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夕暮れの廃スタジオ。埃っぽい空気の中、5人は懐中電灯を頼りに、崩れかけた撮影セットを進んでいた。
『ホンマにここにあるんかな……?』
晶哉が不安げに呟く。
【SNSの情報があってれば、この倉庫の中に試作品が保管されてるはずや。】
リチャードが紙を広げ、指で場所を示す。
〈こっちやな……!〉
良規が足元の箱をどかすと、そこには古びた木箱があった。
蓋には“DREAM PROJECT”と掠れた文字が刻まれている。
健が息を呑みながらゆっくりと蓋を開けた。
中には、小さなガラス瓶……
そして、その中に光を放つ赤い飴玉。
「……あった。」
誠也の瞳が丸くなる。
《“夢ノ欠片キャンディ”……これやな。》
ラベルには、確かにそう書かれていた。
だが……
その瓶の中は、微かに光が瞬いていた。
普通の飴ではない。
まるで生きているように、光が揺れている。
『うわ……なんか、呼吸してるみたい……。』
〈こわっ……〉と良規が一歩下がる。
誠也は瓶に手を伸ばした。
「……これで、俺は元に戻れるんやな。」
その瞬間、瓶の中の飴がぼんやりと青白く光り、まるで反応するように誠也の小さな手を包んだ。
「……あつっ!」
“せーちゃん!?”
「なんやこれ……痛くはないけど……熱い……。」
リチャードが瓶を慎重に覗き込む。
【……おかしい。これ、ただの飴ちゃう。】
《“夢ノ雫”が“子供の記憶”を与える飴なら、“夢ノ欠片”は“子供の記憶”を奪う飴”かもしれん……。》
「記憶を奪う……?」
〈つまり、元に戻るってことは、今の“せーちゃん”の記憶が消える可能性がある。〉
全員が息を呑んだ。
「……俺が“今”を忘れてしまうってこと?」
『……せーちゃん』
小さな手が震える。
笑って遊んだ時間、みんなと過ごした温かい毎日
それが、全部消えてしまうかもしれない。
「そんなん……イヤや……。」
声が震える。
誠也は瓶をぎゅっと握りしめ、涙を堪えた。
「せっかく、みんなと“今”をもう一回やり直せた気がしたのに……。」
沈黙の中、健が優しく誠也の頭を撫でる。
《なぁ、せーちゃん。忘れても、俺らは何回でも思い出させたる。何回でも、“せーちゃん”って呼ぶから。》
【そうや。記憶がなくなっても、絆は消えへん。】
誠也は涙の中で、少し笑った。
「……みんな、ずるいな。ほんなら、もう一回……信じてみるわ。」
その瞬間、瓶の中の飴がひときわ強く光を放ち、スタジオに温かな風が吹き抜けた。
“せーちゃん!”
眩しい光の中で、せーちゃんの姿がゆっくりと包まれていく