テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
そんなに生々しいものでは無いですが、自傷行為の表現がある場面がございます。
苦手な方は、スキップしてください。
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夢を見た。
誰もいない静かで真っ暗な場所だった。
少し遠くから笑い声が聞こえた。
どこか懐かしく、大好きな声が聞こえた。
その声がする方に手を伸ばす。
まるで水の底から聞こえてくるようで、遠く霞んでいた。
「待って…」
かすかな声が、薄暗い空間に消えていく。
触れたいのに、掴めない。
追いかけたいのに、前に進めない。
足元はふわふわと宙に浮くようで、身体は重くて沈んでいくようで。
感覚がぼやけていき、時間も空間も歪んでいく。
胸の中の痛みが広がって、呼吸は浅く、喉はカラカラに乾いていた。
それでも心は、まだ声を求めて手を伸ばしていた。
——けれど、やがて意識は遠のいていく。
闇に包まれ、まるで水の中に沈んでいくように、静かに、深く。
ゆっくりと目を開けると、見慣れた部屋の天井がゆらりと揺れていた。
視界はぼやけていて、身体中が鉛のように重い。
深く息を吸おうとするけれど、肺は固く閉ざされたままだった。
胸の奥で鈍い痛みが波のように広がる。
ふと、横に置いたスマホの光が目に入った。
画面には、数回の通知が溜まっている。
震える指で画面を開くと、そこにはるぅとくんからのメッセージが並んでいた。
「莉犬、大丈夫?返信待ってるよ。」
「何かあったらすぐ言ってね。」
言葉の優しさに胸が締め付けられる。
だけど返信する力は、まだ戻らなかった。
震える手を、ゆっくりと胸に当てる。
「俺、まだ、まだッ…ポロポロ」
声にならない呟きを、まだ誰も知らない。
莉犬「なーくッ…じぇるくッ…ポロポロ」
莉犬「もう俺…ッポロポロ」
デスクへと手を伸ばす。
夜の静かな部屋。
震える手で、そっと腕をまくり上げる。
そこには、薄く刻まれた線が幾つも並んでいた。
痛みよりも、言葉にできない虚しさがその跡に宿っている。
指先でその痕をそっとカッターでなぞる。
冷たくて、少しヒリヒリとする感触。
過ぎ去った痛みが、胸の奥の痛みと重なって、言葉にならない悲しみを呼び起こす。
目を伏せた。
痛みを確かめることで、存在を感じようとしていた。
けれど、同時にそれは自分を傷つける行為で、どこかで「助けて」と叫んでいたのかもしれない。
夜は深く、外の音は届かない。
ただ、静寂と自分の息遣いだけが満ちていた。
痛みは身体だけではない。
手のひらで涙をぬぐいながら、鏡の前に立つ。
ぼんやり映る自分は、憎い顔だった。
莉犬「きも、」
小さな声で呟いたその言葉は、誰にも届かない。
心の奥底で、助けを求めているのに、どうしても口にできなかった。
突然、スマホの通知音が部屋に響いた。
るぅとくんからのメッセージだった。
るぅと「莉犬、何かあったらすぐ言って。」
るぅと「みんな、待ってるから」
画面を見つめる指が震える。
その言葉に、少しだけ心が揺らいだ気がした。
深く息を吸って、返信を打ち始める。
「ありがとう。大丈夫だから。安心して。」
「るぅとくんこそ、無理しないでね。」
そう小さな嘘をついた。
俺は嘘つきだ。
コメント
3件
初コメ失礼します! 神作です✨ 続き頑張って下さい!