の声が響く中、訓練兵たちは必死に壁を駆ける。
失敗すれば、容赦なく落ちる。
その様子を、
少し離れた高台から見下ろす影があった。
調査兵団兵長――リヴァイ
「……」
腕を組み、無言で視線を走らせる。
特に期待していたわけじゃない。
“視察”という名の、ただの確認だ。
――最初は
「……あ?」
ふと、一人の訓練兵が目に留まった。
白い髪。
動きが、異様に静かで素早い。
ワイヤーを撃つ角度、体重移動、刃の軌道。
すべてが無駄のない完璧な動き。
「……ほう」
隣にいたシャーディス教官が声をかける
「気になるか、リヴァイ」
「あの白いのは」
「レイ・ヴァイス。成績は常に上位だ」
リヴァイは答えず、目で追い続ける。
他の訓練兵が焦り、無駄な動きをする中で、
彼女だけが冷静に状況を判断し、的確に“生き残る動き”をしていた。
(地下街の匂いがする)
理屈じゃない。
あの劣悪な環境で培った勘だった。
⸻
訓練の合間。
水分補給のために集まる訓練兵たち。
レイは一人、装置の点検をしていた。
そこに、1人の仲間が声をかける。
「レイ、次一緒にやらない?」
一瞬だけ、間。
「……いいよ」
短い返事。
けれど拒絶はしない。
仲間が笑う。
「ほんと無表情だよね」
「でも優しい」
その会話を、リヴァイは遠くから見ていた。
(……笑うのか)
ほんの一瞬。
レイの口元が、確かに緩んだ。
それは、戦場では見せない顔。
トクン ーー
自分の胸に僅かな違和感を覚えたリヴァイは、らしくない反応に眉を少しひそめた。
⸻
午後の模擬戦。
複数人での連携訓練。
隊列が乱れ、巨人役に囲まれる訓練兵たち。
「ちっ……!」
仲間が転んだ瞬間。
「下がって」
低い声。
レイだった。
迷いなく前に出る。
自ら囮になり、仲間を逃がす。
一人で三体を捌き、 最後に振り返る。
「今」
仲間が動く。
連携が、完璧に噛み合った。
そして、演習終了の合図が鳴った。
「……あれは、並の訓練兵の判断力じゃねぇ」
リヴァイは小さく呟いた。
シャーディス教官もレイを見つめ、
「これが、逸材と言うのかもしれないな」
⸻
その夜。
兵舎で、レイは静かに刃を研いでいた。
(……誰か、見てた)
昼間の視線に、気づいていた。
理由は分からない。
だだ、背筋が伸びるような感覚があった。
地下街で、生き残るために培った感覚。
(……気のせい、か)
刃が月明かりを反射し、レイの顔を照らす。
レイは知らない
その“視線”の主が、
かつて自分を救った、”隣に立ちたい”と願い続けている男だということを。
⸻
数日後。
リヴァイは、報告書に目を落としながら言った。
「……ヴァイス」
「はい?」
唐突な呟きに、近くにいた兵士が困惑する
「白髪の訓練兵だ。お前も覚えておけ」
そのやり取りを見ていたエルヴィンが微かに笑う。
「リヴァイ、お前が興味を持つとは珍しいな」
「使えるかもしれないと思っただけだ」
そう言い切りながも、
脳裏には、白髪の少女の姿が鮮明に浮かんでいた
(生き残るために戦ってきた目だった)
リヴァイは感じていた。
彼女が――
調査兵団を選ぶ人間だということを。
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